れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

文学

ひとりで生きるのは怖い:『汝、星のごとく』

結構久しぶりの更新になりました。まだ生きてます。あけましておめでとうございます(もう3月…)。 凪良ゆう『汝、星のごとく』を読みました。 汝、星のごとく 作者:凪良ゆう 講談社 Amazon 書店で平積みにされているのをよく見ていましたが、今頃読んだとい…

怯えながら生きる:『群青の夜の羽毛布』

最近山本文緒大先生のエッセイや小説を立て続けに読んでいます。 その中で、なかなか読み応えがあったのが『群青の夜の羽毛布』。 群青の夜の羽毛布 (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon 登場人物が煙草をよく吸う、1995年に書かれた小説のようです。…

『日々是作文』

山本文緒大先生の昔のエッセイを読みました。 日々是作文(ひびこれさくぶん) (文春文庫) 作者:山本 文緒 文藝春秋 Amazon おもに90年代に書かれた文章が中心で、その頃山本先生は30代。今の私と同じくらいで、自分と比べるのはいろいろ烏滸がましいとは思…

恋愛の唯一性:『孤独な夜のココア』

電車やカフェでのちょっとした空白の時間に短編集を読みたいと思い、田辺聖子『孤独な夜のココア』を手に取りました。 孤独な夜のココア(新潮文庫) 作者:田辺 聖子 新潮社 Amazon 初版が発行されたのは昭和58年とのことなので、少し古き良き時代というか、…

余命を知った後の生活:『無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記―』

山本文緒大先生が最期の時まで書いていた日記が出版されていたのを最近知り、読みました。 無人島のふたり―120日以上生きなくちゃ日記― 作者:山本文緒 新潮社 Amazon 人間ドックを毎年受けて、10年以上飲酒も喫煙もしていなくても、いきなり末期癌が発見され…

拘りと幸せ:『自転しながら公転する』

やーっぱり面白かったです、山本文緒『自転しながら公転する』。 自転しながら公転する 作者:山本文緒 新潮社 Amazon 茨城の実家にUターンしてアウトレットモールのアパレル店員として働くワーキングプアーの独身アラサー・都と、飲食店で働く中卒フリーター…

無敵の人予備軍の苦悩と:『正欲』

すこぶる面白かったです、朝井リョウ『正欲』。 正欲 作者:朝井リョウ 新潮社 Amazon 人間ではなく"水"に欲情する特殊性癖をもつアラサーサラリーマン佐々木佳道と、彼の中学の同級生・桐生夏月。 夏月は三十路を過ぎても独身のまま岡山の実家で暮らし続けて…

そのスタイルでいこう:『オーラの発表会』

日本の現代文学でギャグ・コメディセンスがピカイチなのが綿矢りさ大先生。 『オーラの発表会』、めちゃめちゃ笑いました。 オーラの発表会 (集英社文芸単行本) 作者:綿矢りさ 集英社 Amazon あらすじは以下。 「人を好きになる気持ちが分からないんです」 …

生きるのほんとしんどいんですけど:『推し、燃ゆ』

コロナ禍のせいか加齢のせいか、最近本当にすべてが煩わしくて生きているのがつらいなぁと思います。 振り返れば日記を書き始めた10代の頃から、生きているのがつらいとはずっと書き続けている気がします。 20年弱、つらいつらいと言い続けながら生き延びて…

不幸を刻み、染み付かせて:『かか』

ここ数日、いろんなものへの興味が萎んでいく感じがしています。 寒さのせいでしょうか。 アニメを観るのも面倒くさく、音楽を聴いても心が動かなくて、寒くて散歩に出るのも億劫で、自炊する気力もなくて冷凍餃子ばっかり食べたりしてます。 こんな状態にな…

人間っていいのか?:『サピエンス全史』

昨年末に読んで、別次元に面白かった本が『サピエンス全史』。 サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福 作者:ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社 Amazon 世界的ベストセラーですが、私はモデルの大屋夏南さんのYouTubeで初めて知りました。 ま…

雰囲気映画、雰囲気小説、雰囲気アニメの存在意義

映画『ドライブ・マイ・カー』を観ました。ドライブ・マイ・カー インターナショナル版 [Blu-ray]西島秀俊Amazon 原作は村上春樹『女のいない男たち』に収録されている短編?で、私はこの本を2年前くらいに読んだことがあります。が、そこまで強い印象は残っ…

『地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門』

あけましておめでとうございます(もう15日ですが)。 昨年末から今年にかけて面白い本に立て続けに出逢い、いろんな思いが帰省ラッシュの東名高速道路くらいの大渋滞を起こしています。 少しずつ噛み締めていきたい、そんな正月。 面白い本渋滞のわりと先頭…

私にとっての山本文緒(4):『ばにらさま』

山本文緒作品についてつらつら書いてきましたが、一旦ここで終わります。 山本先生の訃報を聞いてから、最後に出版された短編集『ばにらさま』を買いました。 ばにらさま (文春e-book) 作者:山本 文緒 文藝春秋 Amazon 発売は今年の9月ですが、収録されてい…

私にとっての山本文緒(3):『みんないってしまう』

間が空きましたが前回のつづき。 自分の人生にもっとも影響を与えた本を1冊だけ選ぶとするなら、私は山本文緒『みんないってしまう』を挙げます。 みんないってしまう (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon はじめてこの作品を読んだのは高校3年生の終…

