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ひまをつぶしましょう

愛の「おとぎ話」の贈り物:『大正×対称アリス HEADS & TAILS』

今年は乙女ゲームを何作品もプレイした年でした。

PS Vitaを購入して1番最初にプレイした『大正×対称アリス』の感想も書きましたが、今月発売されたそのファンディスク(続編)がこれまた大変素晴らしく、この感動をどうしても書き留めたいと思いました。 

大正×対称アリス HEADS & TAILS - PSVita

大正×対称アリス HEADS & TAILS - PSVita

 

大正×対称アリス』は、主人公の有栖百合花17歳が、幼い頃に出会った初恋の相手・アリステアの精神疾患を独自の方法で治療し、オーバードーズして昏睡状態だったところから救い出す様子を大変ドラマティックに描いた傑作でした。

そしてそのファンディスクとなる今作『大正×対称アリス HEADS & TAILS』は、前作でサブキャラクターであった主人公の兄・有栖諒士と主人公の友人・大神ゆうき君を主軸に置いた別サイドの物語と、前作のその後を描いたアフターストーリー、そしてパラレルワールドの”学園アリス”編が楽しめます。

メインの有栖諒士編と大神ゆうき編は、まさに物語の”舞台裏”であり”真相”と呼ぶにふさわしい内容でした。

 

今作をプレイして、あらためて百合花のただならぬアリステアへの愛情を目の当たりにした感じです。

壮絶で過酷な運命をたどり、その過程で重度の多重人格となってしまったアリステアと、そんなアリステアをどうしても助けたくてもがく百合花や彼らを放っておけない諒士と大神が、皆不器用ながらも愛おしく、ゲームをプレイする中で繰り返し「愛とは何か」と考え込んでしまいました。

この作品の登場人物は、大神くん以外は総じて親や家族からの愛を感じずに育ちました。

アリステアもとい彼のいろんな人格は、母の過保護な愛情が若干あったかもしれませんが、愛とは程遠い環境で育った人ばかり。父に捨てられたシンデレラ、学校に行かせてもらえず閉じ込められていた赤ずきん、母親の腐乱死体と暮らしていた白雪、心ない親類の間をたらい回しにされたかぐや、などなど・・・。

主人公の百合花やその兄の諒士も、金銭的な援助は惜しみなく注がれていますが、ふれあいはほとんどなく放置同然の扱いで育った人々です。

そんな彼らが、出会って少しずつ一緒に過ごす中で、互いを想い合う気持ちが生まれるんですね。

 

愛って教育で授けられるものではないんですね。

誰に教わらなくても、誰かを愛することができる。

逆に、親や家族に愛されて育っていても、他人を誰一人愛することができない私のような人間もいるわけで、その非対称性にまた「なんだかなぁ」と思う気持ちもありますが・・・。

現実生活で関わる人間は誰も好きになることができない私ですが、ゲームの中のキャラクターたちは皆本当に愛しく感じます。赤ずきん可愛い。グレーテル大好き。

 

ゲームを一通りプレイした後、あらためてオープニングムービーを観て、しみじみ「素敵な作品だなぁ」と感動しました。

『大正×対称アリス』は、百合花が決死の思いで紡ぎだした”愛のおとぎ話”の記録なんですね。


PS Vita用ソフト「大正×対称アリス HEADS & TAILS」オープニングムービー

また、今作に触発されて図書館でルイスキャロルの『鏡の国のアリス』も読んでみました。読んだことなかったんですが、読んでもよくわからなかったです(残念)。

でも、確かに冒頭文はよかったです。

 

さらに、あらためて実感しましたが、とにかくこの作品は絵と音楽も素晴らしいです!

特に感動したのが、アフターストーリーの白雪編で流れた白雪のキャラクターソング「White kiss」。こんな素晴らしい曲があったなんて、今までノーマークでした。


『大正×対称アリス キャラクターソングシリーズ vol.5 白雪(cv:蒼井翔太)』

アフターストーリーではこの曲のpiano versionが流れます。これがまた素晴らしい。ぜひフルで聴きたいです。

love solfege様は本当に素敵なBGMを奏でますね。物語にぴったりな、他の音は考えられないくらい「これしかない!」という音楽です。

 

大正×対称アリス』、そして『大正×対称アリス HEADS & TAILS』は、乙女ゲーマーにかかわらず、すべての物語中毒の皆様にプレイしてほしい傑作です。

人間はここまで胸を打つ感動的な物語を紡ぎ出すことができるのか、ここまで美しい作品を生み出すことができるのか、と畏怖の念を抱かざるをえません。

この作品に出会えたことが、今年一番の幸運と言っても過言ではないくらい、本当に本当に大好きな作品です。おわり。