れっつ hang out

ひまをつぶしましょう

他人のQから自己を省みる:『40+1』

私はアニメもゲームも大好きで、演じている声優さんもとても尊敬していますが、声優さんの書いた本を手にしたのは安元洋貴『40+1』が初めてでした。

安元洋貴 1stフォトブック 40+1 【スペシャルトークCD付き】

安元洋貴 1stフォトブック 40+1 【スペシャルトークCD付き】

 

私が観てきたアニメの中で印象に残っている安元さんの役は『黒執事』のアグニ、『美男高校地球防衛部』シリーズのズンダー、『十二大戦』のドゥデキャプルなどなど。

低めの声が印象的な方ですが、私が今回安元さんの本を手にした理由は、ラジオ番組で話す安元さんがめちゃめちゃ面白かったからです。

 

radikoのタイムフリー機能でいろんな番組を試し聴きしていたある日、『安元洋貴・江口拓也のミクチャラジオ』に出会いました。これがめちゃめちゃ面白かった。先月で放送終了してしまったのですが、「深夜ラジオってこんなに面白いんだな」というのをまざまざと突きつけられた傑作箱番組でした。

 

そこで知った安元さんのただならぬ知識量と返しの巧みさにすっかり魅了され、それ以来安元さんの喋るラジオ番組は逐次チェックしています。

 

そんな傑出したラジオマンの安元さんが初めて出す本ということで、アニメイトで予約購入してみました。(イベント抽選は外れましたが・・・)

本を最初に開いたときは、正直グラビアにちょっとびっくりしましたが、そのあとに載っている立木文彦さんや遊佐浩二さんや細谷佳正さんとの対談ページやロングインタビュー、一問一答にカレーのレシピ集など、読み物としてとてもいい本でした。

 

いろんな有名人がこうして自己を振り返る書籍を出版していますが、読むたびに自分を省みるというか、他人のQを通して自分にQを投げかけるようにしています。

なかなか市井の一般人であるとインタビューされることや質問されることってないと思うんですが、いざ自分に問いかけると、案外すぐ答えられないことが多いんですよね。つまり、自分で自分のことがあまりわかっていない。そのことにはたと気がつくのです。

 

『40+1』で一番印象に残ったのは、ロングインタビューのところの、安元さんが養成所から事務所入所を経てだんだん大きい仕事を手にしていく過程の部分です。

念願のレギュラーのナレーション仕事を獲得した後、番組スタッフさんや先輩声優さんなど、周りの人々との何気無い交流を重ねて仕事がどんどん広がっていったという話からでた格言「人見知りは時間の無駄」。これには目から鱗でした。

確かに、人見知りで得することがあるのかといえばない気がします。

私は大学生の頃くらいから他人と話すのが億劫になり始めた後天性人見知りでしたが、社会人になったらとても人見知りなんてしていたらやっていけないことばかりで、結局他人とコミュニケーションしていかないと仕事はまわらない、お金は稼げないということが身にしみてわかるようになったんですね。なので凄くふに落ちました。

なかでも、声優さんのようなタレント業は一般的な会社員と違って歩合制だと思うので、なおさら人間関係の広さや深さが収入に直結するでしょう。

営業職で他人と話すことにほとほと疲れ、引きこもりがちになっている今日ですが、人見知りはしないようにしようと決意を新たにしたのでした。

 

それにしても、お写真を見ながら「誰かにすごく似てるんだよな〜」とずっと悶々としていたのですが、最近思い出しました。

安元さん、大学時代の哲学の先生に似てます。目の感じとか、ムチっとした体格とか。低くていい声してるところも似ています。(どうでもいい情報)

 

これからも安元洋貴さんのご活躍に要注目です。おわり。

嫉妬と独占欲と三国志:『十三支演義 偃月三国伝1・2』

中学3年生の頃好きだった男の子は読書が好きなバスケ部のキャプテンで、彼が三国志を読んでいるのは気づいていましたが、「じゃあ私も読もう」とは思えませんでした。それくらい歴史(日本史も世界史も)が苦手だったのです。

でも!乙女ゲームに落とし込んだものなら興味が湧くというものです!

