れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

文学

人間の嫌なところ、に共感:『妻の超然』

クスッと笑えて、ちょっと切なく、どことなく怖い中編集にであいました。 妻の超然 作者:絲山秋子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/04/12 メディア: Kindle版 絲山秋子さんの作品は半分〜4分の3くらい読んでるかもしれません。 小田原とかつくばとか群…

存在を消すために心を砕く

お正月休みですっかり緩んでリラックスしていたのに、あっという間に仕事に飲み込まれ殺伐とした日常生活がやってきて、相変わらず冴えない人生を送っています。 久しぶりに山田詠美さんの小説を読みました。 姫君 (文春文庫) 作者:山田 詠美 出版社/メーカ…

架空のお葬式と現実の葬式

今月の上旬に、父方の祖父が亡くなりました。 二十数年前に曾祖母が立て続けになくなって以来、本当に久しぶりに葬儀というものに参列しました。 はるか昔に参列したその曾祖母の葬儀は、幼かったこともあって記憶が断片的です。したがって自意識のはっきり…

知を愛し求める:『know』

現在放送中のアニメ『バビロン』がめちゃくちゃ面白くて、原作者の野崎まどさんの著作を漁っています。 『know』はバビロンとはまた違った雰囲気で、やはりこれも示唆に富む良作でした。 know (ハヤカワ文庫JA) 作者: 野崎まど,シライシユウコ 出版社/メーカ…

もう一人の私、もうひとつの人生:『ブルーもしくはブルー』

山本文緒さんの作品は本当にどれも暴力的なまでの面白さだと感服しました。 ブルーもしくはブルー (角川文庫) 作者: 山本文緒 出版社/メーカー: 角川書店 発売日: 1996/05/01 メディア: 文庫 クリック: 12回 この商品を含むブログ (77件) を見る ドッペルゲ…

成長と魅力:『美しい彼』

8月から(また)職場が変わりました。 と言っても今回は転職というよりは異動で、同じ会社ではあるのですが業務内容も勤務地も大きく変わって、人口増の東京まで毎日30分くらい電車に揺られて通勤するようになりました。 ここ数年は家から職場まで徒歩15分と…

『はやく老人になりたいと彼女はいう』

先月から出張で内陸の地方都市に滞在しています。 人口30万人ほどのこの街は電車の本数も商業施設も娯楽施設も少なくて周りは見渡す限り山ばかり、気温がいつまでも低く桜もいっこうに咲きません。 駅のホームに立つと、あまりの静寂に不安な気持ちになるほ…

手紙を通して世の中を知る:『三島由紀夫レター教室』

先日青山の某コーヒースタンドに置いてあった『三島由紀夫レター教室』という文庫が面白くてハマってしまいました。小説を読んでこんなに爆笑したのは本当に久しぶりです。 三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫) 作者: 三島由紀夫 出版社/メーカー: 筑摩書房 …

『ままならないから私とあなた』

連日の猛暑とスポ根な職場での日々で気分は夏休みの部活動って感じの今日この頃です。 夏休みってどうにも小説が読みたくなるんですよね。物心ついたときから毎年読書感想文を書かされていたからでしょうか。 そんなわけで暑い日でも読みやすそうな文体を、…

音楽の力:『リズと青い鳥』

ここまで強く胸を打つ作品をつくり出すなんて・・・今年は京都アニメーション様に泣かされっぱなしです。 現在公開中のアニメ映画『リズと青い鳥』が本当に美しくて切なくて、観てからというもののその世界観にどっぷりハマっています。 『リズと青い鳥』ロ…

旅とスタンス:『from everywhere.』

小学校低学年の頃『ロードス島戦記-英雄騎士伝-』は、ストーリーはほとんど理解できないにも関わらず毎週観ていた稀有なアニメ番組で、成長してからもこのアニメのオープニングテーマとエンディングテーマがずっと心に残っていました。 小学校高学年になった…

人生を生き延びるということ:『憤死』

先週海外旅行で飛行機に乗っていた際、自分の人生の記憶を覚えている限り最初から振り返ってみる、という試みをしたのですが、幼少期の記憶がほとんど曖昧であることに気づきました。 少なくとも小学校に入る前の、3歳〜5歳くらいの記憶だとおもうのですが、…

意志と正しさ:『十二大戦』

観ていたアニメが次々と最終回を迎え、年の瀬を感じます。 クリスマスイブですが、干支の話を・・・もうすぐお正月ですし。 十二大戦 BDBOX [Blu-ray] 発売日: 2018/12/21 メディア: Blu-ray 十二大戦 作者:西尾 維新 発売日: 2015/05/19 メディア: 単行本 …

念のために生きている:『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』

中学生の頃、同じクラスで近所の友人(女子)が西尾維新『クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い』を朝の読書の時間に読んでいました。 表紙が可愛かったので、私も借りて読んでみたのですが、中学時代の私はあまり気が長くなくて、いかんせん本が分厚く…

