信仰というよりは、仏教の根源的な考え方(何かを求める心が苦しみを生む的な)に惹かれていました。苦しみから逃れるのは無理でも、苦しみを受け入れ諦めるいい方法を見つけ出せるんじゃないかと。
さまざまな宗派のいろんな住職が、それぞれの切り口から仏教について本を書いていて、なかにはちょっと説教くさかったり自己啓発じみているものもあって、そういう書籍を読んでいるうちにだんだん私の中の仏教熱は冷めていきました。
けれど一冊だけ、読んでいて面白いし温度感がちょうどいいなと思うものがありました。それが『気になる仏教語辞典』です。
ブックデザインや解説イラストが可愛くて、読んでいて楽しかったです。裏表紙にも使われている「天上天下唯我独尊」の暴走族風の絵とか、かわいいです。
多くの住職本と違って、説教くささや上から目線の教えがないので、フラットに仏教について知りたい方におすすめできる一冊。
辞典なので「あ」で始まるものから順番に記述されています。
最初は「愛」なんですけど、おもに渇愛について書かれていて、あまりいいものとして扱われていないんですよね。世間一般的にいいものとされがちな「愛」を、わるいものカテゴリに入れる姿勢が好感持てました(ひねくれてますかね)。
でも最後の単語は「和顔愛語」で、きわめて平和的に終わります。
***
仏教のはじまりから日本仏教の各宗派の違い、歴史の授業で聞いたことのある各宗の開祖についてなど、かなり噛み砕いて読みやすく解説されていました。おかげでおおまかに仏教の全体像をイメージすることができました。
日本仏教って、おおもとの仏教からだいぶ独自発展を遂げてる感じがしました。
実際に出家したり修行したりしたら、それなりに戒律や規則があるんだと思いますが、この本のテンションくらいゆるく仏教を取り入れて生活していくのが、多分一番心地いいだろうと思います。
肉も食べるし虫は殺すし、クリスマスもハロウィンもなんとなく祝うけど、お墓参りや厄祓いもするし、ふらっとお寺に行って和むこともある。そういう距離感でいたいなぁと思いました。
***
仏教ブーム中に首都圏のいくつかのお寺を回って気づいたことがあります。
ひとつは、現代の日本にも信心深い人はたくさんいるということです。
正月の初詣じゃなくても、日常的にお寺にお参りに来る人がこんなに多いのかと驚きました。
学校教育や家庭教育で仏教徒的信心が育まれてきたのもありますが、私の場合は10代のころに習っていた茶道の影響も大きいのかもしれないと思い至りました。
仏教の教えってそのまま茶道にも適用されてるものが多いんですよね。お稽古のたびに唱和させらていた「ことば」(われわれは、茶道の真の姿を学び〜ってやつ)なんて、まさに仏教的だったんだなと今更気づきました。
***
もうひとつの気づきは、大きいお寺の近くには美味しい和菓子屋さんがある確率が非常に高いということ。
おかげで仏教ブームから派生してあんこブームまで到来しました(私の中で)。
逆に言うと、美味しい和菓子を食べたかったら有名なお寺の近くを探すといいと思います。おわり。