先日ご紹介したマツモトトモ『インヘルノ』の中に、平田俊子の詩集が出てきました。
さらには引用もされていて、その詩集『ターミナル』は日本全国でも数えるほどの図書館にしか置いていないようでした。
なんだか少し気になって、とりあえず近所の図書館にあった『平田俊子詩集』でざっくり読むことにしました。
詩集を読んでこんなに「面白い!」と強く感じたことは、今までなかったかもしれません。茨木のり子くらいでしょうか。
自分にとってかけがえのない詩集の一つに金子千佳『遅刻者』があるのですが、『遅刻者』はもっと追い詰められたヒリヒリとした感触があって、引き込まれるし夢中になってページをめくるけれど「面白い!」というのとは少し違う気がするのです。エンターテイメントではないというか・・・
それにひきかえ平田俊子の詩は一番初めの「ラッキョウの恩返し」から、面白くてびっくりしました。え〜!面白い!どうしよう・・・という感じです。笑えるしドキドキしました。
まったくの創作物というよりは、平田俊子その人が垣間見える作品も多く、エッセイに近いものからSFが混じったようなシュールなものまで幅広いです。
しかしそれらの作品が、まるで平田俊子の(もしくはとある女の)人生を刃物で切り裂いた切れ切れのように、生々しくリアルで、色鮮やかで血が滴るような体温の残る肉片みたいなのです。んん〜上手く言い表せなくてもどかしいんですけど。
生い立ちや生来の性格によるものなのかもしれませんが、物事を他の人とは違ったレベルで正直に捉え、涵養し、小気味よく歪に形作られた言葉と物語を紡ぐことができるこの平田俊子という人の才能に、完全に魅了されてしまいました。
・・・ああ、ダメですね。全然彼女と彼女の作品の凄さを言い表せていない。
一言に集約すると「面白い」となってしまう。だって面白いんですもの!!
詩集の裏表紙に辻征夫(詩人)のコメントが載っているのですが、とても共感できます。
平田俊子はめずらしく、退屈しないでおしまいまで読める詩を書く人である。彼女が朝日新聞日曜版に詩を連載したときには、あまりのおもしろさにふと危惧さえ感じたくらいだった。
詩人が危ぶむほど面白い詩を書く詩人、それが平田俊子なんですね。
詩を読んでも退屈しか感じない人にも、他に好きな詩人がいる人にも読んでほしい作家です。詩ってこんなに豊かな表現方法だったのかと驚きます。
最後に「これは名言だな」と思わず笑ってしまった一節を引用します。
夫を殺したくなったときはがまんしないでやるべきです。殺意と尿意をこらえるのは女性のからだに大敵です。おもいきって実行しましょう。
詩集<(お)もろい夫婦>「ネンブツさん大忙し」より。
あ、こんな話ばっかりじゃないですよもちろん。男性の方にも是非読んでいただきたいです。おわり。