将来に対しての葛藤を描くボーイズラブ作品を読むたび
私も男性に生まれて、男性の恋人を持ちたかったなぁと考えてしまいます。
手持ち無沙汰でなんとなく購入した『Life 線上の僕ら』。
漫画ならではのご都合展開でありつつも、やっぱりほろりと泣いてしまう、ハートフルラブストーリーでした。
裏表紙にあるあらすじは以下。
下校途中の一人遊び「白線ゲーム」で偶然出会った
生真面目な伊東と無邪気な西。
恋に落ち、「白線の上だけの逢瀬」に
もどかしさを覚えた伊東は咄嗟に西へキスをしてしまって・・・・・・
高校生から大学生、そして大人へ−−
変わらない想いと、変わりゆく現実の狭間で
愛に翻弄された二人の男の人生を描いた感動の話題作。
最初は「男子高校生が白線ゲーム毎日するか?」とちょっと微妙な気持ちだったのですが、
想いが通じあい身体も結ばれた大学生時代、そして同棲を始めた社会人生活に至る頃には物語にすっと気持ちが入っていきました。
この物語は、時系列ごとに彼らの年齢が記されています。
大きなひずみが生まれるのが28歳、一般的なサラリーマンである伊東は取引先の女性から告白されたり、会社の同僚などから結婚について唆されたりします。
脚本家となった西も、親から「孫の顔が見たい」などと似たような圧を受けるようになっていました。
もともと無駄に考えすぎる質である伊東は、ついに未来への不安に耐え切れず、西に別れを切り出してしまいます。
これを受けた西の独白が私には沁みました。
くだらない
くだらない男
普通 普通
十分普通だろ ありふれたサラリーマンが
不毛?俺といる事が?
自分の弱さを誤魔化す為に未来の俺の気持ちまで決めつけるな
何か産み出さなきゃ悪いのか?
女孕ませて家でも建てりゃ満足か?
反吐が出る
あんなに
あんなに俺を愛したくせに
全然目新しい視点じゃないんです。BLではよくある、未来が怖くなって相手の気持ちも決めつけて突き放してダメになる展開、ただそれだけなのに、
彼らの葛藤や苦しみがとても胸に迫ってくるのです。
自分の気持ちが世の中の常識に受け入れられない理不尽さに立ち尽くし、それでも最後はどうしても愛する人と一緒にいたいともがく。
そういう登場人物たちがどうしようもなく愛おしくて、似たような展開でも、結末が読めていても、どうしても読むのをやめられない、そんなボーイズラブなのです。
そして、あらかじめ子供を産むことのない彼らへの羨望もあります。
彼らが子供を産めないことと、女性が子供を産まないと決意すること(もしくは何らかの理由で不妊であること)は根本的に違います。
ガールズラブだって通常の妊娠・出産はありませんが、彼女たちは(私たちは)”妊みうる体をもつもの”なのです。
ホルモン剤の投与や手術などで妊娠することのない体を得ることは可能ですが、場合によってはその後に大きな不調をきたすこともあります。
女性であることで、ただそれだけで、伊東や西たちとは比べものにならないレベルで出産への社会的圧力が存在するのです。
私はそれがすごく嫌で(理由はそれだけではありませんが)どうしても自分の性を肯定的に捉えられなくて、男性に生まれたかったな、と思ってしまいます。
性自認をいくら省みてもやはり女性なので、どうしようもないんですが。。
種の保存やジェンダーや、そういう面倒な山積みの問題を乗り越えて、心のそこから愛する相手と人生を歩んでいく物語の終盤は心が温まります。
私もこういう人生を歩んでみたかったな、としみじみ思うのでした。おわり。