シナリオの良質さが評判で前々から気になっていた『十三支演義 偃月三国伝』。

PS Vita版は大ボリュームで遊びごたえも満点、イラストも音楽も全てがハイレベルの良作乙女ゲームでした。

 

タイトルの"十三支"は"じゅうざ"と読み、干支の13番目、つまり猫を指します。高屋奈月フルーツバスケット』を思い出しますね。

物語世界は三国志をモチーフにしており、全体の大まかな流れは史実を崩していませんが、この"十三支"もとい"猫族(まおぞく)"という概念を織り込むことで、より深みを出したストーリー展開となっています。

 

あらすじは以下。

時は後漢末。

乱世の奸雄曹操により、隠れ里から連れ出された『猫族』(まおぞく)。 人間の体に獣の耳を持つ彼らは、猫の姿の妖怪『金眼』(きんめ)の 子孫と言われ人間たちから忌み嫌われていた。 人間たちは猫が十二支から外れたという昔話から 十三番目の干支、『十三支』(じゅうざ)と呼び彼らを蔑んだ。

十三支演義

猫族である関羽劉備張飛の三人は幼い頃から兄弟のように育ち、 固い絆で結ばれていたが、平穏な日々は突然終わりを告げる。 漢帝国より勅命を受けた討伐軍の曹操は、 逃げた黄巾族を追って猫族の隠れ里に迷い込んだのだった。 猫族の高い能力に目をつけた曹操の策略により、平和に暮らしていた 猫族たちは人間たちの戦いに巻き込まれていく。

十三支演義2

猫族の長・劉備は、人間たちの戦いに巻き込まれたことで、 身に宿る金眼の呪いを増幅させてしまう。 邪へと堕ちた劉備だったが、関羽をはじめとする猫族の絆の力により 純粋であった子供の劉備を取り戻し、官渡の戦いは幕を閉じる。 それから半年。曹操の計らいにより、人間と共に暮らしていた猫族。 しかし、曹操不在を機に人間たちの不信感が暴力となって猫族を襲う。 再び村を追われる身となった関羽たちは安寧の地を目指す。 

公式サイトより)

主人公は猫族の少女でありながら天性の武を持つ女武将・関羽ちゃん。

猫耳の可愛い可憐な少女ですが、戦場ではずば抜けて強く、さらにお人好しとも言えるほど心優しい主人公です。三国志にお詳しい方からすると関羽が女性ということに驚かれるかもしれませんが、さらに驚くことに呂布も女性です。

関羽は母親が猫族、父親が人間という混血で、そのため他の猫族と違って瞳の色が黒いです。このことが物語に大きく影響します。

 

攻略順にキャラクターの感想を書きます。

 

曹操

各所から桁違いのヤンデレだと聞いていたのですが、本当にクレイジーで、かつ愛すべきキャラクターでした。

武にも才にも野心にも秀でた乱世の奸雄ですが、実は母親が猫族で父親がろくでなしの人間の混血児でした。

本来猫族と人間の間には子供は生まれないと言われており、母からも父からも愛されず育った孤独な曹操少年は猫族も人間も心の底では信用していません。

世界に一人しかいない混血の自分こそ真に秀でた存在であり、それをこれまで自分や母を虐げてきた父親に見せつけるという一種の復讐心のために大陸制覇を目論んでいます。そのために自ら猫耳を切り落としまでした男、それが曹操です。

そんな曹操が見つけたもう一人の混血・関羽ちゃん。敵兵ながらその武は認めていたものの、まさか自分と同じ、この世で2人だけの混血。曹操は目の色を変え、関羽ちゃんを自分のものにしようとします。

この曹操の執着っぷりが凄まじくて笑えます。でも、最初は混血というその血にのみ執着しているようで萌えはしないのですが、関羽ちゃんと触れ合うことで彼女の心に引かれ、最終的には混血であるなしにかかわらず関羽ちゃんが愛しいという流れになります。

関羽ちゃんが関わるとそのクレイジーさを発揮する危ない奴ですが、戦に関しては手を抜かず策を張り巡らし部下も思いやるなかなかいい武将だとおもいます。

曹操の台詞で特に好きなのは、猫族の戦闘能力に惹かれ自軍に取り込もうとした際反対した夏侯惇に放った一言。

「使えるものはなんでも使う。

それが十三支だろうが女だろうがな。

私の軍では結果が全てだ」

 

張遼

呂布の臣下で、口調や身振りがどこか人間とずれている人です。

その正体は仙女である呂布が作り出した土人形でした。

土人形なだけあって、ハッピーエンドもバッドエンドも人知を超えた展開で、私は今ひとつ萌えませんでした。でも料理も掃除洗濯も裁縫もなんでもできるというのはいいですね。家に一人欲しいタイプです。

