れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

ルーティーンワークの孤独:『オールドファッションカップケーキ』

私はまったくもっていわゆるparty people略してパリピではない、のですが

今年の夏はフェスもなければ花火大会も縁日もない、そのことに非常に憂鬱になっていて大変気分の晴れない日々を過ごしています。

別に毎年海辺でBBQしていたわけでもキャンプに繰り出していたわけでもないのに、例年たいした夏は過ごしていなかったはずなのに、どうしてこうも落ち込むのか不思議でたまりませんでした。

そんななか、昨日読んだ佐岸左岸『オールドファッションカップケーキ』の中にその答えの一欠片を見たような気がしたので記録しておきたいと思います。

主人公の野末さん39歳独身男性は、おしゃれな平屋の一軒家で慎ましく暮らしていました。

端正な美形で仕事もできて小綺麗な野末さんは、年を重ねるごとに小さくまとまったルーティーンワークな日々を送るサラリーマンです。

柔らかい笑顔と人当たりの良さで職場の信頼も厚いし、女性にもモテるのに、本人の意欲が低いせいでかわり映えのない毎日を送っている野末さん。

他人と深い関係になったり、

新しいことに挑戦したり、

そういうことが面倒になった。

 

その面倒を楽しめないことを

年齢のせいにして、公私共に

ルーティーンワークばかりしている。

(佐岸左岸『オールドファッションカップケーキ』大洋図書 2020.1.4)

そんな憂鬱を抱える野末さんの10歳年下の部下・外川は、憧れの上司・野末さんの憂鬱にいち早く気づきました。

出先の駅で女子高生2人組が楽しそうにおしゃべりしたり自撮りしたりする様子を見て「楽しそう、羨ましい」と呟いた野末さんに、外川はすかさずある提案をします。それは、女の子ごっこという名目で、若い女性に人気のパンケーキ店に行くこと。

 

その日の昼休み、女性客ばかりでうろたえる野末さんに、外川は辛辣な指摘をしました。

野末さんが新しい経験や恋愛ごとを面倒に感じるのは、本当は恐怖心の裏返しであると。

「恋愛するのも、

昇進して 新しい仕事を任されるのも、責任が重くなるのも、

こうやってパンケーキ食べるのすら、こわいんでしょう。

 

四十路手前で仕事以外 何も無い自分に気付いて、

でも何をしていいのか 何がしたいのかもわからなくて、

(中略)

わからないまま新しいことをして失敗するのがこわくて、

 

このまま三十代を終えようとしていることがこわくて、

今まで仕事に情熱注いできたことまで後悔してるんでしょう。」

 

(同上)

図星を突かれて反射的に立ち上がった野末さんでしたが、あまりに的を得ていた外川の指摘に落ち込みます。

外川はそんな野末さんを励まし、自分がいかに野末さんを尊敬しているか、どれほど野末さんに元気を取り戻してほしいかを力説しました。外川の真摯な訴えに心打たれた野末さんは、外川の提案を受け入れ、少しずつ変わらなければという意識が芽生えます。

 

それから週末ごとに、野末さんと外川は”女の子ごっこ”での色々な初体験を求めてオシャレなカフェやスイーツを求めて連れ立って出かけるようになりました。

生活に新しい楽しみができた野末さんは、目に見えて明るく変化します。

部下たちに「野末さん、なんだが最近元気ですね。何かいいことあったんですか?」と聞かれるほどに。

 

さらには頑なにガラケーを使っていた野末さん、ついにスマホデビューも果たします。

まだ慣れないスマホのカメラと格闘しつつ、いつものように外川とオシャレなカップケーキをつついていた時、野末さんは外川のアンチエージングセラピーが大成功していることに言及しました。

「 女の子だから楽しいとか、若いから楽しいとか、

そういうことじゃなかったかなって。

(中略)

俺には仕事を通して得たものが沢山あるのに、それが見えてなかった。

外川が色んなところに連れてってくれたお陰で

目の前しか見えてなかった脳味噌の老眼が治ったと思う。」

 

(同上)

”脳味噌の老眼”ってとてもいい表現だなぁと思いました。

かわり映えしない日々を送っていると、脳味噌の老眼が起こって色んなことが見えなくなるんですね。

見えるものが少ないと不安になります。自分には何もなく思えて途方にくれるし、何もないまま同じような日々を生き延びなければならない事実に辟易します。

変化のない日々、刺激のない日常に溺れて、生きることがより憂鬱になっていく・・・。

 

ライヴとかフェスとか、夏祭りとか海水浴とかっていうのは、単調な日常に刺激と変化を与える脳味噌の栄養だったんです。

今年の夏の鬱屈とした気分は、その栄養を享受できなかったために起きている栄養失調みたいなものなのだと思い至りました。

 

