れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

『逃げるは恥だが役に立つ』

面白い漫画を読みふけって現実から逃げ続けている今日この頃・・・。

Amazonにのせられながら無料本をいくつか読んだ中、私の心に引っかかった作品がこちら。

主人公の森山みくりは25歳。心理学専攻で大学を卒業、就活がうまくいかず流れで大学院に進学、臨床心理士の資格をとるものの結局また就職できず派遣社員になり、さらに派遣切りにまで遭いまた求職者に・・・という、つらい状況から物語は始まります。

実家に暮らしていたものの、定年を迎える父が田舎に引っ越すと言い、仕事も家も危うい状況だった時、父の伝手で家事代行のアルバイトをさせてくれていた京大卒のエリート会社員津崎平匡36歳と事実婚契約結婚することになります。

それなりにものの考えが合う2人は、なかなか良い同居生活を送っていましたが、少しずつ平匡の同僚やみくりの伯母に不信感を抱かれてしまい、それに伴ってみくり達の仲もギクシャクしたりしなかったり・・・。

 

まだ3巻までしか読んでいないのですが、どうも複雑な気分になります。

話は勿論面白いんですけど、読みながらどうしても自分のことも考えてしまうんですよね。他人事ではないというか。みくりと自分を一緒にするとかそういうことではないんですが、自分を顧みない(および省みない)わけにはいかないんです。

 

私自身のことを書きます。

実は私も、大学で心理学を専攻していました。

みくりはどういう気持ちで心理学専攻に進学したのかまだわかりませんが、私の場合は、ただ単に自分の学力であればお金のかからない大学が近所にあって、そこで一番(消去法で)興味があったのが心理学だったのです。

高校ではずっと理系で模試の応酬で辟易していた私は、もうあまり努力しないでぼーっとできる進路であればなんでもいいや、と投げやりな気持ちでした。

心理学は、学んでみるとそこそこ面白い学問でした。ただ、私は臨床系には今でも懐疑的です。だから、カウンセラーになろうとか思ったことは一度もありません。

成績は良かったのですが働きたくない気持ちが強くて、ゼミの教授に促されながら少しは就職試験も受けましたが、当然内定など出ず、4年の夏ごろから大学院進学も視野に入っていました。

ただ、金銭的に院進学では奨学金を頼らざるを得ないのがどうしても嫌だったのと、論文を書くことが全然好きになれなかったのと、院試の勉強さえ面倒だった為、結局進路未定のまま成績優秀者で卒業してしまいました。

たまたま運良く卒業してすぐ既卒で受けたメーカーで内定が出て、1年半くらい働いたものの、そこも疲れて辞めてしまいました。

 

そういう経験があるので、みくりの最初の境遇は他人事じゃなかったのです。

ただ、話を読んでて、みくりくらい優秀なら就職できそうだとは思うんですけどね。まあ漫画ですしね。

みくりと契約結婚をした津崎平匡は、高学歴高収入で見た目も悪くないんですが、童貞なんですよ。中年童貞(漫画の中では高齢童貞と言われてますが、36歳は高齢ではないと思います)なんですよ。相当な奥手です。

そんな彼は、まあ当然のようにみくりに好意を抱いていきます。みくり可愛いですしね。一緒に住んでいてまあまあ気も合うので、好きになるのは自然だと思います。

でもその感情を上手に扱えないし、表に出せないのです。みくりの周囲に少しでも男の影が見えたり見えそうになったりすると、自分から壁を作って引っ込んでしまうのです。それを見透かしているみくりも平匡にはそれなりの好意を抱いていて、なんとか心の距離を縮めたいとあれこれ思案するのですが、2人は雇い主と従業員という間柄でもあるので、なかなか本音を打ち明けられないんですね。

まどろっこしいですね~本当に。2人ともただでさえプライドが高い人種な上に、雇用契約のせいでさらに感情が抑制されてしまうという・・・。

けれど、共感もすごくできるんですよ。

 

平匡の同僚の風見君という28歳のイケメンが、みくり達の契約結婚の話を聞いてみくりに週2で家事代行を頼むんですが、そこから平匡はみくりを風見君に取られてしまう恐怖と闘うことになるんです。

彼女いない歴=年齢の平匡は、自分は他人から愛されることはないという強い諦念があるんですね。

そんななか、社内で働く風見君を見つめながら心の中でこう呟くんですよ。

…彼のところに行くのかな みくりさん

 

半年とちょっとだったけど意外と楽しかったな

つかの間の恋愛気分もちょっと楽しめた

 

 

…いいなあ

人に愛される人っていいなあ 

凄く切なくないですか?胸がぎゅうっとなります。

みくりは風見君とは全然違うレベルで平匡を慕っているのに、そのことに思い至らないほどに諦めているんですよ。人生のほとんどの時間、誰にも抱きしめられてこなかった平匡の淋しさがここに凝縮されているようで、本当に言い表せない気持ちになりました。

みくりの伯母の土屋百合52歳も、キャリアウーマンでそこそこ美人でモテたのに、なんと処女のまま閉経してしまったという人物なんです。こういう人って現実にどれくらいいるのかちょっと想像がつかないんですが、彼女も1巻でこう言います。

「ただ 未婚よりせめてバツ1のほうがまだ生きやすかったって思うのよね…世間的にも 心情的にも

 

何が原因だとか周りにあれこれ言われたりするし」

「あー」

 

「誰からも一度も選ばれないってつらいじゃない?」 

みくりは自分が就職できなくて「社会に選ばれない」ということと、百合が伴侶に出会えず高齢処女のまま「男に選ばれない」ことを合わせて、みんな誰かに必要とされたいのに、って嘆くのですが、この2つの”選ばれない”って、どっちのほうがよりしんどいのでしょう。もしくは、どっちのほうが自分で改善の余地があるのでしょう。

選ばれないって、すごく辛いけど、自分ではどうにもできないですよね(選ばれる立場だから)。

皆、選ぶ人であると同時に選ばれる側でもあるんですよね。

自分が選んでも、選んだ相手も自分を選ばなければ先にも進めません。

双方が選び合わないといけない。なんて高いハードルだろう、って思います。

 

・・・ま、きっとこの物語のなかのみくり達は、最後にはちゃんと選ばれると思います。魅力的ですから。

特に平匡。実は私はどうも昔からやせ形内気眼鏡に弱い傾向が合って、平匡みたいな男の人がドストライクなのであります・・・。童貞でも全然OK。むしろ草食で消極なの希望です。

あーどこかに平匡みたいな良い男いませんかー私を選んでくれる平匡みたいな人ー。おわり。