張遼の台詞で好きなのがこちら。

「人はいずれ死ぬ。それが多少早まろうと、関係ないのでは?」

 

趙雲

まず、見た目が一番タイプです。強くて気さくで自然に相手のことを褒める"天然人たらし"な彼が、関羽ちゃんを好きになってからは嫉妬心や独占心をうまく抑えきれずやきもきする様子がもう、萌そのものです。趙雲ルートは1も2もなかなか辛いストーリー展開がありました。1では趙雲の主君・公孫瓚様がまさかの関羽ちゃんの父親であることが発覚し、公孫瓚様の死に際のシーンでは泣きました。

2では長坂で子供が殺されるシーンが辛かったです。そのあと子供たちを救えなかったショックで関羽ちゃんが病んでしまうのもすごく悲しくて、それを必死に支える趙雲の男ぶりに惚れない人はいないでしょう。

文句なしのナンバーワン・ガイです。

 

張飛

関羽ちゃん好き好き年下ワンコタイプです。猫族ですが年下ワンコ。

健気でちょっと不憫で可愛い弟分という感じ。張飛をからかう同じ猫族の仲間・張蘇双と関定という少年たちも面白いです。

 

夏侯惇

曹操の臣下。

最初は見た目がなんとなく小物っぽくて、攻略対象だと思ってませんでした。

ところが!この夏侯惇が実は超絶可愛いツンデレ君でした。かなり萌えました。

猫族もキライ、女もキライで関羽ちゃんにキツく当たっていた彼が、不本意ながらも戦場で関羽ちゃんと組むうちにほだされる様子はたまりません。

また、左目を失い眼帯をすると、一気に男前なルックスになります。これには驚きました。眼帯マジック。

夏侯惇ルートだと急に曹操が理解のある父親みたいになるのも笑えます。

 

劉備

猫族の長で銀髪の少年。

あまりに幼い見た目と喋り方でパッと見そういう対象ではないように見えますが、そこはCV.石田彰、絶対後から大きくなってかっこ良くなると確信しながらプレイしていました。

そしてやっぱり!呪いの力を解放して年相応の見た目に変身した劉備は色男でした。関羽ちゃんに迫る小悪魔で妖艶な感じの劉備は最高でした。ありがとうございます。

劉備関羽ちゃんに対する独占欲は曹操をも凌ぐレベルだと思います。

 

諸葛亮

十三支演義2の方で出てきます。変な団扇を持っている天才軍師。

諸葛亮もなかなかのツンデレですが、呉と同盟を組むときの大演説はとてもかっこよかったです。頭が良くて弁が立つ男性って素敵ですね。

劉備のお人好しの前に自分の意見が通らなかったときに関羽ちゃんを睨んで八つ当たりするところが可愛かったです。

ラブラブになってからは、趙雲と同じく関羽ちゃんに跡をつけたがるめんどくさいタイプというところも萌えポイントですね。

 

周瑜

呉の君主・孫権の臣下で荊州でたった一人の猫族の青年。

ダメな大人の雰囲気が漂う優男ですが、好きな女のためならなんだってする感じの気概はひしひしと感じました。

 

改めて振り返ると、どのキャラクターも嫉妬心や独占欲が強い男ばかりで、戦場で活躍する男性というのはそういうものなのかなぁと思いました。

昔営業でも「仕事のできる男は性欲が強い」とか言ってた同僚がいました。ホントかどうか定かではありませんが。

逆に、欲が強いから戦や争いを起こす・もしくは好むのかもしれません。

周瑜も「昔から男が戦を起こす理由なんて 国か、女なんだ」と言っていました。

 

このゲームをプレイした後だと、Wikipedia三国志の武将の解説もそこそこ興味深く読むことができます。

三国志の本当に大まかなざっくりした流れもつかめます。

歴史もいわば人間ドラマなので、こういう風にメロドラマ調にして楽しいアドベンチャーゲームにしてもらえれば楽しく学ぶことができるんですね。

改めて歴史の一つをこうした素晴らしい乙女ゲームに昇華させた制作陣に心から感謝と敬意を表します。ああ楽しかった。おわり。

国際感覚ってこういうこと:『50mm』

面白い雑誌が出ました。

高城剛氏が世界中を飛び回って風景や人をカメラで切り取り、国際社会の"今"と"これから"について書いた大判の雑誌です。

出版不況と呼ばれる昨今、「雑誌が売れないのは読者よりも広告主・企業に寄った内容でつまらないから」と断言する高城氏にとても共感し、本書を街の書店に買いに行きました。