今年はこの先もこんな調子の栄養不足がつづくのだと思います。

少しでも脳味噌の老眼を防いで精神衛生を保つために、可能な範囲で野末さんたちのように新しいことを生活に取り込みたいです。

行ったことないカフェでも、少し気おくれするニュースポットでも、やったことない習い事でもなんでもいい。

ルーティーンワークで雁字搦めになってろくでも無い考えにとらわれる前に、どうか少しでも明るい方へいきたい、そう強く思いました。

 

***

 

この漫画はストーリーも非常に良いですが、出てくる服や小物や家具一つ一つがとてもおしゃれで見ていて気持ちがいいです。

野末さんの家みたいな部屋で暮らしたいなぁ。おわり。

生まれてくるとこ間違えたねって:『マイ・ブロークン・マリコ』

昨日書店でデザイン技工に関する棚をぼーっと見ていて、そこに『新しいコミックスのデザイン』という本があり、手に取りました。

新しいコミックスのデザイン。

新しいコミックスのデザイン。

  • 発売日: 2020/06/23
  • メディア: 大型本
 

表紙の山本さほさんの絵に惹かれて読んでみると、このブログでも話題にあげた数々の漫画の装丁デザインについて、タイトルのフォントやレイアウトなど事細かに解説されていました。

私は仕事でバナーやポップアップのデザインをするとき、ゲームやアニメのWEBデザインやパッケージデザインからモチーフや配色を考えることがよくあるので、この本もとても勉強になりました。

 

そんなデザイン事例の一つとして載っていた平庫ワカ『マイ・ブロークン・マリコ』の表紙が、何故か脳裏に焼き付きました。

黄色と水色の配色がすごく良いなと思ったのと同時に、外国っぽい癖のある女性の絵柄と、くわえタバコで遺骨を抱えるシュールなイラストにとても興味をそそられ、早速読んでみることに。

想像以上にいい話で、じんわりと心の栄養になる感じの物語でした。

 

***

 

2人のヒロイン、マリコとシイノは子どもの頃からの友人です。

マリコは泣きぼくろが印象的な可愛らしい女の子で、シイノは少しはすっぱな印象の、制服姿でもいつもタバコを吸っているような子でした。

不思議なバランスでとても仲の良い2人。中学生だったある日、2人は夕方公園で花火をしようという話になりました。

約束の時間を過ぎても公園に来ないマリコを家まで迎えに行くことにしたシイノ。そこでシイノはマリコの壮絶な家庭環境を目の当たりにしました。

 

ゴミだらけの狭いアパートで酒浸りの暴力親父にボコボコにされたマリコが玄関から申し訳なさそうに出てきたときの、苦しく切ない感じ。

私は虐待とか家庭内暴力の話が結構苦手です(得意な人いないと思いますが)。

是枝監督の『誰も知らない』とか観ると、かなりダウナーな気分になって鬱々としたまましばらく立ち直れません。ふみふみこ『愛と呪い』も未だ読み切れていないです。

誰も知らない

誰も知らない

  • 発売日: 2016/05/01
  • メディア: Prime Video
 
愛と呪い 1巻: バンチコミックス

愛と呪い 1巻: バンチコミックス

 

 

私は児童虐待は受けたことがないし、同級生の中でもそういう人を見たことがありません。身近に事例がないことはいいことだと思います。けれど、実際に見たことのない暴力が確実にこの世に存在していることは、ニュースや本その他いくらでも知ることができて、その不気味さと不条理さ、「なんで?」という強い疑問は心の均衡を崩します。

 

昔食品工場で働いていた頃、休憩時間にテレビのワイドショーで児童虐待で亡くなった女の子のニュースが流れていたときのことを思い出しました。

テレビを見ていたおばちゃんたちが「本当に酷い話だね。生まれてすぐこんな痛い思いばかりさせられて死んじゃって、何のために生まれてきたのかわからないよね」とか、「自分が腹痛めて産んだ子なのに、本当に理解できないね」とか口々に言っていたのを覚えています。

おばちゃんたちはみんな結婚してて子供も成人していて、孫までいる人もいました。普通のまっとうな感じの人が大多数で、腰が痛いとか膝が痛いとかボヤきながらも明るく元気な人たちでした。

 

まだ若かった新社会人の私は、そういうまっとうな意見を素直に受け取る能力がありませんでした。

「何のために生まれてきたかなんて、虐待されててもされてなくても関係なくわからないじゃん」と思っていたし、いくら自分が腹を痛めて産んだって、必ずしも可愛がれるとは限らない、所詮自分以外は他人だと考えていました。

今回この『マイ・ブロークン・マリコ』を読んで、おばちゃんたちが言っていたのはそんな分析哲学みたいな問いじゃなく、もっと原始的なレベルの話だったんだなとやっと気づくことができた気がしました。

