れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

山本文緒 の検索結果:

ひとりで生きるのは怖い:『汝、星のごとく』

…。 面白かったです。山本文緒『自転しながら公転する』と少し似たメッセージ性を感じましたが、心に残ったのは別の切り口でした。 井上暁海と青埜櫂という二人の主人公が思春期から大人になる過程での波乱万丈が描かれたラブストーリーで、二人ともヤングケアラーで、田舎の閉塞的な環境やワーキングプア、認められない同性婚など様々な社会的問題にも登場人物たちが翻弄される様子は、読んでいて辛い部分もあります。 高校を卒業した暁海たちは愛媛の離島と東京という遠距離恋愛を続けますが、次々と起きる生活上…

怯えながら生きる:『群青の夜の羽毛布』

最近山本文緒大先生のエッセイや小説を立て続けに読んでいます。 その中で、なかなか読み応えがあったのが『群青の夜の羽毛布』。 群青の夜の羽毛布 (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon 登場人物が煙草をよく吸う、1995年に書かれた小説のようです。 主人公・家事手伝いの毬谷さとる24歳は、電車に乗るのもバスやタクシーに乗るのも怖くてできない神経症の女性です。 さとるがよく行くスーパーで出会った恋人の鉄男は大学4年生で、友達も多いし過去にガールフレンドを切ら…

『日々是作文』

山本文緒大先生の昔のエッセイを読みました。 日々是作文(ひびこれさくぶん) (文春文庫) 作者:山本 文緒 文藝春秋 Amazon おもに90年代に書かれた文章が中心で、その頃山本先生は30代。今の私と同じくらいで、自分と比べるのはいろいろ烏滸がましいとは思いつつも、ついつい比較してしまうのでした。 専業作家にはなっていたけど31歳で離婚して横浜の実家でパラサイトシングルとして過ごしていた時期は、子供時代の回想を含め横浜に関する記述がよく出てきました。 山本先生は横浜は所詮は…

余命を知った後の生活:『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』

山本文緒大先生が最期の時まで書いていた日記が出版されていたのを最近知り、読みました。 無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記― 作者:山本文緒 新潮社 Amazon 人間ドックを毎年受けて、10年以上飲酒も喫煙もしていなくても、いきなり末期癌が発見されたりするんですね。 90歳くらいまで生きるのに充分な貯蓄があったらしい山本先生ですが、58歳で亡くなってしまいました。人生ってまったく計画通りにいかないものだなと思いました。 *** 死期がわかると人生でやり残したと思うこ…

拘りと幸せ:『自転しながら公転する』

…ぱり面白かったです、山本文緒『自転しながら公転する』。 自転しながら公転する 作者:山本文緒 新潮社 Amazon 茨城の実家にUターンしてアウトレットモールのアパレル店員として働くワーキングプアーの独身アラサー・都と、飲食店で働く中卒フリーター・貫一のラブストーリーです。 恋愛や仕事や家族といった普遍的な人間関係の悩みに加え、現代日本を取り巻く労働環境や福祉の問題など、読者である私たちの誰もが他人事とは思えない身近な社会問題を、豊かな物語性と独自の鋭い目線で描き切った長編小…

私にとっての山本文緒(4):『ばにらさま』

山本文緒作品についてつらつら書いてきましたが、一旦ここで終わります。 山本先生の訃報を聞いてから、最後に出版された短編集『ばにらさま』を買いました。 ばにらさま (文春e-book) 作者:山本 文緒 文藝春秋 Amazon 発売は今年の9月ですが、収録されている作品は5〜10年以上前のものです。 文藝春秋の作品ページに概要が載ってました。 冴えない僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい 日常の風景が一転! 思わず二度読み! 痛くて、切なくて、引きずり込まれる……

