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ひまをつぶしましょう

嫉妬と独占欲と三国志:『十三支演義 偃月三国伝1・2』

中学3年生の頃好きだった男の子は読書が好きなバスケ部のキャプテンで、彼が三国志を読んでいるのは気づいていましたが、「じゃあ私も読もう」とは思えませんでした。それくらい歴史(日本史も世界史も)が苦手だったのです。

でも!乙女ゲームに落とし込んだものなら興味が湧くというものです!

シナリオの良質さが評判で前々から気になっていた『十三支演義 偃月三国伝』。

PS Vita版は大ボリュームで遊びごたえも満点、イラストも音楽も全てがハイレベルの良作乙女ゲームでした。

 

タイトルの"十三支"は"じゅうざ"と読み、干支の13番目、つまり猫を指します。高屋奈月フルーツバスケット』を思い出しますね。

物語世界は三国志をモチーフにしており、全体の大まかな流れは史実を崩していませんが、この"十三支"もとい"猫族(まおぞく)"という概念を織り込むことで、より深みを出したストーリー展開となっています。

 

あらすじは以下。

時は後漢末。

乱世の奸雄曹操により、隠れ里から連れ出された『猫族』(まおぞく)。 人間の体に獣の耳を持つ彼らは、猫の姿の妖怪『金眼』(きんめ)の 子孫と言われ人間たちから忌み嫌われていた。 人間たちは猫が十二支から外れたという昔話から 十三番目の干支、『十三支』(じゅうざ)と呼び彼らを蔑んだ。

十三支演義

猫族である関羽劉備張飛の三人は幼い頃から兄弟のように育ち、 固い絆で結ばれていたが、平穏な日々は突然終わりを告げる。 漢帝国より勅命を受けた討伐軍の曹操は、 逃げた黄巾族を追って猫族の隠れ里に迷い込んだのだった。 猫族の高い能力に目をつけた曹操の策略により、平和に暮らしていた 猫族たちは人間たちの戦いに巻き込まれていく。

十三支演義2

猫族の長・劉備は、人間たちの戦いに巻き込まれたことで、 身に宿る金眼の呪いを増幅させてしまう。 邪へと堕ちた劉備だったが、関羽をはじめとする猫族の絆の力により 純粋であった子供の劉備を取り戻し、官渡の戦いは幕を閉じる。 それから半年。曹操の計らいにより、人間と共に暮らしていた猫族。 しかし、曹操不在を機に人間たちの不信感が暴力となって猫族を襲う。 再び村を追われる身となった関羽たちは安寧の地を目指す。 

公式サイトより)

主人公は猫族の少女でありながら天性の武を持つ女武将・関羽ちゃん。

猫耳の可愛い可憐な少女ですが、戦場ではずば抜けて強く、さらにお人好しとも言えるほど心優しい主人公です。三国志にお詳しい方からすると関羽が女性ということに驚かれるかもしれませんが、さらに驚くことに呂布も女性です。

関羽は母親が猫族、父親が人間という混血で、そのため他の猫族と違って瞳の色が黒いです。このことが物語に大きく影響します。

 

攻略順にキャラクターの感想を書きます。

 

曹操

各所から桁違いのヤンデレだと聞いていたのですが、本当にクレイジーで、かつ愛すべきキャラクターでした。

武にも才にも野心にも秀でた乱世の奸雄ですが、実は母親が猫族で父親がろくでなしの人間の混血児でした。

本来猫族と人間の間には子供は生まれないと言われており、母からも父からも愛されず育った孤独な曹操少年は猫族も人間も心の底では信用していません。

世界に一人しかいない混血の自分こそ真に秀でた存在であり、それをこれまで自分や母を虐げてきた父親に見せつけるという一種の復讐心のために大陸制覇を目論んでいます。そのために自ら猫耳を切り落としまでした男、それが曹操です。

そんな曹操が見つけたもう一人の混血・関羽ちゃん。敵兵ながらその武は認めていたものの、まさか自分と同じ、この世で2人だけの混血。曹操は目の色を変え、関羽ちゃんを自分のものにしようとします。

この曹操の執着っぷりが凄まじくて笑えます。でも、最初は混血というその血にのみ執着しているようで萌えはしないのですが、関羽ちゃんと触れ合うことで彼女の心に引かれ、最終的には混血であるなしにかかわらず関羽ちゃんが愛しいという流れになります。

関羽ちゃんが関わるとそのクレイジーさを発揮する危ない奴ですが、戦に関しては手を抜かず策を張り巡らし部下も思いやるなかなかいい武将だとおもいます。

曹操の台詞で特に好きなのは、猫族の戦闘能力に惹かれ自軍に取り込もうとした際反対した夏侯惇に放った一言。

「使えるものはなんでも使う。

それが十三支だろうが女だろうがな。

私の軍では結果が全てだ」

 

