また面白い乙女ゲームに出会ってしまいましたよ・・・!
次の日朝から仕事なのに、夜中の3時過ぎまで夢中でプレイしてしまう面白さでした。
キャラクターを1人また1人と攻略するうちに近づいていく事の真相、「現実とは?」と意識を揺るがす独自の世界観、それを盛り立てる音楽と美しいグラフィック、そして絶妙な声優キャスト陣・・・パーフェクトなゲームでした。
これだけ面白い物語に出会えると本当に嬉しくなります。
ストーリーと世界観の概要は以下。
【ストーリー】
近未来、とある都市。
夏休み間近、平穏な日々を送っていた高校二年生の主人公。
主人公が幼馴染と下校していると、突然目の前に現れた謎の人物に
『月が2つ存在する』奇妙な世界へと連れ去られてしまう。
気付いたときには、自分と同じ状況の人間が9人。
何が起こったかわからない彼らの前で、仮面の男は話を始めた。
「この世界は“ドラマ”を演じるだけで、なんでも願いが叶います!」
主人公たちは異世界から現実世界に戻る為ドラマを演じることとなり、
仲間たちと協力してドラマをこなしていく。
しかし、10人の仲間の中に自分たちをこの世界へ連れてきた 『裏切り者』が紛れている事実を突きつけられてしまう主人公たち。
『裏切り者』の目的は、ドラマが行われる本当の理由は……。
疑心と信頼の間で揺れ動きながら、最後にとるのは誰の手か――
【世界観】
舞台は、人々の生活がシステムによってより快適に、
より幸せに活動できるようになった近未来―
厳重なセキュリティに守られた社会では、人々は豊かな生活をおくっている。
情報は全て検閲されている社会だったが、
主人公の周りには『ある都市伝説』が実しやかに囁かれていた。
――異世界配信。
そう呼ばれる違法動画は、誰が何のために流しているのか、
そういった内容は一切わかっていない謎の多い配信動画。
恋愛、サスペンス、ミステリー…… テレビやネット、日常で見ているありふれた内容のドラマを配信しているという。
情報が規制された社会で、何故こんな都市伝説が噂となって伝わっているのか。
それはおそらく、配信動画の噂と一緒に流れてくる話のせいだろう。
『異世界配信に役者<キャスト>として出演すると、代わりになんでも夢が叶う』
誰が、何の目的で配信し、『どこ』で撮影されているかはわかっていない。
しかし、その撮影場所に行くことができれば、ドラマに出演することができれば 代わりに何でも願いが叶うという。
夢のような噂話は都市伝説となって広がってゆく。
豊かな生活を送っているが、厳しい情報規制をされている『彼ら』にとって、 そこはまるで『異世界<アルカディア>』だった。
(公式サイトより)
物語の最初に主人公・ヒヨリの家で飼っていたペットの犬型ロボット・パルトが機械の寿命と廃盤で部品がなく永眠するという出来事があります。
ペットもロボットになるとこういう風になるのかぁと妙に感心しました。
人々は皆”バングル”と呼ばれる端末を身につけていて、連絡を取る手段も動画や画像や書籍データを見るのも生体情報を把握するのも全てバングルでの操作です。
現代のスマートフォンがもっと身体とつながりあって、さらにそれを情報局という国の中枢機関が全て集約し管理している世界が舞台である2100年以降の日本なんですが、こういう未来って実際もっと早く訪れそうだなと思いました。
さらに主人公たちが攫われた”月が2つある世界”というのはある種の電脳世界で、肉体は現実の世界で眠っていて、意識情報だけが月面基地と呼ばれる異世界に転送されている状態です。いわば「夢を見ている」状態だそうです。
元いた世界から見れば異世界はヴァーチャル・リアリティということになるのですが、主人公たちはそこで五感を全て感じることができます。お腹も減るし、食べ物の味もわかるし、痛みも疲労も感じる。少なくともそこが夢だとはずっと認識できなかったくらい現実だと思い込める世界だったわけです。
いくつかのルートで、エンディングに主人公たちは元いた”現実”の世界に帰って行くわけですが、果たしてそこは本当に現実なのか?異世界と元いた世界と、根本的な違いは論理的に説明できないのです。自分にとって都合のいい場所を「現実」と呼んでいるだけにすぎない。
すごくワクワクする未来だなぁと思いました。もしこの先食糧問題や環境問題など、人類が物理的に地球で生活できなくなってきたら、私たちはネットワーク上に世界を構築して、情報空間の中で生きるようになるのではないでしょうか。
そうしたら、肉体に縛られなくて良くなるんですね。容姿も性別も記憶も”情報”だから書き換えられる。意識だけが存在している・・・まさに夢みたい・・・なんて夢想してしまいます。
