れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

疲れるけど避けられないフェミニズム

先日書店の雑誌コーナーで『Numero TOKYO 2023年3月号』をちらっと読んだんです。

それで後ろの方に「バービーのモヤモヤ相談室 」という、お笑い芸人のバービーさんの連載があって、それを読んだ時に脳にガツンとくるものがあったのでメモしとこうと思います。

 

雑誌の読者からのお悩み相談コーナーという、よくある読み物なんですが、今回の悩みは育児中の主婦からのものでした。

まだ小さい子供がいて、家事と育児で毎日疲れているけど、夫がとにかくセックスしたがりな人で、子供の前でも求めてくるし、避妊もしてくれないという相談でした。

産後は妊娠しやすい?とのことで、すでに2回中絶しているんだけど、どんなに回数を減らしてほしいと言っても、避妊をしてほしいと言っても、子供の前で盛るのはやめてほしいと言ってもやめてくれないらしい。

それを読んだ私は最初「まったくけしからん夫やな」と思っただけだったんですが、バービーさんの回答は第一声「これは犯罪です」とキッパリ断罪されていて、かなり衝撃でした。

バービーさんの回答に驚いたんじゃないです。明らかに犯罪なのに、そうとすぐに認識できなかった自分の麻痺した感覚にびっくりしたんです。

 

バービーさんのいう通り、両者に同意のないセックスは夫婦間でも性暴力であり犯罪です。だけど、あまりにも「よくある話」なので流してしまった自分がいました。

自分が同意していないのに、結局セックスせざるを得ないという状況が、あまりにも日常的にありすぎて、それが異常であり糾弾すべき事象であるという事実を忘れてしまっていたんですね。

自分が傷つけられたら腹が立って報復するのに、他人の被害に鈍感になっていた自分に本当に驚きました。

そして、女性が日常的に被害を被っている状況に慣れすぎて、刷り込まれすぎて、問題を正しく認識しきれていない事実に改めて絶望しました。自分も女性なのにこんななんで、男性の場合さらに認識できてないんだよなぁとか思ったり。

 

先日高野ひと深ジーンブライド』を読んだ時も同じような絶望と疲労を感じました。

女に生まれてきただけで、なんでこんなにサバイバルせなあかんのや、と、ほんと絶望しかない気分になる漫画ではあります。

冒頭の雑誌でバービーさんも言及していたけど、自分が傷つけられている、損なわれていることに気がつくことは苦しみを伴います。「気づきたくなかった」というのも不思議ではないくらい。

けど、やっぱり一度気づいてしまうと無視するわけにはいかないんですよ。気づかなかった頃には戻れない。無自覚なままでは無垢でいられないように、鈍感なままでは尊厳を保てないんです。

 

だから、韓国や日本で日々出版されているフェミニズム文学に対して、「読むのつらいなー」と感じる気持ちもあるんですが、やはりそれらは今まさに必要なものだな、とも思いました。

私たちは長きにわたって刷り込まれ、洗脳され、麻痺させられている現実に気づいて、自分たちが軽視され、侮辱され、踏み躙られていることにもっと正しく怒った方がいい。

それはBlack Lives Matterとかとも一緒で、ひたすら抗議しないといつまでも被害の連鎖が続くからなんですよね。

今かろうじて私たちが選挙権を持って社会的労働ができているのは、先人たちが抗議し続けて戦ってきたからです。私は別に娘もいないし、子供たちの未来についてそんなに思うところがあるわけではないけど、それでもやはりこの先もずっと(私が死んだ後の世界でも)女性たちが延々こんな理不尽な思いをし続ける世界は勘弁してくれよと思います。なんでか知らんけど、そう思ってしまう。

 

だから、つらいししんどいけど、自分が傷つけられている現実を正しく見つめようと思います。そしてできる限りの手段でそれに抗います。自分と、同じ時代やこれからの時代を生きる女性たちが少しでもマシな未来を手にできるように。おわり。