張遼

呂布の臣下で、口調や身振りがどこか人間とずれている人です。

その正体は仙女である呂布が作り出した土人形でした。

土人形なだけあって、ハッピーエンドもバッドエンドも人知を超えた展開で、私は今ひとつ萌えませんでした。でも料理も掃除洗濯も裁縫もなんでもできるというのはいいですね。家に一人欲しいタイプです。

張遼の台詞で好きなのがこちら。

「人はいずれ死ぬ。それが多少早まろうと、関係ないのでは?」

 

趙雲

まず、見た目が一番タイプです。強くて気さくで自然に相手のことを褒める"天然人たらし"な彼が、関羽ちゃんを好きになってからは嫉妬心や独占心をうまく抑えきれずやきもきする様子がもう、萌そのものです。趙雲ルートは1も2もなかなか辛いストーリー展開がありました。1では趙雲の主君・公孫瓚様がまさかの関羽ちゃんの父親であることが発覚し、公孫瓚様の死に際のシーンでは泣きました。

2では長坂で子供が殺されるシーンが辛かったです。そのあと子供たちを救えなかったショックで関羽ちゃんが病んでしまうのもすごく悲しくて、それを必死に支える趙雲の男ぶりに惚れない人はいないでしょう。

文句なしのナンバーワン・ガイです。

 

張飛

関羽ちゃん好き好き年下ワンコタイプです。猫族ですが年下ワンコ。

健気でちょっと不憫で可愛い弟分という感じ。張飛をからかう同じ猫族の仲間・張蘇双と関定という少年たちも面白いです。

 

夏侯惇

曹操の臣下。

最初は見た目がなんとなく小物っぽくて、攻略対象だと思ってませんでした。

ところが!この夏侯惇が実は超絶可愛いツンデレ君でした。かなり萌えました。

猫族もキライ、女もキライで関羽ちゃんにキツく当たっていた彼が、不本意ながらも戦場で関羽ちゃんと組むうちにほだされる様子はたまりません。

また、左目を失い眼帯をすると、一気に男前なルックスになります。これには驚きました。眼帯マジック。

夏侯惇ルートだと急に曹操が理解のある父親みたいになるのも笑えます。

 

劉備

猫族の長で銀髪の少年。

あまりに幼い見た目と喋り方でパッと見そういう対象ではないように見えますが、そこはCV.石田彰、絶対後から大きくなってかっこ良くなると確信しながらプレイしていました。

そしてやっぱり!呪いの力を解放して年相応の見た目に変身した劉備は色男でした。関羽ちゃんに迫る小悪魔で妖艶な感じの劉備は最高でした。ありがとうございます。

劉備関羽ちゃんに対する独占欲は曹操をも凌ぐレベルだと思います。

 

諸葛亮

十三支演義2の方で出てきます。変な団扇を持っている天才軍師。

諸葛亮もなかなかのツンデレですが、呉と同盟を組むときの大演説はとてもかっこよかったです。頭が良くて弁が立つ男性って素敵ですね。

劉備のお人好しの前に自分の意見が通らなかったときに関羽ちゃんを睨んで八つ当たりするところが可愛かったです。

ラブラブになってからは、趙雲と同じく関羽ちゃんに跡をつけたがるめんどくさいタイプというところも萌えポイントですね。

 

周瑜

呉の君主・孫権の臣下で荊州でたった一人の猫族の青年。

ダメな大人の雰囲気が漂う優男ですが、好きな女のためならなんだってする感じの気概はひしひしと感じました。

 

改めて振り返ると、どのキャラクターも嫉妬心や独占欲が強い男ばかりで、戦場で活躍する男性というのはそういうものなのかなぁと思いました。

昔営業でも「仕事のできる男は性欲が強い」とか言ってた同僚がいました。ホントかどうか定かではありませんが。

逆に、欲が強いから戦や争いを起こす・もしくは好むのかもしれません。

周瑜も「昔から男が戦を起こす理由なんて 国か、女なんだ」と言っていました。

 

このゲームをプレイした後だと、Wikipedia三国志の武将の解説もそこそこ興味深く読むことができます。

三国志の本当に大まかなざっくりした流れもつかめます。

歴史もいわば人間ドラマなので、こういう風にメロドラマ調にして楽しいアドベンチャーゲームにしてもらえれば楽しく学ぶことができるんですね。

改めて歴史の一つをこうした素晴らしい乙女ゲームに昇華させた制作陣に心から感謝と敬意を表します。ああ楽しかった。おわり。