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『CharadeManiacs』は世界観も大変優れていますが、乙女ゲームとして萌えもきちんと兼ね備えている作品です。
以下攻略した順にキャラクター感想。
【双巳リョウイチ】
第一印象から胡散臭い年上のお兄さん。正体は異世界のスポンサーと呼ばれる狂信者でした。頼れるアニキ系だけれど、底知れない怪しさと怖さが滲み出るいいキャラでした。
【獲端ケイト】
オカン系男子。料理がとても上手なツンデレで、主人公のヒヨリと喋ってるといつもツンケンして喧嘩っぽくなってしまうところが可愛かったです。根は優しい。
【射落ミズキ】
ゲームの真相までたどり着いてもなお男か女かわからないイケメン情報局員。とにかくかっこよかったです。声も最高。ずっと聞いていたくなる声です。グイグイくるずるい大人って感じが素敵です。
【茅ヶ裂マモル】
人間と異世界人のハーフという特殊な大学生。最初はなよなよすぎて頼りない感じでしたけど、意外と最後は萌えました。
【明瀬キョウヤ】
射落さんの部下的なお兄ちゃん。いい人だけど意外と存在感薄いかも・・・。
【萬城トモセ】
主人公ヒヨリの幼馴染の年下男子。とにかくヒヨリが大好きなのが伝わってきました。ずば抜けた演技力と表現力で、最後シャレードゲームに勝利するところはカッコよかったと思います。
【凝部ソウタ】
引きこもりゲーマーで主人公の同級生。チャラチャラしてるけど切れ者で負けず嫌いなところと、みんなとの会話での飄々とした返しがとても面白い人でした。周囲をイライラさせることを自分で類い稀なる才能と言い切るポジティブさが最高でした。
【陀宰メイ】
前回の異世界配信に巻き込まれたせいで大切なものを色々奪われた不憫なヒヨリの同級生。陀宰君ルートで無事彼が報われた時は心底よかったよかったと感動しました。しかしほぼ物語全体の真相に近づき、途中からその先のラスボス的な廃寺の方が気になって仕方なかったです。
【廃寺タクミ】
物語全体の真相でありラスボスであり異世界配信の創設者の人工知能くん。
30年前に進行していた2つの月を使って世界をよりよくしようとしていた「モルペウス計画」の実行メンバーであった研究者・ヒヨリの祖母によって生みだされたAIである廃寺は、事故で生みの親であるヒヨリの祖母をはじめ周囲の人間を全て失い、孤独の中で異世界配信をつくり出し現実世界の人々を巻き込んでいたのでした。
世界が電脳空間なら、AIだろうがプログラムだろうが人格があればもう人間ですね。廃寺くんを見てそう思いました。AIも恋するんですね。とても萌えました。廃寺くん見た目もタイプだし。
登場人物が皆高校生以上の中で、最初廃寺くんだけが12歳の小学生で、漢字も読めないし全然ものを知らないしいつもぼーっとしてるんですけど、見た目はどう見ても12歳じゃないので完全に怪しまれてました。
ストーリーの終盤で廃寺くんと凝部の掛け合いがあり、そこで初めて見せる廃寺くんの悪い顔がとてもツボでした。悪い廃寺くんいいな〜好きだな〜。
彼のルートだけBADエンドが複数あるんですが、ヒヨリを異世界に閉じ込めちゃうエンドがヤンデレっぽくてとても好きです。
真相エンドではヒヨリに現実世界に持ち帰られてパルトの中に入ってしまいます。攻略対象が犬型ロボットのペットになるエンドとは・・・大変斬新な乙女ゲームですね。革命的です。でも可愛いからアリです。
結局トロフィーをコンプリートする頃には廃寺くんで頭がいっぱいになってしまいました。さすが真相くん。でも射落さんもかなり好きです。
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あ〜本当に面白かったです!システムも快適だったし、全体的なデザインもとても好みでした。輪るピングドラムみたいなパステルカラーの近未来的な雰囲気で、音楽もポップテクノっぽい感じで、とにかく世界館の作り込みが素晴らしいです。
それでいてきちんと哲学的なSF要素が取り込まれていて、思考実験の材料としてもとても優れていると感じます。
このゲームみたいな世界が早く現実になればいいと思いました。脳だけで過ごせる世界。バングルで意識がネットワークと繋がれる世界。自分の存在・自意識がデータとなって改変可能になる世界。ああ〜夢のよう。
また、それぞれの事情で集まった10人の中に紛れる裏切り者を探し当てるという人狼的要素もとても面白かったです。謎解きってこんなに面白いんですね。推理ゲームの真髄を見せつけられた気がしました。
萌えとエンタメと哲学が織り混ざった傑作ゲームでした。おわり。