 

前の職場がマスメディア企業だったので、この傾向がすごくわかるんですよね。

特に民放のテレビやラジオは視聴者から受信料をとっていないので、売上はスポンサーからか、公開収録やフェス等のイベント収益に限られます。自社の媒体価値は視聴者の質と量に担保されているのに、どうしても売上至上主義で視聴者よりもスポンサー企業の喜ぶものを作ろうとする傾向があります。(特に営業)

SNSやWEBメディアが民放より面白いと思うのは、制作している当人が自分で見て自分で書いて自分で編集して自分で発信している個人の経験に基づくコンテンツだから。個人の"リアル"がオンラインに溢れているのに、ご都合主義の広告コンテンツばかり放送していれば、受け手が民放にシラけて視聴を辞めるのも当たり前です。

雑誌もきっと似たような構図なのでしょう。

 

この雑誌では欧米の大麻ビジネスの最前線や、難民問題その他で揺れるヨーロッパの国々、宗教と資本主義に揉まれるアフリカの国など、世界中の様々なトピックが取り上げられています。

 

私が特に興味を持ったのは皆既日食とそれにまつわるフェスの話です。

現在は日本国内も春先から夏の終わりにかけて、全国的に音楽フェスが盛んですが、正直どこも似たようなラインナップ・似たようなグッズ展開・似たような会場レイアウトとフード出店で、なんだかつまらないなと思いませんか?

自分も以前フェスの運営側で働いていたのですが、毎年会社の売上の大部分を占めるフェスイベントは、集客を上げるため旬のアーティストを呼べるかどうかが一番の鍵で、当然"旬"な彼らはギャランティーが高額なので、チケットは即完売となり売上は上がるものの経費も相当かかり、結果薄利で運営的にも疲弊するだけ。

おまけにせっかく人気バンドを呼べたとしても、翌日や翌週に近場で開催される別のフェスにも"旬"な彼らは出演するわけで、結局同じようなラインナップとなり、自社のフェスの独自性も強みもあったもんじゃないです。

こんな現状を高城氏は鋭く記述しています。

21世紀に入り、フェスは特別なものではなく常態化された「コンビニエンス」なパーティに変わり、ヘッドライナーのギャランティの高騰から、ナショナルスポンサーが絶対的存在となる。資本主義下の巨大な集金装置となってしまった。それゆえ、毎年同じ場所で開催され、年々形骸化の道を歩み始めている。端的に言えば、もうフェスはつまらない。 

ところが、皆既日食はその天文学的確立の低さゆえに、とても「コンビニエンス」とは言えない辺鄙な場所で、何万人もが一堂に会し空を見上げ、そこで大きな祭りが開催される。しかも気の利いたショップもなければ全裸の人ばかりという奇抜なフェスなのだそうです。いやぁ、知りませんでした。なんで全裸なんだろう。。

 

もう一つ衝撃的だったのは、イタリア・ボローニャの人々のインタビュー記事で目にしたリビアで差し止められている難民の現状についてです。

難民問題が欧州を中心にだいぶ前から騒がれているのはぼんやりと知っていましたが、自身からだいぶ距離があるせいで、そこまで深く知ろうとしていませんでした。「アウシュビッツ・オン・ザ・ビーチ」という言葉も初めて目にしました。(参考:auschwitz on the beach - Google 検索 )

日本だけでのほほんと暮らしていると、本当にこういう問題に疎くて、きっと28年の人生の中で触れずにきた社会問題は計り知れないだろうと思いました。

それで今まで困ったことはなかったけれど、この先も困らないとは言えないですよね。なんて言ったって、この十数年で世界は実に狭くなりましたから。

世界が狭くなるということは、隣の庭と自分の庭が混ざり合うようになるってこと。火事の起きている対岸と、此岸の間に可燃性の橋がいくつもかかるということです。

 

他にも世界中のいろんな問題について、50mmレンズのカメラで撮られた独特な写真とキレのある文章で書かれており、読みながら"国際感覚"の片鱗を見ることができる優れた雑誌だと思いました。

もちろん、本当の意味での国際感覚は、実際に自分の目で見て、その場の空気を感じて、現地の人と会話をすることによってしか磨かれないと思います。

引きこもりの人こそ一読の価値ありです。おわり。

 

***

 

Kindle版もありますが、一度ぜひ紙の雑誌を手にとって見てほしいと思います。

とにかく大きいです。

『明日クビになっても大丈夫!』

今月末で今の職場を退職することにしました。

それと直接関係あるわけではないんですが、先日Amazonでセールになっててなんとなく読んだのが、人気WEBライター・ヨッピーさんの著書『明日クビになっても大丈夫!』です。(私はクビになったわけではないです。)

明日クビになっても大丈夫!

