れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

『日本の論点』

先日有名ブロガーちきりん氏が大前研一さんのわりと最近の著書3冊をオススメしてらして、ミーハーな私はさっそく読んでみることにしました。

大前さんの本は1,2冊以前に読んだ気がするのですが、経営についての専門的な話が多くて難しかった記憶があったのです。

でも!この本はどんどん読み進められました。面白くて面白くて。

日本の論点

日本の論点

 

1番はじめに大前さんとジャック・アタリ氏の対談が掲載されていたのですが、ジャック・アタリってこういう人だったのかーと思いました。よく高城剛氏の著書に名前が出てくるので名前だけは知ってたのですが、詳しくは知らなかったのです。倫理の教科書に載ってそうな風貌の方でした。

 

失われた20年を経てなお閉塞感極まる現代日本において、「これ、早急にこうしないとまずいぞ!」という問題とそれに対する大前氏なりの解決策が痛快に綴られています。

大前氏自身が世界を飛び回って見てきた生の情報をもとに、大前氏自身がゼロベースから論理的に考えた独自の意見なので、迫力と説得力を併せ持った強力な論証ばかりです。読みながら「すごいなー」「こんな方法があるんだなー」と驚嘆するばかりでした。

大前氏が何年も前からずっとこんなに優れた方策を唱え続けているのに、どうして何処の政治家も実行しようとしないのか、本当に不思議だと思いました。

私がもし政治家だったら、ここまで考える能力がないので、大前氏の策を転用しようとすると思うんですけどね。

 

この本を読んで目についたキーワードは「心理経済学」です。

蓄えのある先進国ではマクロの経済政策よりも消費者や経営者の「心理」が経済を大きく動かす。それが二一世紀の経済の新しい原理として私が提起してきた「心理経済学」なのである。 

ケインズをはじめとする従来の経済学があまり使いものにならなくなっていることはなんとなく感じていましたが、人々の「心理」こそが経済の動きを決めるのだというのは、腑に落ちると同時に革新的な感じもします。行動経済学もいいなと思って一時期関連書を読んでいた時期があったのですが、行動経済学はもっと小手先のテクに使える学問であるのに対して、心理経済学は大局観というか、より大きな社会のムードを作りだすイメージを抱きました。

ビジネスでも何でも、21世紀は心に訴えかけないと成功しない時代なんでしょうね。

 

そして1番共感した記述がこちらです。

身の丈に気付いた人は車を避け、持ち家を避け、子供の教育に金をかけることにも疑問を感じ始めている。今回の震災で過剰な自粛意識が日本を覆ったのは、実は大多数の国民が自粛して生きることの必要性を心のどこかで感じていたからで、震災や計画停電は単なるエクスキューズにすぎなかったのではないか。

すでに崩壊した成長神話の残滓にすがっている限り、日本人は苦しみ続けることになるだろう。背伸びしても昇進と昇給で追いついてくる、という甘い発想からいかに早く「身の丈に合った」生き方、ライフスタイルに切り替えるか、が問われている。 

よく上司や親戚のおじさんおばさんに「車買わないの?」と訊かれたりしますが、彼らと自分の所有に対する意識の違いをいつも歯がゆく感じていました。

身の丈云々の前に、私は所有物を1gでも少なくしたい、減らしたいと常に考えているというのもありますけど。

私の世代のどれくらいの割合が身の丈に合った生き方を意識して生活しているかわかりませんが、前時代的な成長神話を信じる人が1人でも減るといいなと思いました。おわり。