山本文緒大先生の昔のエッセイを読みました。
おもに90年代に書かれた文章が中心で、その頃山本先生は30代。今の私と同じくらいで、自分と比べるのはいろいろ烏滸がましいとは思いつつも、ついつい比較してしまうのでした。
専業作家にはなっていたけど31歳で離婚して横浜の実家でパラサイトシングルとして過ごしていた時期は、子供時代の回想を含め横浜に関する記述がよく出てきました。
山本先生は横浜は所詮はいち地方都市に過ぎないと書いていましたが、それでもやっぱり横浜はかなり都会な方だし、文章全体からそこはかとない横浜愛を感じました。
私は先週末、実に3年ぶりくらいに地元に帰省しました。限りなく東北地方といっても差し支えない北関東のその町は、つくづく田舎だな、というか私ってこんなにもド田舎な町で青春時代を過ごしていたのか、と改めて驚いてしまいました。
東京ほどではないにせよ、山下公園も赤レンガ倉庫もパシフィコもランドマークタワーもある横浜で多感な時期を過ごせていたら、さぞ文化的な青春時代を送れただろうと思います。いいなぁハマっ子。うらやましい。
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山本先生は大学を出てOLになり、暇つぶしと副業を兼ねて公募ガイドを見て小説を書き始めたといいます。もともと文学少女でもなければ国語の成績が良かったわけでもないとの話でしたが、それであれだけ面白い物語を次々書けるのはまさに才能以外の何ものでもないと思いました。
文学はよくわからなかったけど、人間の心には昔から興味があったとのこと。
私も曲がりなりにも心理学専攻だったので、人間の心に興味がないわけではないと思うのですが、いかんせんあまりに非社交的で人間関係の実践経験が少なすぎることもあり、考えつくこと全てが机上の空論なんですよね。なんだかなぁ。
恋愛もせず、友人もおらず、家族とも交流がない上に特に趣味もない一人暮らしのOLというのはそれはそれは暇です。だけど私はそれで創作活動をしようとは全然思いつきませんでした。
こうして日記を書くのは昔から好きですが、それだって毎日欠かさず書くわけではないですし、ましてや物語なんてプロットのプの字も思い浮かびません。
やっぱり山本先生ってすごいなーと改めて思いました。
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山本先生は40代に入ってすぐうつ病を発症して長い間小説を書くことができなくなり、それが全快したと思ったら50代の終わりに末期がんが見つかりそのまま亡くなってしまいました。でもこのエッセイを読むと、実際30代のうちから細かな不調が色々あったように見受けられました。
やっぱり30代から体と心のバランスを取る難易度って跳ね上がるなぁと改めて感じました。私も30を過ぎてから常に何かしらの不調が続いていて毎月どこかの病院にかかっているし、このままいったら私もいつかは大病にかかるのかもしれないと少し覚悟しました。
人生って本当に不条理で、理由なんてなくても病気にかかったり事故に巻き込まれたり「なんであたしがこんな目に」というような理不尽な仕打ちを次々受けたりするんですね。なんていうか、人生ってどうしようもない。
どうしようもない人生を描いた物語も世の中にはたくさんありますが、エッセイというのは誰かの実生活の描写なわけで、やはりリアリティと説得力がより強い気がしました。おわり。