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れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

『純潔のマリア』

アニメ

今年の冬アニメでとても良かった作品、第2弾です。

戦争絶えぬ中世・百年戦争中のフランス[注 1]。戦を嫌う処女聖母の名をもつ魔女マリアが夜な夜な戦場にサキュバスを遣わし、戦争をかき乱す。しかし、その天界の方針に沿わない行動のため、マリアは大天使ミカエルに目をつけられ、制裁として純潔(処女)を失ったとき魔女としての力も失うようにされてしまう。それでもマリアは自分の理想のため、魔力を使って戦争に介入し続けるが、ついにミカエルの制裁の槍を受け、瀕死の重傷を負ってしまう。

(Wikipediaより) 

最初の頃は、テンポのいいちょっとエッチなコメディ作品くらいに思っていたのですが、物語の深淵にきちんとしたテーマがあり、なかなか興味深い作品でした。

 

マリアは争いごとが大嫌いで、それを辞めさせようとして、魔力をつかって戦に茶々を入れています。

マリアが割って入ることによって救われる命があることは確かですが、生活のために戦果を挙げなければならない兵士たちには大迷惑なんですね。また、他所の魔女たちも戦争が起きることによって稼ぎを得ているので、マリアは変わり者扱いです。

マリアのやっていることには、ジョセフ(フランス軍通信兵としてマリアを度々訪ねていた青年。マリアに好意を寄せている)をはじめ支持する者も確かにいますが、この世の理に反しているとして大天使ミカエルには目をつけられるし、修道士たちにも目の敵にされてしまいます。

 

マリアを見ていて、思わず「だめだよ、マリア」とため息交じりに嘆きそうになってしまいました。

というのも、マリアの気持ちが凄く良く分かるのです。自分と似ているから。

マリアは凄く子供なんです。

自分の中での良い/悪い、好き/嫌いがハッキリしていて、凄く単純な判定経路しか持ち合わせていないんです。

だから、自分は正しいことをしていると思っているのに、町人やミカエルから反発を受けて、心底納得できない・理解できないんですね。清濁併せのむということができないんです。

本当に、自分自身を見ているようでした。

私も前の会社で大変お世話になった女性上司の方に、「もう少し大人になろうよ」とよく言われていました。

オジサンの管理職や役員の中には、理不尽な人が沢山いて、私はものすごく反発しました。好き勝手言って滅茶苦茶な指示を出して現場を混乱させ、問題が起きたら全部部下になすりつけるような人は、私にとっては不要な人間以外の何者でもありませんでした。

他の同僚も先輩社員も、皆感じるところは同じです。でも、それでも彼らは私のようにあからさまな反発はしませんでした。

私はマリアのように、思ったことをそのまま口に出し、論理学に則った理屈で正面から戦う奴でした。相手は図星をつかれて反論の余地なしなのですが、それがかえって相手の気持ちを逆撫でし事態を悪化させ、周囲もトホホといった様相になってしまいました。

私は自分の論理が正しいと思っていたし、正しいことを言っているのにどうして皆が自分を止めようとするのか、最初は全然わかりませんでした。

でも、論理的に正しいことが、どのような場面でも正義であるとは限らなかったのです。

各々にそれぞれの正義があったのです。

それに、世の中には山ほど理不尽で不合理なことがあります。かつての私には、それらが"在る"という事実を受け入れる度量が足りていませんでした。

 

マリアも様々な不条理に揉まれて、自分が何のために戦を止めようとしていたのか、自分は何がしたかったのか、立ち止まってよく考えるようになります。それと時を同じくして、マリアは魔法も使えなくなります。

しかし、仲間に助けられ、励まされる中で、やっぱり争い事は許せないという自分の正直な気持ちに立ち返り、魔法が使えないまま、マリアは再び戦場に向かいます。

そこで想い人であるジョセフと気持ちが通じ合い、愛を得たマリアは再び魔法の力を手に入れます。

そしてミカエルと相対し、「誰かが世界を導かなくてもいい。各々が自分のやりたいようにすればいい」という結論に達します。

 

この結論はすごく真っ当だなあと思いました。腑に落ちるというか。

それぞれがそれぞれの幸せにそって生きている世界が一番幸福ですよね。

誰かが定めたルールとか、誰かが創造した神だとか、そういう枠に自分をねじ込んで満足するより、自分のやりたいようにやって、それが社会の中で上手く回るのがきっと一番良いはずです。問題は誰かの幸福が別の誰かにとって不幸になってしまう場合で、それをどう解決していくかは、その都度各々が考えていけばいいことなんですね。

 

最終的に、マリアは魔女でも処女でもなくなります。

ジョセフと結ばれたマリアは普通の人間として、いち村人として生きていくことになります。二人の間には子供も生まれます。

村人たちもあたかかくマリアを迎えてくれて、めでたしめでたし。

…でも、正直マリアには魔女のままでいてほしかったです。

何故かって?魔女のマリアの方がかっこいいからです。見た目が。

人にとって正しさとは何か、神とは何か、本当に大切なものは何なのか、考えるきっかけになってくれるような、そんな作品でした。おわり。