明日クビになっても大丈夫!

  • 作者:ヨッピー
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 単行本
 

ヨッピーさんのWEB記事は前から好きで、ヨッピーさんの話を聴いてみたくてGoogleのウェブマスターのセミナーに行ったり、高円寺小杉湯での銭湯オフ会に行ったりしていました。

この本も気になってはいたけれど、売り出してすぐは読んでませんでした。

 

私は、今の仕事(メディアの営業職)は「すごく嫌なわけではないけどずーっと続けるのは無理だな」と入社した頃からぼんやり考えていました。

それでも入社1年目の頃は目新しくて楽しくて、好きな先輩社員とかもいて結構いい感じだと思っていました。

雲行きが怪しくなってきたのは社内の部署編成が改変された2年目からで、新しい直属の上司が苦手だったり自社のコンテンツがつまらなくなったりして、ちょっとずつモチベーションが下がっていきました。

年末にある役員との面談で他部署への異動を打診するも聞き入れられず、それでも1年は待って昨年末あらためて異動を願い出るもやっぱりスルーで。

自分を採用してくれた時の役員もほとんど残っていないし(メディアによくある天下りシステムなので)、1年我慢してもダメなんだからもういいや、と1月に退職届を出しました。

 

引き継ぎの挨拶回りや有休消化をしながら、もう一度自分の考えを自分自身に問いただすようになりました。

私は何が嫌で今の会社を辞めるのか。私はどういうことがしたいのか。

本当の本音を言うと「労働が好きではない」の一言に尽きるのですが、入社したばかりの頃はそこそこ楽しく頑張っていたしなぁ、と、ちょっと悶々としていました。

 

そんな折に本書を読んで、めちゃめちゃ笑ったけど「わかる〜!」と共感したのが、【六本木の会員制バーには行くな】という見出しのくだりでした。

自分の実力や能力ではなく、運良く引っ掛けた輝かしい人脈(もどき)や功績(もどき)を高らかに振りかざしマウンティングする勘違い人間と飲まなければならない、不毛な酒場が”六本木の会員制バー”なのであると力説するヨッピーさんの事例紹介がラジオのハガキ職人並みに面白くて、さらにそのまとめの一文がとても腑に落ちました。

本音と建て前のうち、「建て前」で過ごしているとマジで色々と価値観の軸がズレていくような感覚に陥ってしまう。 

そして「だから、六本木で飲んではいけない。」とこのネタは締めくくられます。

 

これ、すっごく身に覚えありませんか?特に昔ながらの日本企業で働くサラリーマンの方。

私は外資系企業で働いたことはないので外資はよくわからないのですが、日本企業はそこそこ老舗のメーカーや零細企業や今いるマスメディア企業など、複数社で働いた経験があり、

その経験から言うと(昔ながらの)日本企業では建て前で過ごさないとかなり摩擦が起きると思います。

というか「ほぼ建て前でみんな働いてるんじゃないかな?」と思えるレベルです。私が今まで働いてた企業の多くはそうでした。バイト先も含め。

思い返すと、老舗のメーカーが案外一番先鋭的で、私も若くて元気だったので本音をガンガン言っていました。周囲の大人も優しかったのでわりとうまく回っていたかもしれません。

でも次に入った新しい零細企業でそれまでのように本音を言うと「大人なのにどうしてそうホントのこと言っちゃうんだ!」と激しいバッシングを受け、優しい女性先輩社員が”日本企業での建て前処世術”を丁寧に根気強く手ほどきしてくれました。

「変なのー」とは思いつつもそういうのが世の大人なのかととりあえず清濁合わせのみ、彼女の教えは今の職場でも大いに役に立ったのであります。

ちなみに、ここでいう本音とはどういうものかというと

  • 「車って維持費かかるし高いし一人暮らしとかそこそこの都会ならカーシェアとかで事足りますよね」とか
  • 「私は別に結婚したくないし子どもも産みたくないです」とか
  • 「昼寝ばっかりの天下りの役員切ればかなり経費削減できますよね」とか
  • 「社長、貴方が社員のカバン蹴っ飛ばして怒鳴り散らすとかおかしくないですか?それパワハラじゃないですか?」とか

