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れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

仕事は『稼ぐ力』でみつけるもの

『日本の論点』に続いて読んだ大前研一氏の著書その2がこちら。

この本はさらに面白かったです。

私は紙の本を読むときは、印象深いところやもう一度読み返したい個所に付箋を貼りながら読むのですが、この本は付箋の嵐になりました。

私が付箋を貼った箇所は以下のところでした。

①「人事DB(データベース)」について

人事DBに必要なのは、ソフトの情報だ。それは○×ではなく、「こういう逆境にもめげず期限までにこんなプロジェクトをまとめ上げた」「上司の反対を押し切りコツコツと努力して売り上げを伸ばした」「同僚や部下とこんな軋轢があった」「性格はきついが仕事はやりきる」といった具体的な「叙述」を伴った評価である。それが書いてなければ、その人の能力を第三者が適正に判断することはできない。(中略)

要するに、きちんとした人事DBを作るのは、社内で埋もれている優秀な人材を発見して引き上げたり、適材適所の配置をするためなのだ。(中略)

どうして、それほど面倒で手間のかかることをするのか?

企業にとって”世界で最も稀少な資源”は、レアアースでも高度技術でもなく”優秀な人材”だからである。 もし1万人の社員がいたとしても、真に優秀な人材を見つけ出すことができなければ、その会社は潰れるしかない。

企業にとって人事は、そこまで必死に努力して考えなければならない”命綱”なのである。

だから、やみくもに「○千人リストラ」みたいなやり方は最低だという話でした。社員をコモディティとして扱うような手法は卑劣な馬脚のあらわし方なんですね。人事DB、作りたいですね。

 

②2030年に生き残るための「ハード&ソフト」スキル

ここで簡単な三つの問いを提示してみたい。「あなたはマレーシアの工場に着任しました。そこで働いている現地社員を集めて英語で挨拶し、今後の方針を説明してください」

「あなたは海外赴任先で、キーマンになっている有能な外国人社員から退職したいと言われました。この人を辞めさせないよう説得してください」

「アメリカの工場を閉鎖し、なるべく高く現地企業に売り抜ける交渉をしてください」

いきなりそんなことをできるわけがないと思われるかもしれない。(中略)

しかし、2030年にはそういうことがすんなりできる能力がないと、生き残っていくことはできないと思う。 

マジですか?!って仰天してしまいました。ひぇ~って思いました。

2030年に生き残れるグローバル人材には、会計・財務・マーケティング理論・統計学などビジネスで必要とされる道具=ハードスキルと、先程の質問のような民族・国籍・文化・言語・宗教の違う人たちとコミュニケーションをとってビジネスを円滑に進める能力=ソフトスキルが必須なんだそうです。

そして、それらのスキルはただ一生懸命働いているだけでは身につかず、会社の外で、プライベートな時間を使ってガッツリ勉強をしなければ厳しいようです。

そして・・・勉強は、思い立ったが吉日、なんですって!!!あわわ

 

③自分だけにできる「仕事」をつくる

私が1番強く胸を打たれたのがここの記述です。

人にできないことをやるのが「仕事」であり、誰にでもできることをやるのは「作業」でしかないのである。 

名言ですね。

私、同じようなことを、以前面接で言われたことがあるのです。

「前の仕事で何が楽しかったですか?」と訊かれて、私は少し考えて「機械のメンテナンス講習を受けた時はとても面白くて楽しかったです」と応えると、

「機械のメンテナンス、だけではただの”作業”でしかない。そうではなく、たとえば、自分が機械をメンテナンスすることによって故障が劇的に減って生産効率が上がったとか、それによって皆の負担が減って嬉しかったとか、誰かの役に立てたってことが”仕事”なんだよ」ということを言われて、目から鱗がぽろりでした。

それ以来、仕事をすることで誰の役に立てるか、社会にどんな良い効果を及ぼせるかを気にしながら生活するようになりました。

そしてさらに、大前氏の名言が飛び出します。

自動化が進んで人手をかけてやっていた作業が必なくなったり、人材採用がグローバル化する中で業務が外国人に置き換わったり、IT化やデジタル化によって事業や産業そのものが”突然死”する。そうした予測に危機感を募らせているサラリーマンも少なくないだろうが、それは発想が逆である。もともと仕事というのは「自分で見つける」ものだからだ。 (中略)