私にとっての山本文緒(2):『ブラック・ティー』

前回からの続きです。 中学時代も何冊か山本文緒作品を読んでいて、なかでも好きだったのが『ブラック・ティー』でした。 ブラック・ティー (角川文庫) 作者:山本 文緒 KADOKAWA Amazon こちらは軽犯罪をテーマにした短編集です。 一話目に収録されている表…

私にとっての山本文緒(1):『絶対泣かない』

先月作家の山本文緒さんがお亡くなりになりました。享年58歳。 ネットニュースの記事は10月18日発表のものが多いのに、私が訃報を知ったのはなんと昨日、11月13日でした。 11月13日は山本先生のお誕生日で、たまたまinstagramのタイムラインで目に止まった山…

地べた社会の労働者:『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』

ノンフィクションでこんなに面白い本を読んだのは久しぶりかもしれません。 ワイルドサイドをほっつき歩け --ハマータウンのおっさんたち 作者:ブレイディみかこ 筑摩書房 Amazon 現代英国の労働者階級社会で生きる著者とその家族・友人たち(主にベビー・ブ…

いつかは向かう場所:『今日はヒョウ柄を着る日』

前の職場は県職員や銀行・新聞社などの天下り先として機能していたので、還暦を過ぎたじいさんがゴロゴロいました。 ケチなじいさんは偉そうに講釈をたれるだけだけど、そこそこ気前がいいじいさんだと、ちょっとしたことでうな重を奢ってくれたりしました。…

病気と健康のはざまで:『シュガーレス・ラヴ』

このブログで既に何度も書いていますが、山本文緒さんの小説が本当に面白くて大好きです。でも全部読んでるわけではないんですよね。 Amazonであらすじを読んで、ああ未読だなと思ったやつを気まぐれにポチりました。そして期待を裏切らず、やっぱりすこぶる…

この人のために:『メイドの岸さん』

どこかの家の住み込みメイドになりたい願望があります。 メイドの岸さん(1) (マガジンポケットコミックス) 作者:柏木香乃 講談社 Amazon Amazonの1巻無料セールを久々に覗いたら、面白い漫画にたくさん出会えました。 その中の一つが『メイドの岸さん』。…

岸本佐知子さんの爆笑エッセイ『ひみつのしつもん』

明るい作品をもう一つ。 ひみつのしつもん (単行本) 作者:岸本 佐知子 筑摩書房 Amazon 翻訳家・岸本佐知子さんはエッセイストとしても有名らしいのですが、お恥ずかしながら全然存じ上げませんでした。 表紙がかわいいな〜とたまたま手にとってパラパラ流し…

女性の貧困と性犯罪被害、「一人で大丈夫」であること

『美しい彼』で好きになった作家・凪良ゆうさんが2020年本屋大賞を受賞したベストセラー小説『流浪の月』を(今頃)読みました。 流浪の月 作者:凪良 ゆう 東京創元社 Amazon 小学生女児・家内更紗9歳は、最愛の父を病気で亡くし、夫の死を引き金に色に溺れ…

『なぎさ』

面白い小説を読みたいとき、期待を裏切らない作家が山本文緒大先生。 『なぎさ』を読みました。やっぱり、すごく面白かったです。 なぎさ (角川文庫) 作者:山本 文緒 発売日: 2016/06/18 メディア: Kindle版 本を手に取りパラパラ目を通すと、目についたのは…

『サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3』

村上春樹『海辺のカフカ』が本当に好きなんですが、紙の本を所有するのがイヤで図書館に借りに行きました。 その時ついでに手にしたエッセイが面白かったです。 サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3 作者:村上 春樹 発売日: 2012/07/09 メディア: ハードカバー…

調子が悪くても:『夢も見ずに眠った。』

最近精神的に調子が悪いです。 仕事でミスが続き、いつも時間に追われている心地がしてイライラし、何をしても楽しくない。 季節の変わり目だし、このご時世だし、不調の原因を考え出したらキリがないですね。きっと同じような方は世の中にたくさんいるだろ…

なんだってマーケ:『ぼくは愛を証明しようと思う。』

大学で専攻した心理学は、そこそこ面白かったですがあまり夢中にはなれませんでした。面白かったなーってだけで、卒業したあと生活に役立てることもなかったし、学んだ知識もぼんやりとしか記憶に残っていませんでした。 だからびっくりしたんですが、藤沢数…

水は命:『We the Bathers』

素敵なショートフィルムを観ました。 石鹸などで有名なブランド”LUSH”のチャンネルで限定公開されている、水とバスタイムにフォーカスしたショートフィルムです。 『We the Bathers』は、ロンドン在住のフィービー・アーンシュタイン監督が世界12の場所で出…

同性を愛することと自身を慈しむこと:『生のみ生のままで』

最近私がひたすらに考えているテーマが「いかにして自分を慈しむか」なんですが、 先日読んだ綿矢りさ『生のみ生のままで』は予想外の角度からこのテーマに一石投じる良作でした。 【上下合本版】生のみ生のままで (集英社文芸単行本) 作者:綿矢りさ 発売日:…

子供のいる世界といない世界:『ここは私たちのいない場所』

先日30歳になりました。三十路。まさかこんなに生き延びるとは・・・って感じです。 30歳になってもまだ知らない素敵な作家さんが、物語がたくさんあるものです。 ここは私たちのいない場所 (新潮文庫) 作者:白石 一文 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019…