そういうものです。

そこまで変なこと言ってるとは思わないんですけど、こういうこと言うと角が立つんですねぇ。

車いらないとか言うと車メーカーのクライアントが〜とか、子ども産みたくないとか言うと少子化対策に躍起になっている自治体クライアントが〜とか、まあ理由はいろいろあるのかもしれません。

 

前の職場で「お前は車も家もいらないというけど、車を作る会社やハウスメーカーからうちはお金をもらって食べていけてるんだ。だからお前は”車欲しい””家建ててみたい”って嘘でもいいから言わなければいけないんだ」と説教されたことがあります。

そういうもんかなぁとも思いましたが、結局車はやっぱり欲しくないし、家建てたいとも微塵も思わないんですよね。

結婚式場や自治体のクライアントともたくさん仕事しましたが、やっぱり結婚はしたくないし子どもを産む気も起きないです。

 

前述した今の職場の苦手な直属の上司も、話が全然面白くないですがリアクションを薄くすると厄介かもしれない系なので「へぇ〜知らなかったです」とか「すご〜い」とかとりあえず関心している風の相槌を返すようにしていました。

私は褒められたがり人間を察知する能力が結構あり、持ち上げられると喜ぶ人を目の前にするとついつい思ってもいない”褒め相槌”を炸裂してしまう悪い癖があります。

営業職に就いてからこの悪癖が加速してしまった気がします。まあ売り上げにつながるといえばつながるのですが、建て前で稼ぐとなんだか売春したような独特の疲労が訪れるのです。売春したことはないですが、岡崎京子さんが「すべての労働は売春である」と昔何かに書いていた記憶があり、まさにそうだなという感じです。

多分価値観がズレそうになる時のひずみ?みたいなもので疲れるんじゃないですかね。

 

そんなこんなで、「明日クビになっても大丈夫!」とはそこまで力強く思わないですが、共感できる記述が沢山ある良い本でした。

これからの未来は、多かれ少なかれ本音でやってけない仕事は無くなっていくんじゃないかと思うんですよね。AIとかロボットとかに置き換えられて。

だって、生身の人間の一番面白い部分に触れられるのはいつだって”本音”なんですから。おわり。

毎週号泣する:『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

年をとったから涙もろくなったのでしょうか。否。

胸に迫る美しい物語なのです、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が。

こんなに毎週泣けるアニメはそうそうないです。

美しく、悲しく、切ない。

この先いったいどうなるのでしょう。続きが気になる反面、毎週物語を噛み締め、言いようのない気持ちになります。

 

あらすじは以下。

とある大陸の、とある時代。大陸を南北に分断した大戦は終結し、世の中は平和へ向かう気運に満ちていた。

戦時中、軍人として戦ったヴァイオレット・エヴァーガーデンは、軍を離れ大きな港町へ来ていた。

戦場で大切な人から別れ際に告げられた「ある言葉」を胸に抱えたまま――。

街は人々の活気にあふれ、ガス灯が並ぶ街路にはトラムが行き交っている。 ヴァイオレットは、この街で「手紙を代筆する仕事」に出会う。

それは、依頼人の想いを汲み取って言葉にする仕事。

彼女は依頼人とまっすぐに向き合い、相手の心の奥底にある素直な気持ちにふれる。

そして、ヴァイオレットは手紙を書くたびに、あの日告げられた言葉の意味に近づいていく。

公式サイトより)

 

主人公・ヴァイオレットにとっての大切な人・ギルベルト少佐。

彼は戦争の最中、亡くなってしまったんです。

でもヴァイオレットは少佐の死に際の「愛してる」という言葉の後の記憶がほとんどなく、少佐はまだ生きていると思っています。

そして、軍事ばかりの日々であまり情緒豊かに育ってこなかったヴァイオレットは、「愛してる」という言葉の意味が正しく理解できずにいました。

心には強く強く残っているのに・・・。

 

アニメを観ていた最初の頃は、ヴァイオレットが”「愛してる」が知りたいのです。”というたびに泣いてしまいました。

孤児だったヴァイオレットに始めて暖かく接してくれた少佐。

一緒に戦って、一緒に生活する中で、互いにかけがえのない存在となったヴァイオレットとギルベルト少佐。

お互いに強く想い合っていたのに、一番大切な人同士だったのに、

戦争という運命にのまれ、もう二度と会うことができない二人。

 

