れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

物語と自分の在り方:『親愛なるA嬢へのミステリー』

なんとなく表紙につられて読んでみた漫画に、思考を引きずられています。

本好きで、気がつけばいつも物語の世界に浸っている少女・綾乃と、わけあって断筆中の小説家探偵・能見啓千(たかゆき)。

遠い親戚の二人ですが、ひょんなことから綾乃が啓千の身の回りの世話をすることになり、やがて二人に次々と数奇な事件が降りかかる・・・というあらすじです。

正直最初は、少し話に厚みが足らないような気もしました。でも絵が緒川千世さんに似ていて好みだし、啓千も綾乃も魅力的なキャラクターだったので読み進めました。

 

すると、いつも創作世界に浸って誰かの物語を生きていた文学少女の綾乃が、啓千の存在と次々に遭う事件を通して”自分の人生もまた一つの物語である”事実に思い至ったのです。

 

綾乃とは少しタイプが違いますが、私も小さな頃から漫画・アニメ・小説・テレビドラマや映画など、あらゆる物語に触れ続けて生きのびてきましたが、

常に他人の物語を生きている感覚があります。

”自分もある種の物語世界に生きている”という事実に真剣に向かい始めたのは高2くらいからでした。

しかし結局、自分の物語世界について深く考えることはやめました。

愚かに思われるかもしれませんが、世の中に溢れるエンタメ作品に比べたら、やはり自分の人生はつまらなすぎて耐えられません。

私も綾乃レベルかそれ以上の「物語中毒者」ですが、それは自分の生活があまりに面白くないので、そこから現実逃避して意識を飛ばすために、必死に他人の人生を貪っているのだと思います。

 

”私は私の人生の主人公”的な言説がよくありますが、そんなことは今更百も承知の上で

私は私の物語について考えること・コントロールしようとすることを放棄したのだということに、今日この漫画を読んで思い至りました。

私はこれからも面白い作品に出会ってその世界観に浸りたいし、他人に翻弄されながら他人の人生にちょこっと登場させてもらう方がいいです。

綾乃と啓千の物語の行方も、また他のモリエサトシ作品も、引き続き追っていこうと思います。おわり。