 

***

 

実の父親に子供の頃から立て続けに殴られ蹴られ、挙句高校生になったら強姦までされて、精神的に壊れるしかなかったマリコ

それでも何とか生き延びられたのは、シイノが唯一の心の拠り所として存在してくれていたからだと思います。

「お前が悪い」と言われ理不尽な仕打ちを受けづつけ、学習性無力感で動けないマリコのかわりに、シイノが全力で怒ってくれる。それだけがマリコの救いでした。

けれどシイノはただの友人であり、いつか恋人を作って自分の存在が薄れてしまうかもしれないという恐怖を、マリコはきっと死の最後の瞬間まで拭えなかったと思います。

 

いつ自殺したっておかしくないくらいの不幸にボコボコにされていたマリコが、どんなきっかけで我慢の閾値を超えて自殺に至ったのか、真相は描かれていません。

事実だけを並べるとひたすら悲惨な話なのですが、主人公のシイノのパワフルさが物語全体を強い力で救っていて、読後感は良いです。良いというか、辛くならない。

マリコの遺骨を忌々しい実家と父親からもぎ取り、抱きかかえながら海へ旅するというプロットも素敵だし、シイノをはじめとし登場人物や数々の出来事や回想シーンがきちんとカタルシスとして機能していて、本当によく練られた作品だなぁと読み返すたびに感嘆します。

 

作中にも出てきますが、「生まれてくるとこ間違えた」という事態は本当にこの世に腐る程あると思います。

どうしても生まれる側は生まれる世界や環境を選べない。

どうしても救えない不幸がこの世にはあると思います。

間違えたねって受け入れるのも悪いことじゃないと思います。それで死にたくなって死んでも仕方ない。

でも、もし生き延びるなら、何かしら救われる意味づけがないとつらい。

救いと希望が同じものか違うものかわからないけれど、そういうものがないと、人は生きられないなと感じました。おわり。

夏の黎明:AAAMYYY「Leeloo」

AAAMYYYはここ数ヶ月気になっているアーティストです。

私が彼女を知ったのは結構遅くて、今年の1月にTENDREのライヴでキーボードとコーラスをやっているのを観てからでした。

ステージ上のAAAMYYYは独特の声と舞台映えする白い肌が印象的でした。

ライヴの後調べてYouTubeを観たりInstagramを見たりしました。

その後ラジオでShin Sakiuraとのフィーチャリング曲が流れたり、アニメ『BNA』のEDで毎週聴いたりするうちにますますハマりました。

 

そんなAAAMYYYが今月リリースした新曲「Leeloo」が、かなり不思議な迫力で心に響いたので記録しておきたいと思います。


AAAMYYY // Leeloo

最初にラジオからイントロが流れてきた時、夢から醒めたような冷たさと、郷愁みたいな懐かしい淋しさがありました。

それから歌い出しの「8月の〜夜は短〜し〜」がピタッとハマって、最初に感じた淋しさは、夏休みの夜にひとりで歩いてる時に感じる感覚に近いのだと分かりました。

 

夏のむわっとした蒸し暑い夜に近所のコンビニに行った帰りや、友人と夏祭りに行って別れたあと帰路につくときの、あのなんともいえない刹那の感覚を見事に音楽に昇華させた感じがしました。

日本には春夏秋冬と大きく4つの季節がありますが、「同じ夏は二度と来ない」という言い方は”夏”以外あまりハマらない気がするんですよね。

私は暑いのがとても苦手ですが、それでも夏という季節が一際特別な概念であるとは長年感じていました。それが何故なのかなかなか言語化できませんでしたが、その一つの答えをこの曲に教えてもらった感じです。

 

サビの幻想的で開放的な音の広がりも素晴らしく、歌詞も皮肉っぽい諦念があって絶妙にマッチしています。

愛と言えば許されるし

懺悔すればそれでおしまい

この言葉すごいパワーだなと感心しました。

少し乱暴にも思える割り切った雰囲気が、特に今年のような抑圧的で息苦しい夏に本当によく合っていると思います。

 

10代の頃にこの曲があったらどんな気持ちになっただろうと想像したりしました。

連想喚起力がある曲なので、いろんな人に聴いてほしくて、他人がどう感じたか知りたくなる、そんな歌でした。おわり。

 

***

 

Amazonの方が価格高い?なんでだろ。

Leeloo

Leeloo

  • AAAMYYY
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

Leeloo

Leeloo

  • 発売日: 2020/07/08
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

なんだってマーケ:『ぼくは愛を証明しようと思う。』

大学で専攻した心理学は、そこそこ面白かったですがあまり夢中にはなれませんでした。面白かったなーってだけで、卒業したあと生活に役立てることもなかったし、学んだ知識もぼんやりとしか記憶に残っていませんでした。