従来の仕事がなくなるなら、それに代わってこれから必要とされる仕事を見いだし、自分で仕事を創っていく―――そういう発想こそが、求められているのである。

このことは、常に肝に銘じておいた方がいいなと感じました。

仕事は自分でみつけるもの、自分でつくるものであるということ。

そうしてみつけた・つくった仕事で自分の独自性を高めていかないと、世渡りできなくなるんでしょうね。協調性などではなく。

だから、採用面接で「あなたにしかできないことは何ですか?」と訊かれて「誰とでも仲良くやっていけます」とか「協調性があります」とかしか言えない人は駄目なんですね(私も昔返答に詰まった質問です)。

 

④キャリアにおける3つのフェーズ
  1. 「受命・拝命」・・・言われたことに対して成果を上げることが重要。長くても5年以内に次のフェーズに移行すべき。30歳くらいまで。
  2. 管理職として経験蓄積・・・3つくらいの異なる部署で、それぞ遅くとも3年以内に何らかの成果を出さないといけない。45歳くらいまで。
  3.  必要な3つの役割「全く新しい事業を立ち上げる」「ダメな事業を立て直す」「うまくいっている会社の中核事業をさらに伸ばす」のうちのどれかで大きな成果を出す。50歳くらいまで。

なお、第2フェーズでは、新しい部署についたら最低半年は情報収集などの入力作業に徹した方がいいそうです。着任早々いきなり指示したりすると必ず失敗するらしいです。

 

⑤転職は2,3回がベスト?

3回以上転職した人の給料は下がる傾向があるそうです。必ずしも全員そうではありませんけど。念のためメモ。

 

⑥ ルイス・ガースナーにみる「グローバル・リーダーのパターン」

業績の悪化したIBMの会長兼CEOに就任したガースナーの武勇伝がとても面白かったです。

就任当初コンピューターについて何も知らなかったガースナーは、コンサルタントIBMの概要から問題点に至るまで詳しく話を聞いた後、IBMの世界の主要顧客を回り、IBMの悪口を聞きまくったそうです。そしてその上で、ハードの売り過ぎが業績悪化の本質的な原因だと分析して、次々と改革案を打ち出しました。社内から反対の声が上がると、彼の脳内にすべて記憶されている、顧客から聞いた悪口をつかって個別攻撃を仕掛けて、社内の抵抗勢力を半年で消したとか。カッコイイですね。

私が知る限り、国際的にどこに行っても通用するグローバル・リーダーには共通のパターンがある。それは、一番最初によく人の話を聞き、実態を分析して正しい方向性を見つけるまでは謙虚そのもので全く先入観や偏見を持たずに取り組む、ということだ。そして改革案が出てきたら、強いリーダーシップで周囲を説得して断行する。このフェーズの切り替えは3か月でやることが重要で、2年も3年もかけたら意味がない。

 

⑦「偏差値」のもつ恐ろしさと愚かさ

これはあとがきに書いてあることなのですが、義務教育から大学入試までずーっとつきまとう「偏差値」という数値は、学生運動が活発だった頃に政府が”国にもアメリカにも逆らわない従順な国民をつくるため”に導入したシステムだという話なんですね。私は初めて知りました。

確かに偏差値に関係なく才能を見出すことは可能なはずだし、世界のほとんどの国では教育現場に偏差値システムはないそうです。

結局、日本で導入された偏差値は自分の「分際」「分限」「身のほど」をわきまえさせるためのもの、つまり「あなたの能力は全体から見るとこの程度なんですよ」という指標なのである。そして政府の狙い通り、偏差値によって自分のレベルを上から規定された若者たち(1950年代以降に生まれた人)の多くは、おのずと自分の”限界”を意識して、それ以上のアンビションや気概を持たなくなってしまったのではないか、と考えざるを得ないのである。 

これ、恐くないですか?1950年代に生まれた人ってもう還暦近いじゃないですか。そのくらいの世代から今の子供たちまで皆が「自分の”限界”を意識して」生きる・・・。シビュラシステムじゃないですか。

大前さんは、文章の要所要所で、野心や大志を抱くことの重要さに言及しています。そういう強い動機を持っていないと、世界を変えるような大きな仕事ができないことがわかっているからだと思います。

私にも、野心とか大志とかあるといいんですけど・・・正直明言できるレベルのものは今のところ持ち合わせていないです。残念ながら。

でも、「稼ぐ力」の出発点は、そういうアンビションと目線の高さなのだそうです。つまり、身のほどをわきまえずに、大きな野心を持とう、ってことです。

 

この本には、テクニカルなことから心の芯に響くような力強いメッセージまで、とても深みのある内容が書いてあると思います。ビジネス本はえてして読んだ後が大事で、私はいつも最終的に読後の興奮の1.5%くらいしか残らない薄情者なんですけど、この本をそれで終わらせるのは嫌だと思いました。

勉強は、思い立ったが吉日です。おわり。

 

Kindle版もあります。