れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

文学

私にとっての山本文緒(2):『ブラック・ティー』

前回からの続きです。 中学時代も何冊か山本文緒作品を読んでいて、なかでも好きだったのが『ブラック・ティー』でした。 ブラック・ティー (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon こちらは軽犯罪をテーマにした短編集です。 一話目に収録されている表…

私にとっての山本文緒(1):『絶対泣かない』

先月作家の山本文緒さんがお亡くなりになりました。享年58歳。 ネットニュースの記事は10月18日発表のものが多いのに、私が訃報を知ったのはなんと昨日、11月13日でした。 11月13日は山本先生のお誕生日で、たまたまinstagramのタイムラインで目に止まった山…

地べた社会の労働者:『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』

ノンフィクションでこんなに面白い本を読んだのは久しぶりかもしれません。 ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち 作者:ブレイディみかこ 筑摩書房 Amazon 現代英国の労働者階級社会で生きる著者とその家族・友人たち(主にベビー・ブ…

いつかは向かう場所:『今日はヒョウ柄を着る日』

前の職場は県職員や銀行・新聞社などの天下り先として機能していたので、還暦を過ぎたじいさんがゴロゴロいました。 ケチなじいさんは偉そうに講釈をたれるだけだけど、そこそこ気前がいいじいさんだと、ちょっとしたことでうな重を奢ってくれたりしました。…

病気と健康のはざまで:『シュガーレス・ラヴ』

このブログで既に何度も書いていますが、山本文緒さんの小説が本当に面白くて大好きです。でも全部読んでるわけではないんですよね。 Amazonであらすじを読んで、ああ未読だなと思ったやつを気まぐれにポチりました。そして期待を裏切らず、やっぱりすこぶる…

この人のために:『メイドの岸さん』

どこかの家の住み込みメイドになりたい願望があります。 メイドの岸さん(1) (マガジンポケットコミックス) 作者:柏木香乃 講談社 Amazon Amazonの1巻無料セールを久々に覗いたら、面白い漫画にたくさん出会えました。 その中の一つが『メイドの岸さん』。…

岸本佐知子さんの爆笑エッセイ『ひみつのしつもん』

明るい作品をもう一つ。 ひみつのしつもん (単行本) 作者:岸本 佐知子 筑摩書房 Amazon 翻訳家・岸本佐知子さんはエッセイストとしても有名らしいのですが、お恥ずかしながら全然存じ上げませんでした。 表紙がかわいいな〜とたまたま手にとってパラパラ流し…

女性の貧困と性犯罪被害、「一人で大丈夫」であること

『美しい彼』で好きになった作家・凪良ゆうさんが2020年本屋大賞を受賞したベストセラー小説『流浪の月』を(今頃)読みました。 流浪の月 作者:凪良 ゆう 東京創元社 Amazon 小学生女児・家内更紗9歳は、最愛の父を病気で亡くし、夫の死を引き金に色に溺れ…

『なぎさ』

面白い小説を読みたいとき、期待を裏切らない作家が山本文緒大先生。 『なぎさ』を読みました。やっぱり、すごく面白かったです。 なぎさ (角川文庫) 作者:山本 文緒 発売日: 2016/06/18 メディア: Kindle版 本を手に取りパラパラ目を通すと、目についたのは…

『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』

村上春樹『海辺のカフカ』が本当に好きなんですが、紙の本を所有するのがイヤで図書館に借りに行きました。 その時ついでに手にしたエッセイが面白かったです。 サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3 作者:村上 春樹 発売日: 2012/07/09 メディア: ハードカバー…

調子が悪くても:『夢も見ずに眠った。』

最近精神的に調子が悪いです。 仕事でミスが続き、いつも時間に追われている心地がしてイライラし、何をしても楽しくない。 季節の変わり目だし、このご時世だし、不調の原因を考え出したらキリがないですね。きっと同じような方は世の中にたくさんいるだろ…

なんだってマーケ:『ぼくは愛を証明しようと思う。』

大学で専攻した心理学は、そこそこ面白かったですがあまり夢中にはなれませんでした。面白かったなーってだけで、卒業したあと生活に役立てることもなかったし、学んだ知識もぼんやりとしか記憶に残っていませんでした。 だからびっくりしたんですが、藤沢数…

水は命:『We the Bathers』

素敵なショートフィルムを観ました。 石鹸などで有名なブランド”LUSH”のチャンネルで限定公開されている、水とバスタイムにフォーカスしたショートフィルムです。 『We the Bathers』は、ロンドン在住のフィービー・アーンシュタイン監督が世界12の場所で出…

同性を愛することと自身を慈しむこと:『生のみ生のままで』

最近私がひたすらに考えているテーマが「いかにして自分を慈しむか」なんですが、 先日読んだ綿矢りさ『生のみ生のままで』は予想外の角度からこのテーマに一石投じる良作でした。 【上下合本版】生のみ生のままで (集英社文芸単行本) 作者:綿矢りさ 発売日:…

子供のいる世界といない世界:『ここは私たちのいない場所』

先日30歳になりました。三十路。まさかこんなに生き延びるとは・・・って感じです。 30歳になってもまだ知らない素敵な作家さんが、物語がたくさんあるものです。 ここは私たちのいない場所 (新潮文庫) 作者:白石 一文 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019…

