れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

人生リセットボタンを押すか押さないか:『カルテット』

2次元が大好きでアニメや漫画やゲームばかり目がいきがちですが、最近テレビドラマも面白いなぁと思ってよく観てます。

カラオケでいつも「おとなの掟」を歌うんですが、この曲が主題歌であるテレビドラマ『カルテット』は観よう観ようと思っているうちに時が過ぎ、今日やっと観終えました。

面白かったです。サスペンスと聞いていたのでもっと殺伐とした感じかと思ってましたが、笑いあり涙ありの、テンポのいい群像劇でした。

 

ざっくりいうと、いい歳した大人の男女4人が、音楽の夢を捨てきれないモラトリアムと個々人の事情を抱え隠しながら共同生活して、だんだんそれぞれの秘密が露呈し始め関係がもつれ合いながらも、互いに支え合うヒューマンドラマです。

 

4人とも弦楽をやっていて、音楽で身を立てられたら一番よかったものの、そこまでの実力がなく、かといって趣味と割り切れるほど冷めきれず、仕事も生活も音楽もどこか欠けていて不確かな人生を送っていました。

さらには過去に身内に担がされて詐欺をしていたり、戸籍を買っていたり、家庭の事情で追われていたりと面倒なさだめも背負っています。それぞれが脛に傷もつもの同士なので、距離感がちょうど良く、波長的に分かり合える仲間になれたのです。

 

物語の終盤で、高橋一生さん演じる家森が「人生リセットボタンがあったら押すか押さないか」みたいな話をする場面がとても心に残りました。

もうメンバーみんなの抱えるものが一通りわかった頃で、打ち解けあって夕飯を囲み酒を飲み交わしている中で出た話題だったのですが、このドラマで主人公たちがボタンを押さないという理由と、私個人がボタンを押さない理由に大きな乖離を感じて、それが興味深いなぁと感じました。

 

私には、決定的に人生の選択を間違えたなと感じる時点があります。

高校卒業の頃の進路選択です。

行く大学を間違えたというのもありますが、もっと大きな方向性を見誤ったなと、振り返ると明らかにそこが汚点というか、ハンドルを切り違えた瞬間だったといまでも思います。

多分死ぬまで「あれが間違いだった」と自負しながら死んでいくと思います。

では、そんな明らかな間違いの前まで時間を巻き戻せるとして、そんなミラクルなリセットボタンが目の前に立ち現れたとして、いまの私はそれを押すか?

押しません。

いまの生活に満足しているからではありません。

間違いの人生だった、そんな中でもかけがえのない出会いがあった、なんてことでもありません。

文字通り、あの時点から私の人生はゴミです。

楽しいこともありました、でもそんなのとるにならないことです。

あの時点の手前までの、手のひらに何でもあった幸福なあの頃に比べたら、20代の時間なんて全部なんの価値も見出だせないくらい、カスみたいな人生でした。

そしてきっとこの先も、もう残念会みたいな余生しか私には残ってません。

死ぬまで永遠に過去に囚われて後悔ばかりの生活でしょう。

それでも、リセットボタンなんて押しません。

 

なぜなら、何回リセットしたって、望む人生なんて手に入らないと諦めているからです。

 

だいたい、もうやり直すような気力が1ミリも残ってません。いくら肉体が一緒に若返ってくれても、こんな地獄みたいな記憶を抱えてもう一度注意深くやり直せるような集中力は私にはありません。

もし記憶も一緒にリセットされたとしても、きっといまと似たような選択をして、同じようなゴミカスな人生しか歩めないと思います。

こう考えると、結局人生って一通りしかないのかもなぁと、しみじみ思います。

自由意志なんて、どうやって証明できるのでしょう。かといって決定論を証明できる手立てもないですが、ただただ実感として、私の人生も、誰の人生も、こんな風にしかならなかったんだろうな、と、諦念が床下浸水みたいに足元からじわじわ湧き上がってくるのです。

 

胸を捻じ切るような陰惨な事件も、後味の悪い誰かの心ない一言も、

夢みたいな楽しいひと時も、偶然みたいなラッキーな出来事も、

よくよく振り返ると全部不可抗力なんじゃないかって、根拠はないけど感じます。

そうして学習性無力感みたいな、身体の力が入らない状態になるのです。

というか、よく考えたらそうなって当たり前ですね。だって、どんなに「あの時こうすれば」とか「ああだったら」とか考えたところで、過去って変えられないですもんね。

だから無力感しかないんですね。

失敗から学習して成長しようとするような気概もないですしね。

 

***

 

私のカラオケの十八番「おとなの掟」も、今まではただ素敵な曲だなぁとだけ思ってましたが、このドラマを観た後だとさらに世界観が深みを増してもっと好きな曲になりました。


カルテット主題歌 おとなの掟 / Doughnuts Hole (椎名林檎 )

ドラマではしばしば満島ひかりさんの美しさに釘付けになりました。とても引力のある女優さんだと思いました。かなり好きです。

 

それと!!!高橋一生さんの泣きの演技がものすごく好きです!!!

これは最近ドラマ化した『凪のお暇』で完全にハマりました。

こんなに心を掴む男泣きをするのは高橋一生さんだけだと思います。あーもっと観たい。

 

秋の夜長に、3次元ドラマもこれからもっと掘り起こしたいと思います。おわり。