現在放送中の梅田阿比原作のアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』は
イラストも音楽も素晴らしく美しい作品です。
先月から放送開始されたばかりなのですが、第3話のある一場面が妙にずっと頭から離れないので、記録しておこうと思います。
物語全体のあらすじは以下。
砂がすべてを覆い尽くす世界。砂の海に浮かぶ巨大な漂泊船“泥クジラ”で暮らす人々の多くは、感情を発動源とする超能力“情念動(サイミア)”を操るも短命だった。 「外界から閉ざされた“泥クジラ”で短い一生を終える」 その運命を受け入れる少年チャクロは、ある日突然漂着した廃墟船の中で1人の少女と出会う。彼女の故国「帝国」は“泥クジラ”の住人の祖の故郷であり、自分達が流刑囚の末裔であることを知る。帝国との戦いの後、第3勢力「スィデラシア」の青年貴族ロハリト一党を仲間として迎え入れた矢先、チャクロらは短命の原因が“泥クジラ”に命を吸われているためだと知る。あまりにも残酷な秘密に他の者には隠し、守ってゆく誓いを立てる。しかし、無印を蔑み彼らに仕切られることに不満を抱く双児シコクとシコンが印である自分達が泥クジラの運命を決めて無印を切り捨てる呼びかけをし、泥クジラの住人の間に動揺が走る。
(Wikipediaより)
原作の漫画は2017年11月現在も連載中で、アニメでどこまで描くのかわかりませんが
アニメは各話のタイトルが登場人物のセリフから取られているんです。
その中で、第三節「こんな世界は、もうどうでもいい」がなぜか異様に好きなのです。
平和だった泥クジラがいきなり帝国に襲われ、無抵抗な人々が次々と殺されます。
泥クジラ一強いとされる青年・オウニは、泥クジラが襲撃された直後まで”体内エリア”と呼ばれる、船の中の監獄のようなところに収容されていました。
外の異変に気付いて体内エリアから出てきたときには、すでに仲間の何人かが殺された後でした。
オウニは元々泥クジラでの日々を面白く思っておらず、外の世界にずっと憧れていた青年です。自分の信頼できる仲間だけでグループを作り活動していて、泥クジラの規律を度々乱しては体内エリアに収容されることが多かったので、彼のグループは”体内モグラ”と呼ばれていました。オウニはそこのリーダー格なのです。
憧れていた外の世界からやってきた帝国の人間に仲間を殺されたオウニは、外の世界が思い描いていたような未知なる世界でないことを知り、また、仲間を救えなかった自分への深い絶望からやけになります。
「・・・こんなもんかよ
俺やこいつらが憧れてきた砂の海の外は
顔の見えない人間かもわからない連中が
簡単に俺たちの夢を踏みにじる
・・・そんな世界だったのかよ」
「オウニ!!」
「・・・目ぇ覚めたわ
もういい
どうでもいい」
(梅田阿比『クジラの子らは砂上に歌う②』秋田書店 H26.4.30)
アニメでは、オウニの声は梅原裕一郎さんが演じていらっしゃるのですが
もう彼の「どうでもいい」が脳裏に焼き付いて離れないのですよ。
観ているこちらも、「ああ、ほんと、もうどうでもいいや」と感情を引き摺られるような、迫真の「どうでもいい」なんです。
この第3話を観てから、つまんない仕事も、めんどくさい取引先も心の底から「どうでもいい」と感じるようになり、あまりとり合わなくなりました。
投げやりだけれど気は楽です。
オウニはその後帝国の兵士を次々と殺し、捕虜をとらえて帝国の情報を吐かせたりして、なんだかんだ言いながらも泥クジラの主要戦力として帝国に立ち向かっていきます。オウニは本当に強くてかっこよくてイケメンです。オウニ大好き。
アニメはエンディングテーマもとても良いのです。
rionos/ハシタイロ MUSIC VIDEO(FULL SIZE) (TVアニメ『クジラの子らは砂上に歌う』ED主題歌)
美しいメロディと和音、このエンディングに乗って展開される次回予告も毎回とてもドキドキする演出で大変素晴らしいです。
続きが楽しみなアニメがあるというのは実に幸せなことです。
どうでもいい世界における、ほんの一粒の光のような。おわり。
原作も面白いです。やっぱりストーリーをきちんと追うには漫画ですね。