だからびっくりしたんですが、藤沢数希著『ぼくは愛を証明しようと思う。』の中で、それまで「ふーん」としか思ってなかった理論の数々が活きた知恵として駆使され、次々と結果を出す様子が読んでいてとてもエキサイティングでした。学問って実際きちんとワークしてるところを見ると、こんなに楽しいものだったんだなって。

ぼくは愛を証明しようと思う。 (幻冬舎文庫)

ぼくは愛を証明しようと思う。 (幻冬舎文庫)

  • 作者:藤沢 数希
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫
 

物理学のPh.D.だったりトレーダーだったりして現在投資家としても活躍しているゴリゴリの理系の著者が創出した新学問「恋愛工学」。本書はあらゆる科学的手法を恋愛に組み込んだ、この新しい学問の入門書のようです。小説の形態をしていて物語としてもよく作り込まれており、笑って学べるハウツー本って感じでした。芥川龍之介作品のようによく計算されたタイプの物語で、最後の最後まで楽しめます。

 

主人公の渡辺正樹26歳は、東京・田町の特許事務所で働く弁理士の青年です。男子校出身で女性経験は浅く、物語序盤に付き合っている彼女に高額バッグのクリスマスプレゼントを渡した後トンヅラされ、打ちひしがれて冴えない27歳になったところからストーリーが始まります。

渡辺は気晴らしに学生時代の友人と行ったクラブで、仕事で知り合った永沢さんというイケてるおじさん(?おじさんではないかもですがモデルは多分著者だと思う)が美女にモテモテな様子を偶然目撃します。

永沢さんのモテっぷりに衝撃を受けた渡辺は、メールで永沢さんにアポをとり、どうやったら永沢さんのように美女にモテることができるのか、そしてセックスに困らなくなるのかについて教えを請います。こうして永沢さんによる恋愛工学指南が開始されたのでした・・・。

 

最初に成る程と思ったことは、男性にとってのセックスの重要さって計り知れないなということです。生物学的・遺伝子的要因とか色々理由はありますが、なんにせよ女性が渡辺たちのようにセックスのためにこんなに試行錯誤して取り組むことはそうそうないと思います。

なんだかんだ言って、やはり女性というだけでセックスにありつくハードルは全然低いんだなと。よって女性と男性ではモテの定義も成り立ちも全然違うんですね。

ちなみに、この作品で紹介される男性のモテの公式はこちら。

モテ=ヒットレシオ(女が喜んで股を開く確率)×試行回数 (女を誘った回数)

この説明だけ見ると、女性を道具としか見てないとか軽んじてるとか不快に感じる方もいらっしゃるかもしれません。特にこういう文学的なテーマに科学的アプローチを持ち込むとアレルギー反応を起こす人も少なくないと思うので。

 

しかし作者はそこにきちんと予防線を張っていて、私はとても感心しました。本当のところどう考えているかはわかりませんが、随所できちんと女性を人間として立てている記述があります。

「渡辺、ひとつ言っておくことがある」と永沢さんは言った。「お前もふくめて、多くのモテない男が、無視したり、ひどいことを言ったりする若い女のことをビッチと呼ぶ。本当は自分が相手にされないからむかついてるだけなんだが。世の中にビッチなんて存在しないんだ。彼女たちは、じつは、ただシャイだったり自信がなかったりするだけで、心をいったん開いてやれば、一途でとてもやさしかったりするもんだ。だから、これからは誰もビッチと言うんじゃない。わかったな」

確かにそうだな〜と。男性の言う「ビッチ」はつまり負け惜しみってことですね。

同性である女性がビッチと呼ぶことも結構ありますが、これは男性とは使い方が違いますね。

実際、貞操観念低めの女性が過去にレイプ被害にあっている確率が高い傾向はままあって、”心を開けば一途でやさしかったりする”のはあながち嘘でもないです。

 

下記も女性を立てていて、なおかつビジネスないしマーケティングに通ずる部分もあるなと思いました。

「ちょっとナンパができるようになって、何人かの女とセックスできると、すぐに勘違いしてしまう。女をまるで店の棚の上に並ぶ、お前の欲望を叶えるための商品みたいに思いはじめる。ちょっとばかりの労力、テクニック、それとデートのメシ代を払って、女の心を買おうとする」

「女は、自分をよく見せようと化粧をして、着飾っていても、決して売り物なんかじゃないんですね」

「そのとおりだ。そして、売り物なのは俺たちのほうだ。俺たちがショールームに並んでいる商品なんだよ。俺たちは、自分という商品を必死に売ろうとしている。女は、ショールームを眺めて、一番自分の欲望を叶えてくれそうな男を気まぐれに選ぶ。俺たちのような恋多きプレイヤーは、じつのところ、そうやって気まぐれな女に、選んでもらうことを待つ他ないんだよ」