私にとっての山本文緒(3):『みんないってしまう』

…選ぶとするなら、私は山本文緒『みんないってしまう』を挙げます。 みんないってしまう (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon はじめてこの作品を読んだのは高校3年生の終わりのことです。 高校生の頃の私は、これまで何度かここでも書いてきましたが、生まれてきたことがとにかく嫌で、生きているのがしんどかったです。 生きていることに希望が何もなかったので、進路についても真面目に考える気が起きず、周囲の勧めるまま、センター試験の結果を踏まえて「もしかしたら受かるか…

私にとっての山本文緒(2):『ブラック・ティー』

…。 中学時代も何冊か山本文緒作品を読んでいて、なかでも好きだったのが『ブラック・ティー』でした。 ブラック・ティー (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon こちらは軽犯罪をテーマにした短編集です。 一話目に収録されている表題作「ブラック・ティー」は、無職の女性が山手線の忘れ物からお金を抜き取り都心で暮らしている話で、子供心に「働かなくても一人で生きていくこともできるのか」と印象的でした。 彼女は最初から盗人ニートだったわけではありません。学校を出て就職…

私にとっての山本文緒(1):『絶対泣かない』

先月作家の山本文緒さんがお亡くなりになりました。享年58歳。 ネットニュースの記事は10月18日発表のものが多いのに、私が訃報を知ったのはなんと昨日、11月13日でした。 11月13日は山本先生のお誕生日で、たまたまinstagramのタイムラインで目に止まった山本先生アカウントの投稿が、故人を偲ぶ感じのテキストだったので「・・・え?まさか」とGoogle検索したら、ひと月前の訃報記事が出てきてびっくりしました。 なんて間抜けな自分。 いまだに信じがたくて、でも喪失感と悲しい…

病気と健康のはざまで:『シュガーレス・ラヴ』

…度も書いていますが、山本文緒さんの小説が本当に面白くて大好きです。でも全部読んでるわけではないんですよね。 Amazonであらすじを読んで、ああ未読だなと思ったやつを気まぐれにポチりました。そして期待を裏切らず、やっぱりすこぶる面白かったです。 シュガーレス・ラヴ (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon 骨粗鬆症や自律神経失調症など、疾患をモチーフにした短編集です。 最初に出版されたのは1997年らしいです(Wiki調べ)。 山本文緒さんの短編集をはじ…

『なぎさ』

…待を裏切らない作家が山本文緒大先生。 『なぎさ』を読みました。やっぱり、すごく面白かったです。 なぎさ (角川文庫) 作者:山本 文緒 発売日: 2016/06/18 メディア: Kindle版 本を手に取りパラパラ目を通すと、目についたのは久里浜の描写でした。 実在する土地をここまで詳細に取り上げた山本作品は珍しいかもと思ったのと、久里浜は私にとってまあまあ馴染みのある土地でもあったので、興味を持ちました。 主人公の冬乃は30代の専業主婦です。 彼女が現在夫と二人暮らしをし…

もう一人の私、もうひとつの人生:『ブルーもしくはブルー』

山本文緒さんの作品は本当にどれも暴力的なまでの面白さだと感服しました。 ブルーもしくはブルー (角川文庫) 作者: 山本文緒 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1996/05/01 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (77件) を見る ドッペルゲンガーのお話で、ファンタジーと称されていますが、全然ファンタジーという言葉がしっくりこないくらいリアルで怖くて切なくて夢中になりました。 主人公の佐々木蒼子は、愛はないけど金はある夫と結婚六年目の子なし…

自己制御の難しさ:『恋愛中毒』

…パッと購入した小説が山本文緒大先生の『恋愛中毒』でした。 恋愛中毒 (角川文庫) 作者:山本 文緒 発売日: 2002/06/25 メディア: 文庫 私が好きな小説家として真っ先に名前を挙げるのが山本文緒さんです。 小学生で漫画ばかり読んでいた頃、入り浸っていた近所の本屋で棚に飾られていたのが山本文緒さんの作品たちで、ほんの気まぐれで短編集から手を取ったのですが、すっかりファンになりました。 でも全ての作品を読んでいるわけではなく、いつか読もう読もうと思っていたのがこの『恋愛…