共感につぐ共感:『私をくいとめて』

小説を読んでいて、「これ、自分のことを描かれている!!」とびっくりすることが稀にあります。そんな作品の一つ、綿矢りさ『私をくいとめて』は、面白おかしくも、それだけでは帰してくれない、ちょっと意地悪な小説でした。 私をくいとめて 作者: 綿矢り…

『手のひらの京』

綿矢りささんの作品の面白さがうなぎのぼりです。 手のひらの京 (新潮文庫) 作者:りさ, 綿矢 発売日: 2019/03/28 メディア: 文庫 京都に暮らす三姉妹とその家族の物語。 三十路を過ぎてにわかに出産のタイムリミットに焦りつつもどうすればいいかわからない…

意識の変容と宇宙の彼方の恋:「消去」

数年ぶりに国会図書館(永田町の方)に行きました。 なんの気なしに蔵書検索すると、あるにはあるが電子版で、それもKindleのような形態ではなく、紙の本を1ページ1ページ写真撮影したものでした。読みづらいったら・・・ そこで広尾の都立図書館へ行き、改…

もう二度と会えない事実:『塩狩峠』

私は祖父母を含む親戚一同皆生きており、身近な家族を亡くしたことがありません。 小中高校、大学の同級生や社会人の同期も、今は誰とも会うことはないけれど、亡くなった知らせを聞いたことはありません。 仕事で出会った様々な人も、病気したりすることは…

自己制御の難しさ:『恋愛中毒』

にわかに小説が読みたくなって、Kindleでパッと購入した小説が山本文緒大先生の『恋愛中毒』でした。 恋愛中毒 (角川文庫) 作者:山本 文緒 発売日: 2002/06/25 メディア: 文庫 私が好きな小説家として真っ先に名前を挙げるのが山本文緒さんです。 小学生で漫…

『五つ星をつけてよ』

先日勤務時間中にこっそり図書館に行き、借りてきた本が面白かったです。 奥田亜希子『五つ星をつけてよ』。 五つ星をつけてよ 作者:亜希子, 奥田 発売日: 2016/10/21 メディア: 単行本 奥田さんの小説は他に2冊読んでおり、ここにも感想を書いたものもあり…

会えない不幸を生きる 『ちょうちんそで』

先週、職場の上司に「おすすめの本何かある?」と訊かれました。 その女性主任は普段はそんなに本を読まないらしいのですが、秋だし、最近涼しくなってきたし、何か読んでみたい気分になっていたのかもしれません。 ジャンルは小説とのことだったので、いく…

包丁で切り裂いた人生の断片『平田俊子詩集』

先日ご紹介したマツモトトモ『インヘルノ』の中に、平田俊子の詩集が出てきました。 さらには引用もされていて、その詩集『ターミナル』は日本全国でも数えるほどの図書館にしか置いていないようでした。 なんだか少し気になって、とりあえず近所の図書館に…

『透明人間は204号室の夢を見る』

久々に面白い小説に出逢いました。 透明人間は204号室の夢を見る 作者:奥田 亜希子 発売日: 2015/05/01 メディア: 単行本 奥田亜希子『透明人間は204号室の夢を見る』。 先日東北のとある有名な書店員さんのいる本屋へ行きまして、そこで見つけた作品です。 …

『4 Unique Girls』

巷で評判が良かったので手に取ってみた山田詠美さんのエッセイが面白かったです。 4 Unique Girls 人生の主役になるための63のルール (幻冬舎文庫) 作者:山田 詠美 発売日: 2018/02/07 メディア: 文庫 女性誌『GINGER』の山田さんの連載を加筆修正してまとめ…

『きのうの神さま』

年末年始に小説を何冊か読んでいたのですが、そのなかでとても心に残った1冊がこちら。 ([に]1-2)きのうの神さま (ポプラ文庫 日本文学) 作者:西川美和 発売日: 2012/08/07 メディア: 文庫 僻地医療を題材にした5つの短編がおさめられています。 私が特にい…

お正月に観たい・読みたい『恋物語 ひたぎエンド』

今年も残すところあと数時間となりました。 年の瀬に、観たいなあと思うアニメがあります。 恋物語 第一巻/ひたぎエンド(上)(完全生産限定版) [Blu-ray] 発売日: 2014/06/25 メディア: Blu-ray 恋物語 第二巻/ひたぎエンド(下)(完全生産限定版) [Blu-ray] 発…

人間の選択の余地について1 『ギヴァー』

この頃、人間が生きていく上でなす「選択」という行為について、考えさせる物語に2つ出会ったので、それらについて書いてみたいと思います。 1つめはアメリカの児童文学で、ロイス・ローリー『ギヴァー 記憶を注ぐもの』です。 ギヴァー 記憶を注ぐ者 作者…

『今池電波聖ゴミマリア』

高校生の頃、私はほぼ毎日「生まれてきたくなかったなぁ」と思っていました。 ものごころついたときからチヤホヤされて、普段の生活で死ぬほど厭なことはありませんでした。 勉強もそこそこ好きだし、クラスメイトも先生もみんな優しくていい人たちで、学校…