れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

意志と正しさ:『十二大戦』

観ていたアニメが次々と最終回を迎え、年の瀬を感じます。

クリスマスイブですが、干支の話を・・・もうすぐお正月ですし。

十二大戦 (JUMP j BOOKS)

十二大戦 (JUMP j BOOKS)

 

十二大戦』、アニメがこの秋から冬にかけて放送されており、楽しく視聴しておりました。

原作は西尾維新先生ということで、物語シリーズ戯言シリーズなどでおなじみの天才、この作品も例に漏れず大変面白かったです。

アニメ終盤で「これは・・・!」と思わず記録したくなるようなシーンがあったので、原作も読むことにしました。原作もとてもいいです。西尾先生の作品の中でも非常に読み易いタイプでした。

 

物語は、12年に一度開催される世界的な代理戦争の話です。

干支を冠した十二家のそれぞれの代表が命をかけて戦う裏では、国家間の領土が賭けられているというもので、戦っている戦士たちはそのことを知りません。

戦士たちはそれぞれの事情、それぞれの思いを携えて戦地に集結します。

優勝した最後の1名に与えられる賞品は「どんな願いでもたったひとつだけ、叶えることができる」権利。

 

亥から割とあっさり死んでいき、最初はびっくりしました。

そのあとも、戌、酉、申、未に午と、それぞれの過去の描写を挟みながらもそれぞれが命を落としていきます。

そして最後まで残ったのは卯、寅、丑、子・・・。

 

私が心を打たれたのは寅の過去編です。

寅の戦士ーーー姶良(あいら)香奈江(かなえ)。彼女は元々武門の家系の娘で、真面目で純粋な女の子でした。

様々な格闘技の造詣が深く、正義感の強かった彼女は戦地でも大活躍していましたが、正義のために戦っているはずが、自分が赴くことで戦争を活性化させている矛盾にうまく向き合えずに、いつしか彼女は酒に溺れ、道を外れることになります。

さらに悪いことに、彼女は酔えば酔うほど強くなる酔拳の使い手となりました。

自暴自棄になり酒に溺れる少女の姿は、人間の簡単に転落する様子を巧みに描いていると思いました。

真面目で健全だった少女は、不真面目で不健全な大人になったーーーあるいは単に、『大人になった』。それを成長と呼ぶことも、ひょっとしたら可能なのだろう。こんなのはただの、ありふれたくだらねー挫折だと、自分でも思った。 

そんな酒に溺れた自堕落なある日、とある戦地でとある戦士に出会います。

破れかぶれの適当な戦いでへたっていた彼女の前に現れたのは、”皆殺しの天才”と称される丑の戦士・失井(うしい)でした。

寅を酒を無理やり飲まされた一般人の少女と勘違いした丑は、正しさと潔さと美しさを兼ね備えた完璧な剣筋で寅を助け出しました。

寅はかつて、まだ健全だった少女の時の憧れを具現化したような丑の戦士の振る舞いに胸を打たれました。そして彼女は丑に、「どうすればそんな正しいことができるのか。迷わず、不安を感じず、間違わずにーー正しいことができるのか」を、たどたどしくも訊いてみました。

この時の丑の回答をアニメで観た時、寅と同じく私も胸を打たれました。打ちひしがれました。

「まず、正しいことをしようとするだろう?」言って、鞘にしまったサーベルに手をかけた。「次に、正しいことをする」鞘から刃を、居合のように抜いた。「以上だ」①正しいことをしようとする。②する。

(中略)

「わかったかね?つまり、正しいことというのは、しようと思わなければ、できないということなのだがね」(中略)「人は、なんとなく、間違う。流れにそって、悪へと堕ちる。理由もなく、思想もなく、思い切りもなく、気付いたときには、当たり前のように、『道』を誤るものだ。しかしね、それに相反して、『気付かないうちに正しいことをしていた』とか、『いつのまにか善行を働いていた』とか、『うっかりいいことをしていた』とか、そういうことはないーー絶対にない。意志がなくては正しさはない。正しい行動には、正しい意志が不可欠なのだ。正しいことは、しようと思わなければ、できないーーもしもきみが正しいことができなくて苦しんでいるのだとすれば、それはきみが、正しいことをしようと思っていないからだ」

この、バケツの中の冷水を顔面にぶっかけられたような容赦のない正論は、しかしこれ以上ないくらい目覚ましに効果的でした。酔いもさめるほどの天才の理論です。

さらに追い討ちをかけるように丑は畳み掛けます。

「正しいことを、しなくていい理由はいくらでもある。迷う材料は山ほどあるし、不安材料も、売るほどある。人のせいにするのもいいし、社会のせいにするのもいいだろうーー時代のせいにだって、運のせいにだってできる。だが、正しいことをしていない人間は、できないのではなく、やらないだけだということを、自認すべきだがね。きみもまったく、無理に正しいことをしなくてもいいが、それは、できないわけではなく、やらないことを選んだのだということを、ゆめゆめ忘れぬことだ。正しき者はみな、①すると決めて、②する。きちんと段階を踏むことだーー①の段階にいながらにして、②を悩むのは、愚の骨頂だがね」 

寅は丑の持論にいたく感銘を受け、この日から寅の心の中には目標にしたい師匠ができました。そうしてその師匠ーー丑にもう一度会いたくて、此度の十二大戦に参戦したのでした。

 

この大戦での丑と寅のくだりは非常にドラマチックでした。二人で力を合わせて卯の戦士を倒したのに、そのあと卯の戦士のウォーキングデッドに攻撃されて、丑をかばった寅は深い傷を負ってしまいます。そのあとの、初めて取り乱す丑がまたいいんですよねぇ。アニメの丑のキャラクターボイス梅原裕一郎さんで、これまた最高なんですよ。今年はいいなと思うアニメキャラのCV.梅原裕一郎率が大変高かったです。

寅が死んで、丑も申のウォーキングデッドに死の淵に追いやられるのですが、そこで丑も昔寅に話した上記の記憶を思い出すんですね。寅とは気づいていないのですが、丑にとっても、昔少女に説いた正しさの自説は心に残る出来事だったのです。

そして「ずいぶんと偉そうなことを言ったものである」と振り返る・・・ああ、素敵です。丑と寅の、恋愛とも友情とも違う、恩人というような、運命というような、不思議な縁と互いを思い合いつつも、微妙にすれ違う関係。実にドラマチックで切なくて素晴らしいです。

 

まあ、最後はまとめて子の戦士が爆発させて子が優勝したんですが、そのあとの話もなかなか面白かったです。それはまた別の話で、そちらもいつか記録しておきたいですが。。

 

丑の正しさに関する持論は、正しさ以外にも適用できると思いました。

本当、間違うのは簡単です。堕落するのも道を外れるのも、いとも容易くできてしまう。

正しいことも、いいことも、自分のやりたいことも、成し遂げるには意志の力が必要不可欠なのですね。

大学で健康心理学の講義を受けていた時に、先生が「ネガティブは感情、ポジティブは意志」とよく言っていたのを思い出しました。

私がついつい後ろ向きな思考に走ってしまうのは、ひとえに意志が薄弱なためなのでしょう。

「①すると決めて、②する。」ーーー来年の座右の銘にしようかな。なんて・・・

 

ちなみに、原作を読んで知ったのですが、丑の戦士と同じ誕生日でした。ちょっと嬉しい。丑の本名は樫井栄児さんというそうです。身長は181センチもあるんですって。かっこいい〜。そんでもってCV.梅原裕一郎なんて、最高〜。おわり。