れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

余命を知った後の生活:『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』

山本文緒大先生が最期の時まで書いていた日記が出版されていたのを最近知り、読みました。

人間ドックを毎年受けて、10年以上飲酒も喫煙もしていなくても、いきなり末期癌が発見されたりするんですね。

90歳くらいまで生きるのに充分な貯蓄があったらしい山本先生ですが、58歳で亡くなってしまいました。人生ってまったく計画通りにいかないものだなと思いました。

 

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死期がわかると人生でやり残したと思うことが切実に把握されるんだなと、この本を読んでわかったんですが、私も果たしてそうなるのかな。少し自信がないです。

山本先生は愛する旦那さんや仕事仲間や家族に別れのあいさつ(のような交流)を少しずつしながら余命を過ごしましたが、私はさよならを言いたい人も思い浮かびません。

 

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実は私のハハは昨年乳がんになり、片方の乳房を摘出し、今でも腕があまり動かせないらしいです。

薄情な一人娘の私は見舞いにも行かず何の助けもしませんでしたが、叔母たちがたくさんサポートしてくれて、なんとか日常を過ごしているようでした。

この本を読んでがんの治療というのがいかに過酷なものなのかを知り、私はあらためてハハの強かさを知ったのでした。

 

私はいつまで経っても今ひとつハハを好きになることができないのですが、それとは別に彼女のある種の強さには感服せざるを得ないと思います。それは私が持ち得ない、社交性と忍耐強さです。

 

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この日記の一番最後の記述が、なんだかとても死をリアルに感じる描写でした。人々の声が遠くなる、一番聞きたい人の声だけ聞こえない感じ。

誰一人として自分の最期がどうなるか分からず、誰一人としてそれに抗うことはできないという、当たり前だけど普段忘れていることを突きつけてくる本でした。おわり。