さらに永沢さんは「だから、ときには売らないという選択をしなければいけないときだってある」と言います。絶対に自分を安売りするなと。

女は決して売り物なんかじゃないと書かれていますが、男も女もある側面では売り物だし、同時に買い手でもあると思うんですよね。なんか就職活動とか営業とかと似てるなーって思って読んでました。

調子に乗って勘違いしている男性が気持ち悪いと言われるのは、自分も同時に商品であり品定めされているということをわかっていないからです。変な圧迫面接するブラック企業も同じ。立場の強弱とは別に、それぞれが売り手と同時に買い手でもあり、どちらもそれぞれレビューされうるということを認識していない人は嫌われると思います。コミュニケーションの基本でしょ、とコミュ障の私でもわかる理屈。

 

***

 

渡辺が果敢にナンパにチャレンジしどんどんいい女を手中に収める様は、次々とダンジョンをクリアしてボスを倒していくRPGのゲーム実況を観ているようで実にワクワクしました。永沢さんもよく褒めてますが、渡辺はとにかくガッツがあり、駆け出しの新卒が営業部のホープに成長する様子ととてもよく似ています。

まず女性を喜ばせることを大事にし、理論に裏付けされたテクニックを相手の出方に合わせて駆使して無事セックスにありつくことと、まずお客様に喜んでもらうことを大事にし、フレームワークや戦略戦術を駆使してPDCAを回して業績を出すマーケティングはおそらく本質的に同じなんですよね。

営業マン時代、同じく営業歴が長い同僚が「成績のいい営業ほどよくモテる」と言っていたのを思い出しました。この本を読むと余計にそうだろうなと思えます。

 

また、こと恋愛に関して女性の言うことは全く当てにならないと言うのも、顧客アンケートの結果通りに仕様改善しても業績が上がらないケースが多々あることと似てると思います。

恋愛工学を知れば知るほど、そして、実際にたくさんの女の行動を目の当たりにすればするほど、世間に広まっている恋愛に関する常識は、すべて根本的に間違っていることを確信した。恋愛ドラマやJ-POPの歌詞、それに女の恋愛コラムニストがご親切にも、こうしたら女にモテますよ、と僕たちに教えてくれることの反対をするのが大体において正しかった。

本当にこれです!乙女ゲームの攻略対象なら一途なワンコくんも愛が重いヤンデレも素敵ですが、現実にそんな男性に好かれても多分面倒なだけなのです。一途に自分のことだけを愛してくれる優しい男性はフィクションだから価値があり、実際一緒にいて楽しいのは話が面白くてセックスの上手い、適度な距離感で接してくれる男の人なのです。

 

ティーヴ・ジョブズもお客様アンケートなんて多分当てにせず、もっと潜在的な顧客ニーズを掴もうとしていたはずです。相手の表面的な言葉に踊らされていては、きっと結果を出せないんでしょう。

似ている・・・恋愛もビジネスも、やっぱり市場的で、なんだってマーケティングなんだなぁ。

 

ちょうど先日仕事で女性たちに恋愛と結婚に関するアンケート調査をしたんですが、この本のことを思い出してちゃんちゃらおかしくて笑ってしまいました。女の人って、本当に言ってることとやってることが全然一致しないんですね。私も女なんですが、指摘されるまで気づかなかったです。

女が相手の収入を重視しないわけなかろうて。おわり。

 

***

 

なんと漫画もあるようですね。面白いのかな?表紙凄いけど(笑)

熱い情念:「死ぬのがいいわ」

藤井風のアルバムが本当に本当に良すぎて言葉を失うくらいなんです。

HELP EVER HURT NEVER(初回盤)(2CD)

HELP EVER HURT NEVER(初回盤)(2CD)

  • アーティスト:藤井 風
  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: CD
 

「優しさ」のイントロを初めて聴いたときの時の止まるような感動もとても忘れがたいのですが、最近私の心を掴んで離さないのがアルバムの8曲め、「死ぬのがいいわ」。

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

  • 発売日: 2020/05/20
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

タイトルから強すぎですが、まさにこの「死ぬのがい〜い〜わ〜〜」のサビがとても印象に残りました。

ライナーノーツなど読んでないので詳細はわかりませんが、吉原っぽいイメージが浮かぶ曲です。イントロのメロディが桜を彷彿とさせるような侘び寂びの効いた旋律で、藤井さんのセクシーな歌声とはんなりした西の言葉の歌詞が、どことなく別の時代や世界観を感じさせます。

 

