今週、通勤電車の中でこの本を読んでいました。
リクルートの創業者・江副浩正さんが、会社を立ち上げてからの様々な経験を自身の言葉で赤裸々に語りながら、ビジネスや人生に対する考え方を伝えようとする良書でした。
起業家、と聞いて真っ先に思い浮かべる人は誰でしょう。
私の場合は堀江貴文さんです。自分が10代の頃、お茶の間を賑わせていたIT社長のイメージが非常に強いようです。
私の連想しやすい起業家像は、人に使われるのが嫌いで、やりたいことや野心が沢山あって、人並み外れた思考能力があって、合理的で、そして奇抜なアイディアやカリスマ性で人を惹きつけて止まない、そんな人です。
そういうイメージで江副さんの本を読み始めると、とても驚かされます。
私はこの本を読みながら、江副さんの控えめな姿勢を随所に感じました。
人前に出たり、人の上に立つのがあまり得意ではない、どちらかというと苦手そうな印象を受けました。
しかし、仕事に対する考え方や自分のやりたいことについて、非常に熱い思いとぶれない軸があって、それによってここまで立派な会社を創り上げることができたのだろうと思わせる、静かな力を持っている方だと感じました。
自社ビルを建てるための融資を受ける時、銀行の重鎮と面接をする場面があるのですが、そこでの江副さんの真摯な返答にとても感心しました。
自分のおこなっている事業が社会にどのように役に立つのか、どのような形で適切に利益を得ているのか、将来的にどんなことをしたいのか、ひとつひとつ丁寧に、それでいて信念を持って答えることができる人だから、ここまで成功した会社を創れたのだな、と思いました。
他にもビジネスチャンスのたびに、各界の重役にあれこれ訊かれ、そのたびに自分の言葉で真摯に答え抜く場面が多々描かれています。
今の職場の上司に以前言われた言葉を思い出しました。
「細かいミスや、小さな失敗をいくつかしたとしても、本質を見る目がある奴は総合的に見たときによりよい仕事をしていて、間違いがない。逆に、ひとつひとつの細かい業務をきちんとやっているように見えても、本質を理解していない奴は気がつくとどえらい間違いを犯しているケースが多々ある。つまり、大切なのは本質を見る目なのだ。」
江副さんは、会社を立ち上げて思考錯誤しながら、時代の変化や数字に揉まれながらも、創業者として会社の本質と自分のしたい事の本質を見失わず、ぶれない軸をもつ人です。
そしてそういう芯のようなものが、起業家精神の根幹、ないし土台となるのだろうと思いました。
起業家でない人、勤め人でも、起業家精神を持つことには大きな意味があると感じました。
自分の今おこなっている仕事が、どのように社会に役立っているのか。
自分の勤める会社の使命は何なのか。
自分や自分の勤める会社が目指すべきものはどういうものか。
本書は、そういった本質を見る目を大事にしながら働きたい、そう思わせてくれる本です。おわり。