職場で隣の席の聡明な女上司から教えていただいた映画『エゴン・シーレ 死と乙女』を観ました。
この映画の話を聞くまでエゴン・シーレという画家のことを知りませんでした。
画家の伝記はほとんど見聞きしたことがないのですが、この映画はなんだか物悲しくて、しかし一つの物語として胸を打つ作品でした。
あらすじは以下。
第一次世界大戦末期のウィーン。天才画家エゴン・シーレはスペイン風邪の大流行によって、妻エディットとともに瀕死の床にいた。そんな彼を献身的に看病するのは、妹のゲルティだ。――時を遡ること、1910年。美術アカデミーを退学したシーレは、画家仲間と“新芸術集団”を結成、16歳の妹ゲルティの裸体画で頭角を現していた。そんなとき、彼は場末の演芸場でヌードモデルのモアと出逢う。 褐色の肌を持つエキゾチックな彼女をモデルにした大胆な作品で一躍、脚光を浴びるシーレ。その後、敬愛するグスタフ・クリムトから赤毛のモデル、ヴァリを紹介されたシーレは、彼女を運命のミューズとして数多くの名画を発表。幼児性愛者という誹謗中傷を浴びながらも、シーレは時代の寵児へとのし上がっていく。しかし、第一次世界大戦が勃発。シーレとヴァリの愛も、時代の波に飲み込まれていく――。
(公式サイトより)
エゴン・シーレを演じる俳優ノア・サーベトラさんが終始イケメンすぎてちょっと笑えました。
こういう甘いマスクのダメ〜な男の人って、かなり好きです。というか、この人どう見てもモテるな、って瞬時にわかりますね。
優男シーレの周りには、いろんな女性たちが登場します。私が一番心に残った女性はやはりヴァリです。
ヴァリは内縁の妻のような立ち位置ですが、シーレの芸術の一番の理解者でもあり、恋人であり家族であり・・・いろんな関係性を内包する非常に懐の深い女性に見えました。
でも、兵役することになったシーレは彼女ではなく、別の女性(エディット)と結婚するんです。
エディットの事も愛していたのかもしれませんが、ヴァリを正妻にしなかったというのはつくづく”結婚”という制度の不可思議さを再認識させられます。
全然違うのにいくえみ綾『あなたのことはそれほど』を思い出してしまいました。
シーレは自分の周りの女性への好意に順番をつけられたのか、つけられなかったのか・・・。
最後、エディットを正妻に選んだことがどうしても受け入れられないヴァリはシーレの元を去るのですが、のちにどこかでまたシーレに会えないかと思って従軍看護婦になります。しかしついにシーレには会えないまま、病気に罹って死んでしまいます。
自分の緊急連絡先をシーレにしていたヴァリ。ヴァリの訃報がシーレに届くとき、彼は自身の個展を開いていました。
ひときわ目を引く位置に飾られた彼の傑作「死と乙女」。描かれた女性(ヴァリ)を見つめながら、シーレは彼女と過ごした年月を静かに思い起こすのです。
ああ、今思い出しても泣けます。
このくだりがどれくらい真実なのか定かではありませんが、こんなに物語的な人生も珍しいのではないかと思います。本当に切なくて悲しい話です。
その後シーレも当時の流行病に罹り28歳の若さでこの世を去るのですが
高熱に苛まれた彼が最後に思い返した女性は誰だったのでしょう。
Wikiを見ると直前まで妻エディットのスケッチを描いていたとのことですが、私はどうにもヴァリ贔屓で、生気のないシーレのまぶたの裏に彼女の姿を見てしまうのでした。
この作品を教えてくださった女上司は海外旅行もお好きな方で、エゴン・シーレ美術館にまで作品を観に行ったことがあるそうです。
私も現地に作品を観に行ってみたくなりました。
映画の感想としてついつい恋愛ロマンスにばかり重きを置いてしまいましたが、彼の芸術に対する情熱は確かに相当なものだとわかりました。
いろんな女性を振り回しながらも、それでも自身の信じる芸術を追求したエゴン・シーレ。その短いながらも物語性の高い人生に、憧憬すら抱いたのでした。おわり。