ここ数ヶ月BL漫画を読み漁っている私ですが、BLの枠を超えてとにかく底抜けに面白い!と夢中になっている作品がこちら。
もう、びっくりするくらい面白くて毎朝目覚めた布団の中で読んでいます。
あらすじは以下。
真誠会若頭の矢代は、男なら誰でもいい淫乱と噂される男だったが、部下には手を出さないと決めていた。 けれど、付き人兼用心棒の百目鬼だけは例外だった。 性的に不能で感情を見せない百目鬼の存在は、何をしても性的対象として見られることのない安心できる存在のはずだった。 一方、何者かの銃弾に倒れた矢代を目にした百目鬼は、自分の矢代への想いがなんであるのか、はっきりと理解した。 矢代のために変わることを決意した百目鬼と、そんな百目鬼に戸惑う矢代。 ふたりの関係が変わり始めた——!?
主人公の矢代がとにかく大好きです。
美人で淫乱ネコで真性マゾのヤクザの若頭って、すごいキャラですよね。その性質ひとつひとつが飛びぬけててこんなぶっ飛んでるのに、
かわいいんです。
高校からの腐れ縁で医者の影山にずっと片想いしている様子なんて、ほんと乙女なんです。そんな乙女が美男でマゾで淫乱でヤクザの若頭なんて・・・萌え禿げます!!
でも本当に矢代に惹かれるのはその飄々としたたたずまいと独特のものの見方・考え方です。
矢代は小学生のときに母親の再婚相手の親父に性的虐待を受けます。中学を出るまで義理の父に犯され続けた彼は、いつしか真性マゾでセックスのことが頭から離れない淫乱に育ってしまいました。
しかしそんな境遇で育った自分を特に哀れに思うでもなく、すべてを受け入れ、どこまでも変態になっていく矢代のすがすがしさに、私はどうしようもなく焦がれました。
矢代の言葉はとっても心に残ります。
百目鬼の内ポケットに入っていた百目鬼妹が絵で賞を取った記事の切り抜きを見つけたときの独白がこちら。
自慢じゃないが俺は俺のことが結構好きだ
俺という人間をそれなりに受け入れている
よって人を羨んだことはない
ただの一度も―――
(ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない①』大洋図書 2013.1.30)
明け方鉄砲で撃たれて死にかけたときに見た走馬灯のはざまの独白はこちら。
俺は 全部受け入れてきた
何の憂いもない 誰のせいにもしていない
俺の人生は誰かのせいであってはならない
人間を好きになる孤独を知った
それが”男”だという絶望も知った
俺は もう充分知った
(ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない②』大洋図書 2013.11.1)
行方不明になった部下を探して病院を抜け出したときの独白はこちら。この部分は特に好きです。
ヤクザにとって欠かせないものとは何かと問われたら
多分こう答える
その1 金(をつくる頭)
その2 金(を作る行動力)
その3 面子(見栄)
その4 権力(出世欲)
ただし
欠かせないものが欠けていてもヤクザにはなれる
とりあえずは誰もが
(ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない③』大洋図書 2015.6.1)
仕事が嫌になったとき、この言葉をよく言い換えて唱えたりします。
「欠かせないものが欠けていても営業にはなれる とりあえずは誰もが」とか。
”ヤクザ”の部分に自分の向いてない職業名を入れて唱えると、なんだか気が楽になります。
矢代は無駄な力がまったく入ってないんですよね。柳のような人です。
それでいて賢くて、申し訳程度に人情もある。
だからとにかく魅力的なんです。
百目鬼は一目惚れしてどんどん心酔してるし、影山も腐れ縁といいつつずっと気にかけているし、三角(矢代の上司)は矢代がかわいくてしょうがないし、竜崎(矢代の兄弟分)もなんだかんだ言って矢代を嫌いになれない。っていうか好きなんです。
みんな矢代が大好きなんです!!!!
だってかわいいし美人だし賢いし優しいし!!!!
私も大好きです!!!!
これでもし矢代が女だったら、またぜんぜん違った感じになるんでしょうけどね。
やっぱり男っていいですね。
BLを読めば読むほど、自分の女体やジェンダーが面倒に感じます。
私だって矢代みたいにすべてを受け入れて、自分という人間をそれなりに好きになりたいんですけどね。難しいですね。おわり。