人間の嫌なところ、に共感:『妻の超然』

クスッと笑えて、ちょっと切なく、どことなく怖い中編集にであいました。 妻の超然 作者:絲山秋子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/04/12 メディア: Kindle版 絲山秋子さんの作品は半分〜4分の3くらい読んでるかもしれません。 小田原とかつくばとか群…

存在を消すために心を砕く

お正月休みですっかり緩んでリラックスしていたのに、あっという間に仕事に飲み込まれ殺伐とした日常生活がやってきて、相変わらず冴えない人生を送っています。 久しぶりに山田詠美さんの小説を読みました。 姫君 (文春文庫) 作者:山田 詠美 出版社/メーカ…

架空のお葬式と現実の葬式

今月の上旬に、父方の祖父が亡くなりました。 二十数年前に曾祖母が立て続けになくなって以来、本当に久しぶりに葬儀というものに参列しました。 はるか昔に参列したその曾祖母の葬儀は、幼かったこともあって記憶が断片的です。したがって自意識のはっきり…

知を愛し求める:『know』

現在放送中のアニメ『バビロン』がめちゃくちゃ面白くて、原作者の野崎まどさんの著作を漁っています。 『know』はバビロンとはまた違った雰囲気で、やはりこれも示唆に富む良作でした。 know (ハヤカワ文庫JA) 作者: 野崎まど,シライシユウコ 出版社/メーカ…

もう一人の私、もうひとつの人生:『ブルーもしくはブルー』

山本文緒さんの作品は本当にどれも暴力的なまでの面白さだと感服しました。 ブルーもしくはブルー (角川文庫) 作者: 山本文緒 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1996/05/01 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (77件) を見る ドッペルゲ…

成長と魅力:『美しい彼』

8月から(また)職場が変わりました。 と言っても今回は転職というよりは異動で、同じ会社ではあるのですが業務内容も勤務地も大きく変わって、人口増の東京まで毎日30分くらい電車に揺られて通勤するようになりました。 ここ数年は家から職場まで徒歩15分と…

『はやく老人になりたいと彼女はいう』

先月から出張で内陸の地方都市に滞在しています。 人口30万人ほどのこの街は電車の本数も商業施設も娯楽施設も少なくて周りは見渡す限り山ばかり、気温がいつまでも低く桜もいっこうに咲きません。 駅のホームに立つと、あまりの静寂に不安な気持ちになるほ…

手紙を通して世の中を知る:『三島由紀夫レター教室』

先日青山の某コーヒースタンドに置いてあった『三島由紀夫レター教室』という文庫が面白くてハマってしまいました。小説を読んでこんなに爆笑したのは本当に久しぶりです。 三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫) 作者: 三島由紀夫 出版社/メーカー: 筑摩書房 …

『ままならないから私とあなた』

連日の猛暑とスポ根な職場での日々で気分は夏休みの部活動って感じの今日この頃です。 夏休みってどうにも小説が読みたくなるんですよね。物心ついたときから毎年読書感想文を書かされていたからでしょうか。 そんなわけで暑い日でも読みやすそうな文体を、…

音楽の力:『リズと青い鳥』

ここまで強く胸を打つ作品をつくり出すなんて・・・今年は京都アニメーション様に泣かされっぱなしです。 現在公開中のアニメ映画『リズと青い鳥』が本当に美しくて切なくて、観てからというもののその世界観にどっぷりハマっています。 『リズと青い鳥』ロ…

旅とスタンス:『from everywhere.』

小学校低学年の頃『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』は、ストーリーはほとんど理解できないにも関わらず毎週観ていた稀有なアニメ番組で、成長してからもこのアニメのオープニングテーマとエンディングテーマがずっと心に残っていました。 小学校高学年になった…

人生を生き延びるということ:『憤死』

先週海外旅行で飛行機に乗っていた際、自分の人生の記憶を覚えている限り最初から振り返ってみる、という試みをしたのですが、幼少期の記憶がほとんど曖昧であることに気づきました。 少なくとも小学校に入る前の、3歳〜5歳くらいの記憶だとおもうのですが、…

意志と正しさ:『十二大戦』

観ていたアニメが次々と最終回を迎え、年の瀬を感じます。 クリスマスイブですが、干支の話を・・・もうすぐお正月ですし。 十二大戦 BDBOX [Blu-ray] 発売日: 2018/12/21 メディア: Blu-ray 十二大戦 作者:西尾 維新 発売日: 2015/05/19 メディア: 単行本 …

念のために生きている:『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』

中学生の頃、同じクラスで近所の友人(女子)が西尾維新『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』を朝の読書の時間に読んでいました。 表紙が可愛かったので、私も借りて読んでみたのですが、中学時代の私はあまり気が長くなくて、いかんせん本が分厚く…

共感につぐ共感:『私をくいとめて』

小説を読んでいて、「これ、自分のことを描かれている!!」とびっくりすることが稀にあります。そんな作品の一つ、綿矢りさ『私をくいとめて』は、面白おかしくも、それだけでは帰してくれない、ちょっと意地悪な小説でした。 私をくいとめて 作者: 綿矢り…