あけましておめでとうございます。
2017年元日からご紹介したい作品は池辺葵『プリンセスメゾン』です。
年末に最新巻(3巻)を読んで泣いてしまいまして・・・。
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主人公の沼越幸は26歳の居酒屋勤務(正社員)。安い賃貸に住み、真面目にコツコツ働いて貯蓄中の彼女の夢は「マンション購入」です。
彼女が理想の住まいを探すために度々訪れる持井不動産株式会社では、社員の伊達さんをはじめ、様々なスタッフが彼女の住まい探しをサポートしてくれます。
そんな幸と持井不動産の人々、そしてその周りの様々な事情を抱えた人々の暮らしの様子が、独特のタッチで描かれている作品です。
幸は職場の先輩社員に「あんなに信用できるやつは滅多にいない」と評されるほど、真面目でひたむきな女性です。
小柄でいつもラフな格好をしていることと、居酒屋社員という決して高給取りではない職業は、マンションの見学会でも少し浮いているし、ディベロッパーから見て必ずしも積極的に接客したいお客様ではないかもしれません。
それでも幸の真剣な様子に、伊達さんや受付の派遣スタッフたちも彼女を心から応援したい気持ちになっていきます。
特に伊達さん!伊達さんが個人的に見た目から何からクリーンヒットなんですけど、伊達さんはかなり幸のこと好きですよね。
幸が理想の間取りを描いて持ってきた時には、すぐにコピーして予算その他も踏まえてぴったりの物件を時間をかけて探してくれたり、物件見学の後に街を案内してくれて、本当は苦手であろうボートにまで一緒に乗ってくれたり、伊達さん本当にいい人すぎます。大好きです(告白)。
3巻の最後に、幸はついに希望に合う物件を見つけて、無事マンション購入に踏み切ります。
購入に際して、宅地建物取引士でもある伊達さんが重要事項説明をおこなう場面がすごく好きです。
長い説明に疲れて一息つくタイミングで、幸が伊達さんにこれまでのお礼を言うんですけど、その時の伊達さんの喜びと切なさがないまぜになったような優しい笑顔が非常に胸に迫ってきて、何回読んでも泣いてしまいます。
「沼越さまが新しいお家で末長く幸せに暮らしてくださることが、私の最高の喜びでございます。」
友達でも恋人でも家族でもなんでもない、ただのお客様のうちの一人である幸の幸せを、本当に心から願う様子がよく伝わるシーンです。
幸も、伊達さんも、とても真面目でひたむきで、けれども決して頑なではなく、心の温かな人たちだなぁと、最新巻を読んで改めて感じました。
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この作品の大きなテーマの一つに”様々な女性の「ひとりだけの自分の家」”というのがあるようです。
私も社会人になって、自分のお金で自分の家を借りるようになってしばらく経ちますが、
自分の家を”買う”ことは一生ないかもしれません。
そもそもどこかにずっと住み着くことが少し怖いというか。。いろいろと覚悟がないんですよね、きっと。仕事もすぐ辞めるし。
幸はなんと、私と同い年なんです。
3巻の最後に、幸のマンション購入の契約内容を記載した「御資金計/諸費用概算表」が載っているんですが、それを見ると年収も私と対して変わらないみたいで・・・でも、私の2倍くらいかもっと貯金があるようだし、仕事もずっと続ける様子。すごい。幸すごいです。
作中にも出てきますが「腹のくくり方がちがう」んですよね、幸は。
「でも本当にすごいねー。
ほんとに買っちゃうんだねー。
私も買いたいけど
この先、結婚もしたいし
そしたら家って邪魔かなーとか思うし
ローンも先を考えると
なんか怖いしなー。」
「・・・すごく勝手なんですけど
私そこまで先は考えてなくて・・・
両親とも40代で亡くなってますし、
私だっていつまで生きられるかもわからないし、
この先どうなるかわからないから
むしろ 今しかないって。
いつくるかわからない日を待つよりは、
今のベストをつかみたいんです。」
私だって、誰だって、いつまで生きられるかわからないし、この先どうなるかわからないです。
だから、今のベストをつかむために、「今のベストって何だろう?」ということを、よーく考えようと決心した、年末年始でした。
本年もよろしくお願い申し上げます。おわり。