サビの鬼気迫る、ある意味”ヤンデレ”とさえ言えるような執着と執念に満ちた歌詞が、独特のメロディと本当によくマッチしていて、一度聴いたら忘れられないです。

わたしの最後はあなたがいい

あなたとこのままおサラバするより

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

三度の飯よりあんたがいいのよ

あんたとこのままおサラバするよか

死ぬのがいいわ

死ぬのがいいわ

(藤井風「死ぬのがいいわ」『HELP EVERHURT NEVER』2020.5.20)

遊郭ものの乙女系ドラマCDやゲームを想起してしまうオタクの自分・・・。

下記とか。

籠女ノ唄 ~吉原夜話~ 第二話 君影

籠女ノ唄 ~吉原夜話~ 第二話 君影

  • アーティスト:桐生麻都
  • 発売日: 2016/02/24
  • メディア: CD
 

 下記とか・・・。

吉原彼岸花 久遠の契り - Switch

吉原彼岸花 久遠の契り - Switch

  • 発売日: 2018/12/20
  • メディア: Video Game
 

強い慕情を歌っているからですかね。

 

もともと特にドラマのない人生を送っている私ですが、昨今の自宅待機ムードでますます外界との接触がなくなって、強い感情を抱く機会が全然ないんです。だからですかね〜この熱烈な情念が逆に癖になってしまって、心地よくすら感じてしまう。

 

あー何かすごいスペクタクルなロマンに滅茶苦茶に翻弄されたいです。おわり。

水は命:『We the Bathers』

素敵なショートフィルムを観ました。

石鹸などで有名なブランド”LUSH”のチャンネルで限定公開されている、水とバスタイムにフォーカスしたショートフィルムです。

『We the Bathers』は、ロンドン在住のフィービー・アーンシュタイン監督が世界12の場所で出会った、水によって解き放たれる人間の感情を主題とした短編ドキュメンタリー映画です。ひそかに観察するような視点で展開する本作品は、あなたを世界中のバスルームへと誘い込みます。 日常が不確かに思える今だからこそ、水で繋がる一人ひとりの暮らしや人生に触れたとき、私たちにもまた明日がくることに感謝の気持ちが持てるかもしれません。本作品が、皆さんの日常に心地よく染み渡ることを願って。

 

とても静かで、力強く、切なく、途方もない願いを抱かせるような、美しく素晴らしい作品だと思いました。

 

日本は水に恵まれていると昔から言われてますね。

小学校でソフトボール部だった時、真夏の太陽の下で汗だくになりながら校庭でボールを投げたりバッドを振って走ったりした後、水道の蛇口からゴクゴク飲んでいた水の味の美味しさといったらなかったです。

幼い頃住んでいた市営住宅では、ベランダや駐車場近くの共用水道のところで子供用のビニールプールに水を貯めて水鉄砲したりして遊びました。小学校低学年の時には水風船が流行って、男子と投げ合ってびしょ濡れになったものでした。

子供の頃は、水は遊びの道具であり、ありふれて特に気にも留めない、生活に溶け込みすぎて意識することもない、空気みたいな存在だったように思います。

 

小学6年生の時、修学旅行で東京のホテルに泊まった時、どうも水が塩素臭い味がする気がしました。今でも飲めなくはないですが美味しくはないと思います。

小樽の街中のトイレを利用した時、ゴールデンウィークの真っ只中でしたが、凍てつくような冷たい水道水にびっくりしました。

ロンドンで泊まったホテルのシャワーは、見た目は綺麗だけれどなんとなくあまり体に良くない感じのにおいがしました。

バンコクのホテルで浴びたシャワーは、ホコリっぽい雑多な外気のにおいがしました。

今住んでいるマンションの水道水はなぜか藻を連想させる独特の風味がして飲み込めず、齢30にして料理で使う水や飲み水などは全て買ってきたミネラルウォーターを使う、欧米のような生活になりました。

 

今は港町に住んでいるので、散歩に出歩くだけで海が見られます。これはとても画期的なことです。

私の故郷は海なし県で、近所に大した川も湖もなく、せいぜい神社の裏手にちょっとした池があるくらいだったので、水辺に対しては焦がれる気持ちが特に強いです。ゴールデンウィークや夏休みの晴天の日には、車で隣県の砂浜に行くのが好きでした。

鉄道が好きになり一人旅するようになってからも、新潟の海のテトラポットの上で昼寝したり、大荒れの日本海をひたすら眺めて北上する五能線に乗ったり、宍道湖や琵琶湖の雄大さに心奪われたりと、水辺の近くにくるとテンションが上がるので好きでした。

今のような気の塞ぎがちな時、私が行きたいと思うのはいつだって親しんだ森林や山に囲まれた盆地ではなく、風が波音を立てる水辺です。

ただ水面やその先の水平線や上空に広がる空を見つめてぼーっとするだけなのに、どうしてああも心穏やかになるのでしょう。水の不思議です。

 

***

 

