れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

ただじゃ起き上がらない:『来世は他人がいい』

小西明日翔先生に完全にどハマりしてます。なんて面白い作品を描くんでしょう。素晴らしすぎます。

来世は他人がいい コミック 1-2巻セット

来世は他人がいい コミック 1-2巻セット

 

主人公の染井吉乃と深山霧島は高校生ってことなんですけど、こんな高校生居たら怖すぎです。笑

でもそれが面白い。

 

概要は以下。

極道の家で生まれ育った女子高生、染井吉乃。 家庭環境は特殊でも、おとなしく平穏に日々を過ごしてきた。婚約者の深山霧島と出会うまでは——! 前作『春の呪い』で「このマンガがすごい!2017」(オンナ編)2位にランクインした小西明日翔が「アフタヌーン」に初登場。 はみ出し者たちが織りなす、スリルと笑いが融合した極道エンタメがここに誕生!

アフタヌーン公式サイトより)

 

この作品はストーリーもさることながらキャラクターの魅力が際立って良いですね。

特に吉乃は同性から見て超かっこいい女です。

と言ってもそのかっこよさは美人だとかクールだとか表面的なことだけではなくて、精神的にとにかくタフなんです。自分で決めたこと・自分の信念・メンツのためなら命を張るくらい強い矜持を持っていて、でも全く不遜ではなくて、むしろかなり自分を卑下している節があるんです。ヤクザの家系で育ったというのもあるでしょうが、自分のことを「ろくな死に方しない」と思っています。

でもそこで自暴自棄には絶対にならなくて、泥臭くてもひたむきに”自分に恥じない自分”であろうとする姿勢を持っている。とても芯のある屈強なメンタルを持つ女性です。そして非常に負けず嫌いです。

 

私が吉乃を心から尊敬するに至るエピソードの中に、2巻冒頭の、他所の組のいざこざに巻き込まれてクラブでチンピラに顔を強打されてうずくまる吉乃がつくづく「霧島といるとろくなことない」と絶望しつつ、大暴れする霧島の人並外れた強さに恐怖し、そこから自分の弱さを省みて自分で自分を叱咤して流血しながらも立ち上がり、自分を殴ったチンピラを殴り返してどやすシーンがあります。ここの吉乃が最高にシビれました。

クソッ・・・

この男と一緒におっていいことなんか一つもない

やっぱり東京に来たのが間違いやったんか?

殴られて腹立つのに・・・

それ以上に怖い

なんであんな全力で人のこと殴れるんや・・・

なんであの男あんなに強いねん・・・

・・・違う

わたしが弱いだけや

こんなとこで逃げてたまるかボケ・・・!!

 

小西明日翔『来世は他人がいい(2)』講談社 2018.7.1) 

 

吉乃は1巻の冒頭でも学校の同級生から程度の低いイジメにあったり霧島の本性に振り回されたりしますが、祖父からの「何があっても1年耐えろ」という励ましから自分の思考のスイッチを完全に切り替え戦闘モードに入るんです。この「絶対勝つ」という気概に燃える吉乃の気迫が最高にかっこいいんですよ。

そして自分の勝利のためなら腎臓すら売り渡す行動力も凄い。思い切りの良さが極道レベルで、18歳にしてすでにあねさんって感じです。

 

個人的に最近、新しい職場で悔しいことやままならないことが多々ありへこたれそうになっているのですが、そのたびに脳裏に舌打ちして鬼の形相でつかつか歩き出す吉乃を浮かべ「このままじゃ終わらせられへん」って踏ん張ってます。

どんなにどん底に落ちてもそこからただでは起き上がらない。這い上がるか、敵もろとも引き摺り下ろすかしてくれるわ・・・そんな仄暗い情熱を静かに滾らせるのです。

とことん泥臭い、爽やかさのかけらもない吉乃の強さが私は好きで憧れます。

 

そしてもう一人とにかくツボなキャラクターが、吉乃の兄弟分のような青年・鳥葦翔真です。

彼は吉乃の祖父に拾われて事実上の養子のようになった青年で、吉乃と兄弟のように育ってきました。今は京都の大学生ですが、腕には立派な刺青があります。

まず見た目が完全にタイプだし、何より彼からは大好きなにおいがするのですよ・・・そう、不憫萌えのにおいが・・・!!

翔真はあからさまに吉乃が大好きなんです。吉乃も翔真は家族として大事に思っているけれど、恋愛対象ではない。純粋に兄弟のような家族愛だけなんですよね。

翔真もそれはわかっていて、それでも静かに吉乃を想っているのです・・・なんて不憫で可愛いのでしょうか・・・好きです・・・。

それでいて霧島に敵意むき出しなところもいい。あ〜この三角関係を見るたびニヤニヤしてしまいます。大好物すぎて。

 

そんなわけで、笑いと萌えと学びにあふれた良作でございます。

続きが気になって楽しくて仕方がない作品がまた増えて嬉しい限りです。おわり。