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れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

『4 Unique Girls』

巷で評判が良かったので手に取ってみた山田詠美さんのエッセイが面白かったです。

女性誌『GINGER』の山田さんの連載を加筆修正してまとめられたものです。

たまに雑誌も読むので、「ああ、これ前に読んだな」というトピックもいくつかありました。

 

山田さんの小説は昔から何冊か読んでいて、どちらかというと好きな作家ではあるのですが、全部欠かさず読むほどではないです(そもそもそんな作家はいないかもしれません)。

ただ、山田さんの作品の中には思わず唸るような名作がいくつかあり、それに出会うたびに「さすが・・・山田詠美・・・!」と感嘆せずにはいられないことがあります。

だから、以下のエピソードを読んだ時、とても納得がいったし、あらためて山田さんの偉大さに思い至りました。

 前に、阪神淡路大震災の復興後間もない神戸でサイン会を開催したことがあった。明るい笑顔を取り戻した人々に、こちらの方が元気付けられてしまい、おおいに恐縮したものだが、数多くいただいたお手紙の中に、こういうのがあった。 

 家も失くした。親もなくした。仕事も失った。でも、まだ、私には山田詠美の小説が残っているんだから、ま、いいか、と思いながら生きている。

 便箋を持つ手が震えた。もちろん、涙で字がかすんだ。誉め言葉なんてものじゃない、と思った。小説というものの存在意義を突き付けられたような気がしたのだ。あれから私は、したり顔で文学を語ることとは無縁になった。飢えた子供の前で文学は有効か?だって?そんな議論は、どこかの知識人のおっさんにまかせておけばいい。

(「20 小説の存在意義は」より)

読みながら私も思わず涙してしまう名エピソードです。小説をただの娯楽として楽しむのももちろんありですが、この世界にはただの娯楽にするにはあまりにも深く心に寄り添う物語があるのも確かで、そういう物語を書ける作家はそんなに多くはないのです。そしてそんな限られた天才の一人が、山田さんなのです。

 

この本ではいろんな角度から山田さんの考える”ユニークな女”になるためのルールが書かれています。言葉遣いや気の持ちよう、服装や人生観にいたるまで、山田さん独自の視点がときに熱く、ときに軽快に綴られています。

読みやすくて、でも「ああ面白かった」だけでは終わらない、山田詠美さんの世界観に触れることができる良著です。おわり。