このショートムービーでは、世界のいろんな場所のいろんな境遇の人たちの入浴シーンが映っています。

エヴァンゲリオン葛城ミサトが「風呂は命の洗濯」と言っていたのを先日また鑑賞したところで、つくづくその通りだなぁと改めて感心しました。

アニメやゲームに夢中になっていたり、疲れていたりすると、入浴って結構面倒に感じるものですが、それでも風呂上がりはやっぱりさっぱりして心も体も軽くなります。

 

思春期の頃、よく半身浴しながら学校の人間関係で思い悩んだり好きな人のことを考えてやきもきしたり、何かとお風呂場で考え込む癖がありました。この頃から今に至るまで、私はどちらかというと長風呂タイプだと思います。

高校の合格発表の後に合格者は中学に集まって学校に報告するという慣習があり、その日の夜お風呂場でものすごく号泣したのを今でもよく覚えています。

無事志望校に合格し、報告しに行った中学の教室で最後に見かけた好きな男の子に、私は結局なんの告白もせずに帰宅しました。

毎日好き好き大騒ぎしていたので、相手の男の子も私に好かれていることはほぼ確実に認識しているんですが、結局最後まで面と向かっては何も言わなかったのです。バレンタインに手作りのお菓子をあげた時も、なんて言ったのか全然覚えてません。

志望校に入学が決まったのに、万事うまく行っているのに、夜ひとりでお風呂に浸かると楽しかったそれまでの生活の様子がわーっと頭の中に浮かんでは消えまた浮かんでは消え、そして気づきました。

もうあの日々はいってしまったんだなぁって。過ぎ去って遠くにいってしまったんだって。

毎日あんなに近くで見つめていたあの子にも、もう会えないんだって。

(同じ町に住んでるのだし会おうと思えば方法はあるのですが)

なんの努力もせず、好きな男の子をただただ盗み見て好き好き騒いでいたあの楽しかった日々は、もう終わってしまったのだ、ということをじわじわと認識してきて、どうしようもなく悲しくて声を殺して大泣きしました。

お風呂にまつわる自分の記憶の中で、一番強く残っている思い出です。

 

水やお湯がそうさせるのか、一糸まとわぬ無防備な姿になるからなのか、あるいはその他の要因もあるのかわかりませんが、

お風呂は自分と対話するのにとても適した空間の一つだと、この映画を観て再認識しました。

 

なんとなく、この作品を観ながら頭の片隅に谷川俊太郎「朝のリレー」が想起されました。

あさ/朝

あさ/朝

 

目覚め、食事、入浴、セックス、眠り、

感染症、政治問題、格差、差別、環境問題、

世界のどこにいても、自分が男でも女でもどんな人種でも職種でも何歳でも、

 

全ての人にそれぞれの生活がありそれぞれの問題があり諦めがある。

 

という、当たり前のことを思い出すいいきっかけになる作品だと思います。詩も映画も。

いい作品に出会えてよかったです。おわり。

私を少し掬い上げてくれるもの

昨年夏に都心勤務になって、都会とお出かけが好きな私は意気揚々としていたものですが、まさか1年も経たずに狭いマンションに缶詰になる日々か来るとは考えてもいませんでした。

在宅勤務は昔からの夢でもあったのでそれはそれでありがたいことなのですが、こんないいお天気のゴールデンウィークに海にもフェスにも旅行にも行けないというのは、やはりつらいものがあります。

 

来る日も来る日も家にこもってインターネットをしていると、10代の頃を思い出します。

今では電車や飛行機に乗って遠くに出かけるのが大好きな私ですが、10代の頃はどちらかというとインドア派の人間でした。

中学でも高校でも、夏休みのような長期休暇に部活がない日は宿題そっちのけで自宅でいつもインターネットをしていました。昔は今みたいに動画サイトが充実していなくて、HTMLを見よう見まねで書いてテキストサイトを作ったり、ブログを書いたりしていました。

大学生になった頃にはアニメがだいぶネット上で見られるようになり、暇さえあれば新しいアニメを貪るように観ていました。

 

あの頃は自粛要請が出されていたわけでもないのに、自発的に自宅にこもっていました。

家から出ようと思えばいつでも出られる、けれど家の中にもっと夢中になれるものがあったので家にいたわけです。

もともと友達もそんなにいないし、一人っ子なので一人で過ごすのは得意だし好きでした。

けれども、今こうして"要請"という形を受けて自宅にこもっていると、だんだんストレスが溜まってくるのを看過できないなぁとも感じ始めました。

 

本格的に全社的に原則在宅勤務になって最初の一週間くらいは、自宅で自分の好きなリズムで働けて化粧もしなくてよくて、時間に余裕が生まれてオンラインヨガなんかもやってみたりして楽しいなと思ってたんですが、やはり旅行に行きたいし電車に乗りたいし、ちょっと足を伸ばして海に散歩に行ったり本屋を物色したり、カラオケに行ったりウィンドウショッピングしたりしたいといった欲が出てきました。