切なすぎます。

私は本当にこの”大切な人にもう二度と会えない”という絶望に弱いのです。

自分がそんな体験したわけでは全くないのに。

ヴァイオレットは育った環境のせいか、少々感受性が表に現れづらい女の子でした。最初はあまりにも人の心の機微がわからないので、障害があるんだと思っていました。

でも、自動手記人形サービスという、人の気持ちを文字に書き起こす代筆業を通して、心というものがどんなものなのかを徐々に感じ取っていくヴァイオレットを観ているうちに、彼女も一人の女の子なのだという当たり前の事実が浮き彫りになるのです。

 

ヴァイオレットが”愛してる”の意味を本当に理解した時、どうなるのだろう、と今からドキドキしています。

そして、少佐にもう会えないと知ったら、どうなってしまうのだろうと。

 

あ〜、想像しただけで胸が苦しくなって涙が込み上げてしまいます。

こういう美しい作品を鑑賞すると、本当に世界に感謝したい気持ちでいっぱいになります。

出会えたことに感謝せずにはいられない傑作です。まだ完結していませんが、もう最初から傑作すぎて・・・。

回想シーンでギルベルト少佐が出てくるたびにまたウルッとなってしまいますよ。愛に溢れているから。嗚呼、本当に、少佐が生きていてくれたらよかったのに。

 

世の中にはいろんな感情がありますが、やっぱり一番心を打つのは愛ですよ。

愛。

尊いアニメ作品です。多くの方に観ていただきたいと思います。おわり。

一発で六弥ナギに恋に落ちます:『アイドリッシュセブン』

アイドルアニメが乱立する昨今ですが、やっぱり2次元アイドルは素晴らしいです。

現在放送中のアニメ『アイドリッシュセブン』の第8話で、主人公の7人アイドルグループ「アイドリッシュセブン」のメンバーの一人、北欧系のハーフ・六弥ナギ君にノックアウトされました。

第8話 プリーズ、ミュージック

第8話 プリーズ、ミュージック

  • 発売日: 2018/02/12
  • メディア: Prime Video
 

私はアイドル系アニメは基本的に楽曲が好きかどうかを第一に考えます。

以前ご紹介した『ツキウタ。』や、『うたの☆プリンスさまっ♪』などなど、作中に出てくる楽曲が音楽として素晴らしいとアニメ視聴を継続します。

 

アイドリッシュセブン』の楽曲も悪くはありませんが、そこまで大好きなわけではないです。

ただし、アイドリッシュセブンはキャラクターデザインが種村有菜大先生であるというのが私にとっては大きくて、なんとなく視聴していました。

種村有菜先生といえば、小学生の時にどハマりした『神風怪盗ジャンヌ』の作者であり、彼女のイラストを自由帳にずっと真似して描いていた私からすれば、もう”神”と言っても差し支えない存在なんです。

なので、そんな神がデザインしたアイドリッシュセブンのマネージャー小鳥遊ちゃんがもうまずめちゃめちゃ可愛くて、アイドリッシュセブンのメンバーもみんな個性的でイケメンなので、曲がそこそこでも楽しくアニメを鑑賞していたのです。

 

しかしストーリーを追ってみると、アイドリッシュセブンというアイドルグループはなかなかデビューまでの道のりが険しいグループなんですね。

アニメ公式サイトのあらすじは以下。

「小鳥遊事務所」に集められた、未来を担うアイドルの卵たち。 お互いに出会ったばかりの7人は、性格も個性もバラバラ。 けれど、それぞれに異なる魅力を持ち、アイドルとしての未知の可能性を秘めていた。 グループを結成し、共に第一歩を踏み出した彼らの名は「IDOLiSH7アイドリッシュセブン。 光り輝くステージで歌い踊る姿は、やがて人々の心を惹きつけていく。 華やかだが、時に厳しいアイドルの世界で 彼らは夢を抱きながら、その頂点を目指す――! 

アニメ『アイドリッシュセブン』公式サイトより)

最初にやったライブがガラガラすぎたり、野外ライブで土砂降りが来たり、メンバーが発作を起こしたり、ライバル事務所からチャチャ入れられたり、次から次へと一難去ってまた一難という感じなのです。

 

アニメ最新話の第8話では、せっかく掴んだ地上波の歌番組の生放送で歌詞が飛ぶミス(しかもその直前にスタジオの度重なる変更とか楽屋荒らしが入って持病持ちのメンバーの医療器具が壊れて発作寸前とかいろいろあった)が発生して台無しになるという展開が訪れます。

 

過去最悪の出来と言っても過言ではないダメダメなステージに一同消沈し、責任を感じて行方をくらましたメンバー・和泉一織くんをみんなで探します。

一織くんが見つかって、みんなで慰め合いつつもいまひとつ暗い雰囲気が拭えない時、冒頭でも触れた北欧系ハーフの金髪メンバー・六弥ナギくんが「オッケ〜イ」と微笑みながら階段を駆け上がって月明かりの下で他のメンバーとマネージャー小鳥遊ちゃんに呼びかけます。

「ワターシ、踊りマス!

