れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

現世に希望のない人に:『無職転生 ~異世界行ったら本気だす』

今月31歳になります。

他人が病気や事故で31歳で亡くなったら「まだ若かったのに」と思いますが、

自分が31年生き延びたことを振り返ると「なんて長い人生だろう」と感じます。

コロナ禍で自宅に引きこもっているせいなのか、仕事がつまらないからなのか、

もしくは理由なんてそもそもないのかもしれませんが、

日々生き延びるのは本当にしんどいです。

 

今期観ているアニメの中で、毎週楽しみにしているのが『無職転生異世界行ったら本気だす』。

第1話 無職転生

第1話 無職転生

  • メディア: Prime Video
 

今や数え切れないくらい使い古された設定”異世界転生もの”。

タイトルだけで切ってしまう人もいるかもしれません。

 

私は過去に、タイトルのラノベ臭で嫌厭して面白い作品を観るのが遅れた経験があるので、どんなに惹かれないタイトルでも必ず1話は目を通すようにしています。

原作は未読ですが、アニメ『無職転生異世界行ったら本気だす』はまず序盤の杉田智和さんの独白演技が本当に素晴らしくて、一瞬で物語に引き込まれました。

 

あらすじは以下。

「俺は、この異世界で本気だす!」

34歳・童貞・無職の引きこもりニート男。

両親の葬儀の日に家を追い出された瞬間、トラックに轢かれ命を落としてしまう。

目覚めると、なんと剣と魔法の異世界で赤ん坊に生まれ変わっていた!

ゴミクズのように生きてきた男は、少年・ルーデウスとして異世界で本気をだして生きていく事を誓うー!

ルーデウスを待ち受けるのは、ロリっ子魔術師、エルフ耳のボクっ子幼馴染、凶暴ツンデレお嬢様、

そのほかの様々な人間との出会い。そして過酷な冒険と戦い。

新しい人生が動き出す! 「人生やり直し」ファンタジー、開幕!

 

公式サイトより)

前世の男の人生って、本当に救いようがない感じだったんですよね。

アニメの中でも度々描写がありますが、思春期に学校でひどいいじめに遭い、外に出るのが怖くなって引きこもりになり、そのままキモオタニート一直線。20年近く人と会話することがなく、ただ食べるだけの生活で肥えて見た目も不潔で、もちろん社会人経験もないまま30代半ばに差し掛かっていました。

人生何歳からだって何者かになれるのかもしれないですけど、この当時の主人公が社会復帰する手立てって本当にあったのかな?と疑問に思います。

彼は前世で何か希望を抱くことが果たして可能だったのだろうか?と。

 

前世でひたすら絶望しかなかった彼が、その絶望と恐怖の記憶を抱えたまま、剣や魔法が活躍する異世界で新しい生を受けます。

世界の成り立ちは違うかもしれないけれど、父がいて母がいて、なんとメイドまでいて、前世と同じように家族とか集落とかの人の営みが存在している新しい世界。そんな異世界で、彼はルーデウスという少年として、前世とは比べ物にならないくらい豊かな人生を歩むんです。

 

もし仮に生まれ変わった世界が異世界じゃなくて、同じ地球上の似たような時代だったとしても、彼は異世界と同じように前を向いて生きていくことができたのかなぁと考えました。

異世界では、魔法の能力の成長が人より早かったルーデウス。これは見方によっては才能・ギフトの類です。

そういうギフトがあったから、前世より上手くいったのかも?

例えば前世でも、もし外見がもう少し整っていたら、もしくは頭がよかったら、何かちょっとした才能があったなら。あんな悲惨ないじめに遭うこともなく、いくらかマシな人生を送っていたのかも?

そう考えると、生まれた時の環境・スペックで、ある程度そのさきの人生の豊かさは決まってしまうということになります。

確かにそれも一つの真実ではあるかなーとも思いますが、どこかそれだけで納得できない気持ちもあります。

***

第2話で、魔法の試験のために家の門の外に出るところがちょっとしたカタルシスで泣きました。

前世の悲惨ないじめの記憶がこびりついているルーデウスは、ずっと家の外に出るのが怖くてたまりませんでした。

外には自分を嘲笑する奴ら、攻撃してくる奴らが大勢いると、本能に刻み込まれていたのです。

怯えているルーデウスを、馬を怖がっていると勘違いした家庭教師のロキシーは笑って「私がいるから大丈夫です」と言って、ルーデウスを抱っこして馬に乗りました。

恐怖でぎゅっと目を閉じ固くなっていたルーデウスですが、町の人が皆明るく自分たちに挨拶してくるのを目の当たりにして、この新しい世界では理不尽に自分を攻撃してくる人間はいないのだと気づきます。

トラウマを克服し、一気に世界が開けたシーンは観ていてじ〜んとしてしまいました。

そしてこの、外の世界に連れ出してくれた瞬間から、ロキシーはルーデウスの恩人になりました。

***

現世に希望がなくて、来世での明るい未来を夢想するのって、人間の本能なのかもしれないなぁと思いました。

すごく悲しい本能ですけどね。

内戦地区とかで、テロの鉄砲玉として自爆する人たちは「ここで自爆すれば救われて、来世で幸せになれる」みたいな教えを受けているという話を、どこかで聞いたことがあります。

現世では何の望みもなくて、失うものがないから、死んで来世で幸せになろうとする。

本能というか、自己防衛ですかね。

 

異世界転生もののライトノベルや漫画や小説やアニメやゲームがこれだけ溢れる現代って、やっぱりみんな結構生きづらい世の中なんだなとも思いました。

コメディものも結構多いので、今まであまり気にしたことがなかったです。きっと物語を作る人たちの中にも、受け取る側の人の中にも、「こんな辛い人生すっ飛ばして、異世界で生まれ変わって楽しい人生送りたい」っていう気持ちがどこかにあるのかもなーと。

 

私は輪廻転生を信じるタイプではないですが、ルーデウスの新しい人生を観ていると、素直にいいなぁ素敵だなぁと感じます。

現世の、今のこの世界は、もうじゅうぶんだなぁって、思います。

別に転生して今よりいい世界で暮らしたいなんて言わないです。

私はもう生まれたくないです、どんな世界でも。

ただただ、私はこの人生もうじゅうぶんだ、とこのアニメを観て思ったのでした。おわり。