電車が運休しているわけではないので海くらいなら行こうと思えば行けるんですが、その不要不急の外出で例のウイルスに感染してしまったら・・・?と思うと、どうしても外出する気になれませんでした。

 

日に日に前向きな気持ちを保つことが難しくなり、身体の調子も少しおかしくなり、「外に出ない」ということが自分に及ぼす影響をひしひしと感じています。

もともと外向的でなかった私でさえこうなのだから、私よりもっとフットワークが軽く行動的だった方はさぞやしんどいだろうと思います。

 

今日は備忘録として、この静かにしんどい日々に、心の支えになっているコンテンツを記録しておこうと思います。

 

***

 

1)とっくんの料理動画


自分を大蛇丸と信じて止まない一般男性が、焼きそばとビールで優勝する動画です。

昨年末くらいから彼の動画に影響されて自炊することが増えたのですが、これがいまの事態にかなり活きています。

仕事が忙しくて自炊することがめっきり減っていましたが、職種が変わって時間に少し余裕ができた頃に彼の動画を発見しました。

レシピを詳しく解説している動画ではないですが、その料理の大まかさとアニメの声真似の面白さにハマっています。

上記の動画を見て、先日初めて自分で焼きそばを作りました。焼きそばという食べ物自体、外食しかしていないとなかなか想起することが無い食べ物だと思いました。子供の頃は家で食べていたけれど、それはハハが作っていたからであって、焼きそばは好きですがわざわざお店に出向いたりテイクアウトしてまで食べたいものではなかったのです。

外食が難しくなってきた昨今、ハードルの低い簡単な自炊はスキルとして重宝します。もともと料理が嫌いなわけではなかったですが、この動画の登場により自炊が一層面白くなりました。これはクックパッドやレシピ本だけではなし得なかった革命だと思います。

料理は出来上がった品を食べるという楽しみはもちろん、具材を刻んだり炒めたり煮込んだりという工程一つ一つが思考をクリアにするという作用もあり、精神衛生上もとても良いことだと改めて感じました。

 

2)WONKの音楽

以前感想を書いたこともありますが、「音楽聴きたいな」と思った時最近真っ先に頭に浮かぶのはWONKです。


WONK - HEROISM (Official Audio)

震災などで世の中が辛い状況の時、ラジオ局ではよく「元気が出るリクエスト特集」的な企画をやります。

すると大体ドリカムとかZARDとか、応援ソングっぽいものが流れたり、明るいダンスミュージックがリクエストされたりするのですが、私はあんまり直截的な曲だとかえって神経を逆撫でされてしまいます。

 

自宅で一人鬱々としている時、聴きたくなるのはWONKの芳醇な歌声や美しい鍵盤やサックスやフルートの音色、心をフラットにしてくれるドラムやベースのビートです。無理に明るくもなく、逆に暗くもなく、常温で心地よくかつ美しいメロディ。それがいま一番欲しいものなのだと思いました。

 

香取慎吾さんのfeat.曲もとても好きです。

Metropolis (feat. WONK)

Metropolis (feat. WONK)

  • 発売日: 2020/01/01
  • メディア: MP3 ダウンロード
 

 

3)やっぱりアニメ

小説も映画もゲームも良いですが、やはり一番労力をかけず心を震わせられるのはアニメだなぁと改めて思いました。

今期も面白い作品が多く放送されており、本当に心の救いです。放送延期などのニュースもありますが、現場のスタッフの皆様に感謝しながら気長に楽しみたいと思います。

 

特に最近楽しみにしている作品は以下。

 

hamehura-anime.comテンポよしキャラ良しストーリーよしの笑いと萌えが詰まった良作です。

 

booklove-anime.jp一期から観ていましたが、二期は主人公のマインが世界を変えていく様子がより活き活きと描かれていてとても面白いです。ビジネスマンにも役立つ処世術なども描写されていて勉強にもなると思います。

 

kaguya.loveこちらも一期から最高でしたが相変わらず面白いです。原作漫画もおすすめです。

 

singyesterday.comこちらは最近少なかった成人向けの正統派群像劇アニメです。一昔前の時代背景も懐かしさを誘って良いですね。

 

他にも「攻殻機動隊」や「かくしごと」など、楽しみにしているアニメがいくつもあります。

また、エヴァの劇場版など、改めてみかえす昔の傑作ももちろんあります。

辛い時や気持ちが鬱ぎ込む時、一番心の近くにあるコンテンツは、やっぱり私にとってはアニメなのだなぁと、しみじみ思います。

どうか心の平静を保って入られますように。おわり。