れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

『東京アリス』

Amazon無料試し読みでまたいい作品に出会いました。

東京アリス(1)

東京アリス(1)

 

お買いもの大好きでジブリオタクのOL・有栖川ふう、いいとこのお嬢様・円城寺さゆり、かけだしの少女漫画家・羽田みずほ、現実主義者の心療内科医・桜川理央。4人はお嬢様学校の女子中学出身の親友同士で、社会人になった今でも連絡を取り合う仲良したちです。

ストーリー開始時では彼女たちは26歳で、仕事や恋愛、これからの生き方について、それぞれ悩み苦しみ、それでも生きていく様が描かれています。

 

私がこの漫画で強く胸打たれたのは、彼女たちの友情、もとい愛です。

私は現在24歳で、もうすぐ25歳になりますが、中学の同級生で今でも連絡を取っている友人なんていません。中学どころか高校も大学も新卒入社した昔の同期でさえ、現在は何のつながりもありません。

私の交友関係は、基本的に今深く関わりのある人たちだけ、なんです。

だからふうたちのような、子供の頃から大人になった現在までずっとつながっているという関係は、なかなか想像つかなかったんです。

 

9巻から10巻にかけて、円城寺が、家が決めた結婚から逃げて自分の愛する人を追いかけてパリへ行くくだりがあるのですが、ここが泣けるんですよ。

円城寺は物心ついたときから親や祖母が決めた人生のレールを進む生き方しか知らなかったので、20代後半になってはじめて自分の意思で一歩踏み出すことに非常に躊躇するんです。

でも、親友のふうが諭すのです。「一番好きな人に逢いに行け」と...。

円城寺はウェディングドレス姿のまま家に戻って急いで支度し、すぐさまチケットを取って空港まで行くのですが、そこでまた怖くなって立ち止まってしまいます。

そこで円城寺は「ふうも来てくれたら心強い」と言い、ふうも勢いでパリへ飛び立つことに。

パリで円城寺は無事"一番好きな人"と結ばれめでたしめでたし、ふうは幸せになった円城寺と1日パリでお買い物を楽しみます。そしてカフェでお茶しながら、円城寺はふうにお礼を言います。

「ふうが背中を押してくれたから

私 ここまで来れたのよ

私のわがままなお願いに応えてくれて

こんな遠くまで来てくれてありがとう」

「円城寺…… 

奥薗さんに おまえ 行けっ なんて言われちゃったし

私は ほんとに何も……

それにパリなんて一度来てみたかったしね」

「ありがとう

ふうは私に勇気をくれた

いつも私を信じてくれて

そばにいてくれた それだけで

私は変われたの

ありがとう」

ここ、じ~んとくるんですよ~本当に。口だけのつながりじゃない、上辺だけの関係じゃない、本当に正直に関わり合ってきた彼女たちだからこそ、この場面は感動的なのです。心から円城寺の幸せを願うふうが健気でとても愛しいです。

 

さらに、11巻にも涙の名場面があるのです。

みずほは以前DVの彼氏が居て、理央たちの協力で別れることができたのですが、なんとその男との間に子供ができていたのです。

みずほは誰にも相談せず、現在付き合っている担当編集者に「妊娠した」と告げます。するとこれまでの事情を知っている担当編集者は「ほんとに俺の子供?」と素直に疑問を投げかけます。動揺したみずほはその場を飛び出し、交通事故に遭ってしまいます。

幸い軽い怪我で済んだみずほでしたが、病院に運ばれ、事故の連絡を受けて駆け付けたふうと理央は、そこでみずほの妊娠について知ります。

「聞いたよ 和久井さんから 妊娠のこと

泉くんの子供なんでしょ?」

(中略)

「………そんな瞳で

見ないで…… わ……私……

…………

わかってる ずるいの

和久井さんに言えばなんとかなる気がして

彼の子供って言えば

軽蔑されちゃった(中略)」

「暴力ふるわれてたのに なんで泉くんと」

「彼 殴ったあとはいつも泣いて謝って……

そのあとすごく優しくなって……

はねつけることもできなかった

もしかしてこのままいい人でいてくれるかもって

……思ったの

でも 同時に和久井さんにも助けを求めてた

二人と...…つきあってやっと立ててる感じがした

馬鹿でどうしようもない……(中略)」

「みずほ……

ここのとこ会う度痩せてるから心配だった

あんたはどうしていつもそう

一人で抱えこんで」

「ばかっ

みずほのばかっばかばかっ

なんで相談しないの?

なんで一人で苦しんでるの

そばにいたのに

なんで私達に頼んないの!?

なんで私達に言わないの

ほんとばかだよ

おおばかだよっ

私達の前ではしっかりしなくていいんだよ

中学生のままのみずほで全然いいんだよっ」

いくつになっても

たとえ40歳になっても50歳になっても

みずほはみずほのままで…… 

ここはめちゃめちゃ泣けます。もう読むたびに泣けます。

ふうは本当にいいこと言うなぁーって思います。

「中学生のままでいい」っていうことが、どれだけ楽で、どれだけ嬉しいことか。

社会に出ると、いやでも大人の振る舞いをしなければならないことが多いじゃないですか。

勿論それが大事な時もあるけど、やっぱり自分の感情を抑えるのってつらいものです。

だから、抑えなくていい相手がいるっていうのは、それだけで非常にありがたいし、貴重な財産なのです。

 

利害関係も血のつながりもない、バラバラの他人同士が、

少女時代を共にしたことと、そこから紡いできた時間の中で、

こんなに強いつながりをもつことって、ほとんど奇跡だと思います。

この話はフィクションですが、実際世の中にこういう友情って、どれくらい存在するのでしょうか…。

私ももし来世があれば、ふうたちみたいな友情に巡り合ってみたいものです。おわり。