BLばかりおすすめしていてアレかもしれませんが、優れた作品が多いのですよ。ボーイズ・ラブ。
近所のTSUTAYAで見かけてなんとなく手に取ったのです。
作者の雲田はるこさんは、現在好評放送中のアニメ『昭和元禄落語心中』の原作者でもあり、どことなく昭和っぽい絵がコミカルでほのぼのします。
『いとしの猫っ毛』はストーリーと言うほどのストーリーはないというか、どちらかというとドラえもんやクレヨンしんちゃんのような、個性的で魅力的なキャラクターの日常を描き出す作品です。
主人公の沢田恵一(恵ちゃん)が、地元・小樽から恋人の住む東京に上京してくるところから、物語ははじまります。
小学生のころから幼馴染だった花菱美三郎(みいくん)と高校3年生のときに恋人同士になり、みいくんの事情で6年間遠距離恋愛になってしまったものの、なんとか一緒に暮らせるようになった2人。
ところが、クタクタになって空港からみいくんの住むアパート”またたび壮”にたどり着いた恵ちゃんを待っていたのは、オカマのポンちゃん、夜の蝶ヨーコさんとその息子ケンタ、そしてオタクの蛭間さんという変人達でした。
クセがありながらもやさしい住人たちと、いとしい恋人に囲まれて、恵ちゃんの新生活がはじまるのです。。
1巻が春、2巻が夏、3巻が秋で4巻が冬という流れで描かれています。
また、恵ちゃん・みいくんの学生時代を描いた「小樽篇」もありますが、そちらは若干シリアスな内容です。でもそれもいい。
みいくんは幼いころからとにかく恵ちゃんが大好きで、それは24歳のいまでも変わらないのです。それどころか、一緒にいればいるほど、どんどんもっと好きになっていくようです。
恵ちゃんも、もとはノンケだったのですが、みいくんと真剣に向き合えば向き合うほど、彼にさらに恋に落ちる自分に気づいていきます。
ほんtttっとーーーーーーーーーに、仲良しなんですよね、この2人。
世の中にどれくらいこんなに愛し合っているカップルがいるのかわからないですが、世界一好きあってるんじゃないかと思うくらい、仲がいいです。
4巻でみいくんが祖母の仕事の手伝いで海外に出かけてしまう回があるのですが、そこでヨーコさんが2人のあまりの仲のよさに心底びっくりするシーンがあって、私もやはりヨーコさんと同じようにびっくりしました。
「そういえばおれ
一人でいる方が楽とか 考えたことないなあ」
「え゛っ そうなのアンタら」
「ウンそうだよ
みいくんに何も気い使う事ないしょお」
「アタシだってケンタが遊べってうっとおしい時あるし
ケンタに邪魔にされる事もあるし」
「ウーン邪魔かあ
ン――― 無いなあ
いつまでだって一緒に居れますよ」
「ちょっとアンタたち変よ」
「そう?」
「人間じゃないよ」
「嫌だあ~」
邪魔に思うことが無いって、他人に対して滅多にないのではないでしょうか。
私はどんなに好きな相手でも、邪魔にならないことは無いです。今までの経験上。
みいくんと恵ちゃんって、本当に2人で1人というか、まさに「ニコイチ」といった風情なんですよね。
ファンタジーですけど、そういう相手に出会えたことを羨ましく思う部分もあったりして、だから2人の世界にものすごく引き込まれるのです。
そして、そんな愛し合う2人ですが、とにかく性格がのんき。
2人だけではなく、またたび壮の住人全員のんき。
オマケに恵ちゃんの家族もみいくんの家族も、みいくんの友だちもみんなのんきです。
この漫画の大きなキーワードでもあると思います。「のんき」って。
いい意味で肩の力が抜けて、「ああ、これでいいのだ」と赤塚先生のようなセリフが出そうになるくらい、ゆるい気分になれる漫画です。
この絶妙な脱力具合って、実は描くの難しいと思うんですよね。
あんまりお気楽すぎては、かえって腹が立つような気がしますが、『猫っ毛』にはそういう癇に障る能天気さはなくて、自然に腑に落ちるのんきさなのです。
それが凄く心地いいです。
だから、結構寝る前なんかに読みます。幸せな気持ちで眠りにつけます。
BL作品としてのエロもあるにはありますが、どうもこの作品のエロは常に笑いとセットなので、ドロドロのエロBL希望の方にはおすすめしません。
どこまでもほのぼのした、そしていとしい漫画です。おわり。