皆さんの好きな歌、歌いマース!

何がいいデスカ?」 

一同は一瞬あっけにとられ困惑しますが、ナギ君は優しい微笑みをたたえたまま続けます。

「ワターシ、アイドルでス。

ひとを笑顔にするのが仕事。

ミナサン笑ってほしいデース!」 

そうして得意なターンをしてみんなに微笑みかけるのです。

 

ナギかっこいい〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!

と叫んでしまいました。イケメンすぎる。見た目もかっこいいですが、心意気が。

 

苦手なキックウォークでよろけて笑いを誘った後、みんなに呼びかけます。

「一人でも踊れマース。

でも、まだ一人では見栄えしなーい。

ンン〜、誰かお手伝いを・・・oh、ガール!」 

そして小鳥遊ちゃんを呼んで二人でくるくる回り、メンバーたちに「Please,music!」と音楽を要求します。

なかなか立ち直らないメンバーを見ると、ナギは小鳥遊ちゃんからも音楽をねだるよう促します。

「ここにあるミュージックボックスに、コインは要りまセーン。

”聴かせて”と誰かが言えば、何度でも蘇りマス。

月が満ちるように

朝日が昇るように

私たちのハートビート、決して、決して、絶えることはアリマセン! 」

そしてナギの力強い言葉にメンバーたちは笑顔を取り戻し、立ち直って一件落着・・・

また来週以降も波乱のようですが・・・

 

私はこのナギ・オン・ステージに泣きました。

この、困難にぶち当たってもまた立ち上がる前向きな姿勢とひたむきさ。

諦めない情熱に胸を打たれます。

2次元アイドルってこうなんですよ。輝きが凄まじい。無条件に応援したくなるキラキラした少年・青年たち。

ああ〜本当に感動しました。完全にナギ推しになりました。

ちなみに逢坂壮五くんも結構好きです。

 

原作のスマホゲームには手を出していないんですが、そのうち何かに手を出してしまうかも・・・なんて。

とにかくナギのかっこよさに思わず感想を書かずにはいられませんでした。

心を動かすってこういうことなんだなぁ。おわり。

心をチューニングする音楽:RAMMELLS「playground」

営業職について3年、社用車の中ではほぼほぼラジオを聴いているのですが

いろんな放送局をザッピングしてどれもいまひとつな時、自分のiPhoneBluetoothをつないで音楽を流します。

 

先日会社でちょっといろいろあり涙もろくなっていた時

ラジオを流していても心が落ち着かず、iPhoneに切り替えました。

その時すごく気分にフィットしたというか、落ち着いた曲がRAMMELLSの「playground」という曲でした。

playground

playground

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RAMMELLSは昨年末に多くの地方ラジオ局でデビューアルバム『Authentic』の中の、特に「2way traffic」という曲がパワープレイされていて、なかなか良かったのでアルバムを手に入れました。


RAMMELLS Debut Album「Authentic」トレーラー映像

捨て曲のないいいアルバムだと思いました。

 

そして注目していた矢先、タワーレコードでフリーライブをするという知らせを目にして、池袋のタワーレコードに聴きに行きました。

ヴォーカルの黒田さんのヘソ出しルックに釘付けになりましたが、生で聴いてもやはりいい演奏・いい曲・いい空気感で、すっかりファンになりました。

 

ラジオのオンエア用で推されているリードトラックは先ほども書いた「2way traffic」の他に「CHERRY」という曲もありますが

ライブで聴いてあらためて1番好きだと思ったのが「playground」で、iPhoneにもしばらく入れっぱなしにしています。

 

テンポもゆるくて、でも和音がファ〜っと綺麗に広がる、心地よさと心もとなさが絶妙なバランスでおりなすメロディが本当に素晴らしい名曲だと思います。

 

車の中で聴いているうちに波立っていた気持ちが凪いで、なんとか持ち直した先週末だったのでした。おわり。